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【首都スポ】

東大生が2年ぶりに箱根路を走る 関東学連選出の近藤秀一

2016年11月8日 紙面から

夢は東大チームでの箱根駅伝出場と語る近藤

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 来年正月に行われる東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)を東大生が12年ぶりに走る。予選会で敗退したチームによる関東学生連合に東大の近藤秀一(2年・韮山)が選出された。東大生としてではなく、1人のアスリートとして競技に向き合った秀才は箱根駅伝での快走、さらにその先にある個人、そして東大としての大きな夢を見据えている。 (川村庸介)

◆肩書きは関係ない

 東大と言えば日本最高峰の頭脳の集まり、さらにスポーツでも活躍となれば究極の文武両道−。だが近藤は世間一般が抱く東大生のイメージを受け止めつつもこう語る。

 「僕個人としては自分が箱根に出たいというだけで、その手段として東大を選んだから、自分が東大生だからというのは特に何も感じていないし、1人の陸上選手としても東大生なりに頑張るとは思っていない。東大という肩書はあまり関係ないと思うけど、世間から見たら東大という勉強が忙しそうな大学でもやっている選手がいることで刺激を受けたり、じゃあ目指そうと入ってくれたらうれしく思う」。あくまで陸上競技者としての高みを目指してきたからこその学生連合入り、そして箱根駅伝だ。

◆1点足りずに浪人

 箱根に出たいから東大−。一風変わった志望動機と、両方とも実現してしまう才能。高校時代は1500メートルで東海大会に進んだのが最高成績。高3の駅伝を走り終えると東大を目指して受験勉強に専念したが、入試では合格点にわずか1点足りず不合格。浪人中は予備校に通わず、朝と夕方に練習して昼間は図書館で勉強、週末は母校で練習という独自スタイルを貫いた。支えになったのは「東大『で』走りたい」という思い。浪人中にもかかわらず5000メートルの自己ベストを3秒更新したことで「東大で箱根を見据えて練習、生活してきた覚悟が自己ベストという形になったことで、入試にも自信が持てた」と言う通り、翌春に晴れて東大理科二類の合格通知を受け取った。

◆本戦また1足りず

 憧れの赤門をくぐったことで、次に目指すのは学生陸上最大の舞台箱根駅伝。だが大学1年の箱根駅伝予選会では落選校の各大学1番手では11番目の成績。学生連合入りは果たしたものの、本選出場へは1回目の入試に続きあと「1」が足りなかった。「1回ダメでというのは詰めが甘くて自分らしいと言うか」。苦笑いで振り返る。本番では東工大から学生連合に選ばれた松井将器の付き添いを務め「言葉では説明できない緊張感が漂ってきたが、それは走った選手にしか分からないんだろうなとも思った。来年は頑張ってこの舞台でという気持ちが強くなった」と収穫と悔しさの両方を手にした。

◆10番目に滑り込み

 勉強と陸上の共通点を「しっかり逆算して計画を立てて一つ一つこなしていくこと。陸上も勉強も結局最後は自分」と語る近藤。大学2年となった今季は前回の箱根予選で感じた「ブレークスルーを起こすにはスピードの絶対値を上げないと。5000メートルが14分30秒だったら20キロを15分ペースで走るのに30秒しか余裕がないけど、14分にすれば1分余裕が出る」という課題の克服を実践。14分21秒だった5000メートルの自己ベストを14分3秒まで上げて予選会に臨み、落選校の1番手では10番目に滑り込んだ。

 現在は105分の講義を週19コマ受けながら火、木、土曜日に陸上運動部の全体練習、そのほかの曜日は自主練習をこなし、来春からは工学部の化学生命工学科に進む。そんな環境で目指す箱根駅伝では「まだ走れると決まってはいないけど」と前置きしつつ「どこの区間を走るにしても区間5番以内を目指したい」と意気込む。

◆フルマラソン挑戦

 そして、その先は「2月の東京マラソンを2時間16〜17分ぐらいで走りたい」と個人としての高みを目指すと同時にもう1つ夢がある。「自分が10人いて出られるというレベルだけど、0から10をそろえるのは無理なのでまずは1。経験者を増やして広がればチーム全体でもそういう気概が生まれ、本格的に箱根を目指そうという雰囲気になると思う」。いつか東大として箱根駅伝を走る−。その第一歩を来春の箱根路に刻む。

<近藤秀一(こんどう・しゅういち)> 1995(平成7)年7月25日生まれ、静岡県函南町出身の21歳。172センチ、53キロ。函南小3年で陸上を始め、函南中、韮山高ではいずれも1500メートルで東海大会出場。5000メートルの自己記録は14分3秒63、1万メートルは29分22秒82。リラックス方法は「部員を家に呼んで鍋をつくること。8人分ぐらいを全部自分でつくる鍋奉行」。

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