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博多の道路陥没 都市の地下利用に警鐘

 けが人が一人も出なかったのは奇跡に近い。

     5車線の目抜き通りがごう音とともに崩れ落ち、周辺の電柱や信号機も大きな穴に吸い込まれた。

     福岡市のJR博多駅近くの市道がきのう早朝、約30メートル四方にわたって陥没する事故があった。

     時間帯によっては歩行者や車が巻き込まれ、多数の死傷者が出るおそれが十分にあった。

     福岡市は周辺のビルに倒壊の心配があるとして避難勧告を出し、警察が周辺への立ち入りを禁止した。まずは2次被害の発生をくい止めたうえで、徹底した原因究明に努めなければならない。

     陥没したのは福岡市地下鉄の延伸工事現場だった。地下約18メートルでトンネルを掘る工事をしていた午前5時ごろ、水漏れが始まったという。地下水が流れる地層を掘削したことで、流れ込んだ大量の水によって道路下の土砂が流出した可能性が指摘されている。

     同じ市地下鉄の工事では、今回の現場から約400メートル離れた場所で2年前に車道の一部が陥没する事故が起きている。この時も掘削工事によって水が流入したことが原因とみられている。

     この地域は昔、川が流れており、水を含んだ土砂が多いといわれる。前回の陥没から教訓をくみ取り、万全の対策を取ったのか疑わしい。市は事前のボーリング調査によって地盤の強度や地下水の状態をしっかり把握していたのか。

     工事の計画や管理がずさんだったと批判されても仕方ないだろう。

     今回の事故は大都市の地下利用のあり方に警鐘を鳴らした。

     事故によって停電やガス漏れが発生した。市は下水道の使用もできるだけ控えるよう周辺住民に要請した。NTTの固定電話や銀行のオンラインシステムにも影響が出た。

     こうしたインフラが地下に埋設されているためで、都市機能のもろさを示した形だ。

     陥没事故はこれまでも各地で起きている。東京都台東区のJR東北新幹線トンネル工事現場の上で1990年1月、土砂が噴き上げて御徒町駅ガード下の道路が陥没した。凝固剤の注入不足などが原因だった。

     名古屋市では昨年12月、名古屋駅近くの歩道が一部陥没した。このほか長崎市などで、水道管の老朽化による水漏れが原因で道路が陥没したケースもある。

     地下鉄の工事など現在進められている現場は安全なのか。工事が終わった後の維持管理はしっかり行われているのか。

     国土交通省を中心に、国や自治体は早急に点検を進めてほしい。

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