最近反省することが多い──そう切り出したのは、ソフトバンクグループの孫正義社長です。2017年3月期 第2四半期決算説明会の場で、孫社長はARMの買収、そして10兆円規模のファンド「SoftBank Vision Fund」設立の意義について熱く語りました。


▲スーパーコンピュータ「京」後継機にARMアーキテクチャが使われることを紹介

ソフトバンクは、英国の半導体大手ARMを「たかが3兆円」で買収。しかし孫社長は、ARMの買収を「人類史上最大のプロジェクトを成し遂げる上での第一弾に過ぎない」と語ります。

ARMを買収するために、ソフトバンクは中国アリババ株の一部を売却。しかし孫社長は「本当はアリババ株を1株も売りたくなかった」と語り、その理由について「アリババは決してまだ収穫期に入っていない。純利益の絶対額は3か月で2000億円、それが前年比41%で伸びている」と説明します。

人工知能が人間を凌駕する時代に備える

ではなぜ、1株も売りたくないアリババ株を売ってまで、ARMを買収したのでしょうか。孫社長は「私には見えているビジョンがある。多くの人が賛成するかは別として、私にはすぐ取り組まなければいけないものがある」そう前置きしたうえで、買収の理由として掲げたのが「シンギュラリティ」(超知性)時代の到来です。ARMの買収は、このシンギュラリティに備える取り組みの第一弾だというのです。


▲人工知能(AI)が人間を超える「シンギュラリティ」の到来で、全ての産業が再定義されると孫社長

「コンピューターが人類の知能を超えていくと、あらゆる産業が再定義される。Uberは1つの事例だし、Airbnbもそう。Fintechもさまざまな分野で金融が再定義された。電話もスティーズジョブズがiPhoneを生み出したことで再定義された。このようなことが、シンギュラリティによって、さまざまな産業にドミノ倒しのように起きてくる。これは1つのテーマであり、1つのビジネスモデルだけやっていても間に合わないくらい根源的なもの」(孫氏)

ソフトバンクは借金が多すぎる

一方で孫社長は「シンギュラリティを達成する人類史上最大のプロジェクト、これに我々が取り組むには問題がある」と弱音を吐きます。その理由について「ソフトバンクは借金が多すぎるとよく言われる」ということを挙げます。ではどうするのか。孫社長は「借金を増やさずに、この革命にどう取り組むか考え続けた答えが、10兆円ファンドのSoftBank Vision Fund」だと説明します。

SoftBank Vision Fundは10兆円規模の投資ファンドです。「10兆円という規模は中国のAIIBと同じ。米国中のベンチャーキャピタルが、直近の2年間に投資した資金の合計の2.5年分に相当する。それを我々が今後の5年間で投資する」(孫氏)。



なお、SoftBank Vision Fundに賛同したサウジアラビア王室のムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は「やろう、やろうと非常に意気投合して、合意してくれた」(孫社長)とのこと。ファンドの内訳については、ソフトバンクが2.5兆円、サウジアラビアの投資部門(PIF)が4.5兆円を出資。残りの3兆円については、現在その他の投資家と協議中しているものの、10兆円は到達できる見通しだと話します。



またファンドの投資分野について孫社長は「(シンギュラリティは)あらゆる産業の再発明となり、再発明されるところにビジネスチャンスがある」としたうえで「従来の定義であればUberなんて情報革命に入らなかったが、今やUberのような業態も我々のテーマに入った」と、従来のITの定義に縛られず、広い分野に投資していく姿勢を明らかにしました。

守りつつ攻めに



また孫社長は「ソフトバンクは守りを固める」とも語ります。純有利子負債のEBITDA(減価償却前営業利益)倍率を4倍から3.5倍、それ以上に改善するとした上で、「ソフトバンクは借金を増やして投資をするんじゃなくて、パートナーから資金を募り、成功報酬を与えながら投資をする。今後は数百億円以上の投資はファンド経由にしていきます」と宣言。

またSprintの業績が反転していることや、堅調な国内通信事業を背景に「構造的にバランスシートは改善する、従って我々は人類史上最大のチャンスを、より安全を増しながら、攻めていく構えを取ることができる」と述べ、バランスシートの改善に自信を示しました。

ソフトバンク孫氏、ARM買収「たかが3兆円」。英政府「歓迎できる」

ソフトバンク孫社長、実質0円廃止は「国内メーカーに決定的な打撃」 通信料引き下げは容認
「ソフトバンクは借金が多すぎる」─孫社長が語る10兆円ファンド設立、そしてARM買収の狙い
広告

0 コメント

広告