今回は情報デザイン学科・先端デザインコースの卒業制作展の作品のご紹介です。
優秀賞作品
折山 黎 羊と向き合う』【優秀賞】
小学生の頃、学校で羊を育てていた。あの頃、羊は私のすべてだった。何をおいても羊が世界で一番大切で、生きるすべてだった。そんな羊をジンギスカンの牧場に返し、その後の結末は誰も知らない。あんなに愛情を注いでいたのに、何も知らない。そのことが、ずっと頭のどこかに引っかかっていた。羊は最後にどうなったのか。どんな存在だったのか。なんだったのか。結局わからない。10数年経った今だからこそ、もう一度羊と向き合いたいと思った。
奨励賞作品
横田 淩一 『カミのオング』【奨励賞】
機会に紙を活用する。紙を用いて想像をかたちにした経験はほとんどの人にあるだろう。そんな身近な素材・紙を機会に組み込んだとき、どのような作用をもたらすのかの実験。今回は音を発する機械を制作した。紙に触れ、音がなるときのそれらの相互作用を見る。
松村 優里 『re-view』【奨励賞】
『田中一光 自伝 われらデザインの時代』(田中一光 著、2001年)を手がかりに、日本のグラフィックデザインの形成過程を分析し、その時代の情況や人物、時代背景を視覚化した。
田中一光が影響を受けた人物や関わり深い人物を、デザインの要素となる形、色、線を用いて、それぞれの関連性や差別化するように、1冊の本の内容の情報を整理した。
田中一光を含め、戦後日本のデザイナーが築いてきた、日本デザインの歴史を見返し、今日あるデザインを見つめ直してほしい。
衣川 智子 『文字と線、線と装飾』
欧文書体と花形装飾は歴史的に見るとそれぞれ全く異なる発展を遂げた後、活字として統一されました。
そのため書体と装飾はそれぞれの歴史や、視覚的な効果のみが記されたことの方が多いと感じます。
私はその2つを「人の手が生み出した曲線」という双方が持つ特性で括り、再編集する事で書体と装飾の新しい関係性を提示したいと思います。
宇野 真未 『地図記号のピクトグラム化』
小学生の頃、地図記号を覚えるのに苦労した記憶はありませんか。その原因はそれぞれの地図記号の由来が時代に合っていないなどの理由にあると考えました。例えば、消防署の地図記号は「さすまた」の形が由来となっておりますが、現代の人には消防署とさすまたを結びつけることが難しいのではないでしょうか。今年の1月には、外国人にわかりやすい地図記号を作ることが発表されましたが、特に日本人の若い世代にとっても、わかりづらい地図記号は多くあります。外国人のためだけでなく日本人のためにもあらゆる地図記号をわかりやすくする必要があると考え、幾つかの地図記号を選び新たピクトグラム化し、多くの人に直感的にわかる地図記号の形を考えました。
益田 藍子 『呼紋』
生き物は常に吸収をしている。しかし常に同じ呼吸をしている訳ではない。胸が高鳴ったり、気持ちが落ち着いたり、こみあげる感情によって様々である。オランダの哲学者・スピノザは、人間には 48 種類の感情があると唱えている。私は、スピノザの分類に基づき、感情によって変化する呼吸を「呼紋(こもん)」と名付けてビジュアル化した。展開例として、小説「走れメロス」における感情の推移を「呼紋」として表現した。
関口 樹 『野菜をつつむ。』
簡単に包まれていることが多い野菜。誰かにあげる時もそのままの包装ではちょっと寂しい。
家で保管するときも、ただ新聞紙にくるまれて床に置かれていては、なんだかもったいなく感じませんか。
野菜を部屋に飾るように保管したり、野菜の贈り物をしたくなるそんな提案です。
包み方次第で印象は大きく変わるはずです。
三窪 絵理 『ゆめかわアイドル』
私はきらきら輝くアイドルが大好きです。いつも笑顔で頑張っている彼女たちを見るたびに、応援したいという気持ちで胸がいっぱいになります。今回の卒業制作は三人のアイドルをプロデュースしました。ここ数年「ゆめかわいい」という言葉がTwitterなどのSNSを中心に流行しています。メルヘンで幻想的なものや可愛いものに、少し病んだ要素を含め、アイドルから感じ取ったイメージを表せるように、コラージュで「ゆめかわアイドル」制作しました。
小林 佳代 『見立ての誘導』
見立てとはあるものを別のものに見えることを言います。
野菜の切断面が顔に見えたり、窓やドアの組み合わせで顔に見える建物があったり。それらは顔に見せようとした意図はなく、私たちが見方を変え想像をすることで見つけることが出来ます。日々の見慣れた景色でも見方を変え想像することで、新たな一面を見出すことが出来ます。
それを明日から見つけるための1つの方法として、顔に見えるものという見立てを提案します。この教室と教室を出た学内にも様々な顔を仕込みました、見つけてみてください。
小林 奈々江 『SUK SUK』
革は、水や汚れに弱く高価であり、子供が利用するものにはあまり使われていない素材である。しかし、革でできたランドセルは成長期の子供と長い時間を共にし、傷や跡を残し、大人に成長を見せてくれるプロダクトである。このように子供が残す経年変化は、大人が残す経年変化とは違った味がある。
子供があまり持つことがない革を使って、子供向けのプロダクトを作ることで、傷や跡といった経年変化を成長の記録として残すことができるのではないだろうか。
“共に成長する” 子供向けプロダクトの提案。
松田 周悟 『A悲劇B喜劇Cファルス』
