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山・鉾・屋台 「動く美術館」を誇ろう

 「山・鉾(ほこ)・屋台」の巡行を中心とした日本各地の祭礼行事が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産として登録される見通しになった。登録を地元の活力にするとともに、祭り同士の連携を深め、保存の知恵を出し合いたい。

     「山・鉾・屋台行事」は、京都祇園祭の山鉾行事(京都)、博多祇園山笠(やまかさ)行事(福岡)など18府県33件の祭りで構成される。粋をこらした飾り付けを特徴とし、「動く美術館」ともいわれる。地域の安泰や災厄防除を願い執り行われるもので、多くは江戸中期に開花した。

     各地の「山・鉾・屋台」は、木工や漆などの伝統的な工芸技術により何世紀もの間維持されてきた。一部の技能者だけでなく、人々が一体となるところに価値があるだろう。

     ユネスコは、地元の木材を用い、持続可能な方法で用具を確保して、木材を伐採した後の景観の維持にも配慮してきた点などを評価した。

     33件はいずれも国の重要無形民俗文化財に指定され、ユネスコの登録基準である保護措置は既に図られている。政府は、世界に認められれば担い手の励みになるという考えで、無形文化遺産に申請してきた。

     京都祇園祭などは独立して無形文化遺産に登録されていたため、京都祇園祭を含む行事をグループに拡張し、登録し直すことにした。

     「山・鉾・屋台」の保存については、京都、高山(岐阜)、高岡(富山)、日立(茨城)、秩父(埼玉)の保護団体を手始めに連合会が作られ、交流を広げてきた経緯もある。

     無形文化遺産は、歴史的建造物や自然環境を対象とする世界遺産、文書や絵画が対象の世界の記憶(世界記憶遺産)と並ぶユネスコ3大遺産に数えられる。2006年発効の無形文化遺産保護条約に基づき、祭礼行事や伝統工芸などを対象にする。

     日本には「人間国宝」などの形で無形文化財を大切にしてきた歴史があり、無形文化遺産条約が成立する際も大きな役割を果たした。世界遺産に登録された文化遺産が欧州中心なのに比べ、無形文化遺産は中国、日本などが数多い。文化の多様性を守るうえでも意義深い。

     無形遺産は、歴史の解釈や資料の価値を巡り争いが生じるようなものではない。世代を超えて受け継がれてきた「生きた遺産」を大切にすることは、どの国にとっても重要な課題である。

     登録が見込まれる12月の秩父祭の屋台行事と神楽は、正式決定の前後になりそうで、例年を上回る人出が予想されている。

     地元が育んできた祭りは、他にもたくさんあるだろう。「山・鉾・屋台」の無形文化遺産登録を身近な文化の継承を考える契機と捉えよう。

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