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Jailbreak

新しい世界の切り取り方

【レビュー】ALTER BRIDGE『THE LAST HERO』

音楽 レビュー
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Last Hero

2016年10月7日に発売されたAlter Bridgeの5thアルバム『The Last Hero』を聴いた。

まず感じたのは今までのAlter Bridgeが変わらずに居て、今までと同じベクトルで新しい作品を作ってくれたんだということ。逆に言うと、今までの作品から想像できる範囲での変化だった。

Myles Kennedyの歌声は相変わらず伸びやかで気持ちいいし、Mark Tremontiのギターはメタルチックだがへヴィで太いリフを聴かせてくれるし、Brian Marshallのベースは要所要所でしっかりと低音のポイントをおさえているし、Scott Phillipsのドラムは8割はへヴィなグルーヴを出し2割はテクニカルに攻めるスタイルは変わらないのだ。こんな具合なのでバンドサウンド全体は1stアルバムから通して大きな変化は見られない。

今回も2ndアルバムからプロデュースしているMichael "Elvis" Basketteが全編に関わっていて、ミックスも担当しているのも少なからず影響しているはずだ。MichaelはMylesとSlash(元Velvet Revolver、現Guns N' Rosesのギタリスト)とのアルバム『World on Fire』もプロデュースしていた。『World on Fire』は自分が2015年上半期にパワープレイしたアルバムの1枚であり、いい作品を作り出しているプロデューサーだ。このプロデューサーの作品を追いかける予定だが、それはまた別の話で。

dankantakeshi.hatenablog.com

 

ここからは細かい変化を拾っていく。

まず気になったのはMark Tremontiのギターソロが今までの作品よりメロディックで泣いていること。主にギターソロ前半に現れていて、6曲目「Cradle To the Grave」、8曲目「This Side of Fate」、13曲目「The Last Hero」の短いチョーキングでも長いチョーキングでも泣いて見せる。今までのスライドやグリッサンドを使ったり、音飛びを多用することによるクニャクニャとした独特のギターソロはいつも通り聴かせてくれる。今までの作品の中で最高にメロディアスなギターに仕上がっている。

あとはやけにScott Phillipsがツーバスを踏んでいる。1曲目「Show Me a Leader」のギターソロの裏、5曲目「Poison In Your Vains」のギターソロ後半、7曲目「Losing Patience」のブリッジのリフとのユニゾン、13曲目の「The Last Hero」のギターソロ明けのリフとのユニゾン。全面を通して連打を続けるような使い方ではないし、リフとのユニゾンをバスドラで行うのは2000年代以降のドラムとしては常套手段で、へヴィなロックをやると避けては通れないのだが、あまり連発するとMetal感が勝っている。

自分はAlter BridgeはAlternative Rockの範疇にいると思っていて、その中でもMetal寄りだと思っているから、あまりMetalに寄りすぎて欲しくないのだ。Metalに寄りすぎると今より様式美を追及したりテクニック満載となりマシマシ状態で、ちょっと聴くだけで胸やけを起して気軽に聴ける音楽から離れていってしまうから。あくまでポピュラーミュージックの範疇でいて欲しいと願っている。少なくともギターに合わせてテクニックを押し出すとすぐMetal感が全面に出てしまうので。

 

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全体を通してはとても好きなアルバムで長く付き合っていきたいアルバムだ。Alter Bridgeの楽曲は1回で好きになる曲もあるが、1曲1曲に深みがあるので何度も繰り返し聴くことで深く楽しめる。2曲目の「The Writing On the Wall」のようなへヴィで前へ前へ進んでいくサウンドもありつつ、9曲目の「You Will Be Remembered」や11曲目の「Twillight」メジャーキーで明るく爽やかだけどへヴィさを忘れない曲もある。自分は前者のような極悪へヴィな曲も好きだし後者のような爽快へヴィな曲も好きで、特に極悪へヴィ曲から爽快へヴィ曲へと組み合わせて聴くのが好きだ。それはサウナと水風呂を行ったり来たりするような適度な負担と爽快感を味合わせてくれる。このアルバムの中だと3曲目「The Other Side」から4曲目「My Champion」や、8曲目「This Side of Fate」から9曲目「You Will Be Remembered」、10曲目「Crows on a Wire」から11曲目「Twillight」という3つの流れがあるので是非とも続けて聴いていただきたい。

 

へヴィでキャッチーで時に爽やかに時に切なく時に激しく。Alter Bridgeらしい新作だった。

 

こちらからは以上です。