A= 浦島太郎 B= 桃太郎 C=金太郎 ファルスとは?戦時の小説家坂口安吾のエッセイをキッカケに、FARCE 《道化》の存在を証明する。本作は、今は亡き小説家や評論家の主張とともに、人類未開の叡智 “FARCE” について、2016 年現代のショートストーリー(CM 約200本)題材に調査をおこなった結果となる。調査結果を表現するにあたり “ミシュランガイド” という、星の数でシンプルに価値観を提示することができる媒体を引用した。
上野 嘉廣 『現代の映像技術を使った天蓋』
天蓋とは仏像の頭上に設置される傘状の荘厳具( 装飾具 )です。
装厳具の形態は仏塔が作られた頃から現代に至ってそれぞれの時代に沿った思想や技術が反映されています。タイでは現代の技術を使って仏像の背光を LED できらびやかに装飾されているものがありますが、現在日本にある寺院ではそのような影響はあまり見られません。そこで私は幼少期からよく見ていた瑞龍時の天蓋をモチーフに釈迦の記号として使われている転法輪の映像を天蓋の下に投影し、現代における天蓋があるならばどのようなものであるかを研究、制作しました。
村瀬 友理 『Emballage bijoux』
食べ終わった後、捨ててしまうお菓子の包み紙。しかし、よく見てみるとそのお菓子にあわせたデザインが施されており、かわいいものからシックなものまで様々です。そんな包み紙を再利用し、プラ板を使ったアクセサリーにしてみました。いちごみるくにミルキー、ツインクル、チェルシーなど、どんなお菓子でも少してを加えるだけで素敵なアクセサリーに生まれ変わります。ぜひ、服などにつけてお菓子と一緒に楽しんでみてください。そして、あなたのお気に入りの包み紙を探してみてはいかがでしょうか。
中西 茜 『@___nei②』
かりすまになりたい・・・私の人生の格言のようにずっと心の中にある言葉や、何となくつぶやいただけなのになぜか定期的に頭をよぎる言葉など、自分の中で温めて続けている言葉に愛着が湧いたので、看板にしました。言葉には、記号という枠を超えてイメージや色、表情、温度があります。看板には、お店や企業の第一印象を決める役割があります。雑居ビルの看板を眺めように、ここぞという時に使いたくなるような言葉の看板を見つけて持ち帰ってもらいたいです。
天野 知美 『ちっさいとき』
大人になると読む機会が減ってしまう絵本。そんな絵本に触れると同時に、この絵本を読んだ大人が自分を育ててくれた人と小さい頃のエピソードを話したくなれば良いなという思い出制作しました。自分を育ててくれた人に、私って小さいときどんな子だった?と聞いてみてください。おもしろいエピソードが飛び出してきたり、今も変わっていない性格に気づいたり、ときにはそれを話す人のあたたかい表情が垣間見えたりと、たくさんの発見があるはずです。
福永 しおり 『五感を使いながら読むとき』
普段本を読むとき、同じ姿勢や同じ目の動きで読んでいることが多いと思います。この作品を通して同じ目の動きではなく少し違った環境で本を読んでみませんか?今までに読んだことがある物語でもまた違った感情が生まれるかもしれません。この作品は五感を使いながらより物語に入り込めるようにそれぞれの感覚と物語を重ね合わせました。ただ、「読む」ということだけでなく一つ一つの感覚と物語を楽しみながら読んで貰えると嬉しいです。あなたと本の距離が縮まりますように。
豊嶋 真帆 『Kyo-face』
京都の顔である寺院・神社のマークを作り、それを使った商品を展開することで、観光客や参拝客などの来訪者に対して少しでも親しみ深くなってもらおうとデザインしました。伏見稲荷は鳥居や稲穂・お稲荷さん、清水は舞台と木々・川や、金閣と銀閣は鳳凰と池で左右対称にする・・・など、デザインの際にそれぞれも建物や逸話の特徴をマークや商品の柄に取り入れています。それらを目にする機会を重ねるうちに、観る人々にとって寺院・神社がより身近に感じられるようになればと考えました。
柳瀬 愛子 『Alessa』
作品タイトルの Alessa とは、私がダンサーとして活動している名前です。将来、自分のブランドを持つことが夢なので今回は、ダンサーの衣装やパーティーガールをコンセプトに衣装をプロデュースした衣装は 20 着ほどありますが、今回は代表作をパネルにしました。
眞名井 はるか 『Project Leone』
歌声合成ソフト「UTAU」を用いて作成したオリジナルキャラクター「Leone (レオーネ)」をデビューさせるプロモーション。音楽、動画、HP、SNS などの媒体を用いて広報活動を行い、UTAU オフィシャルキャラクターとしての位置づけを目指した。自身が生涯携わっていくプロジェクトとしてキャラクタープロデュースを選択したのは、COOL JAPAN と呼ばれる日本のオタクカルチャーに関わり続ける身としてひとつのブランドを持っていたかったからだ。様々な媒体を使い「Leone」というブランドをユーザーと作り上げていくなかで、「キャラクター」という概念について考え続けていきたい。これはその第一歩である。
以上です
気に入った作品興味のある作品はありましたか?
また次回お楽しみに!
他の学科・コースの紹介あります!
京都造形芸大・卒業制作展 〜インテリア・ランドスケープデザイン編〜
京都造形芸大・卒業制作展 〜環境デザイン学科・建築コース編〜
京都造形芸大・卒業制作展 〜情報デザイン学科・イラストレーションコース編〜
京都造形芸大・卒業制作展 〜情報デザイン学科・コミュニケーションデザインコース編〜