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<神宮外苑火災>投光器、当日設置 学生「明るくするため」

毎日新聞 11/8(火) 7:00配信

 明治神宮外苑(東京都新宿区)で開かれたイベント会場の展示物が燃え、中で遊んでいた幼稚園児の佐伯健仁(けんと)ちゃん(5)が死亡した火災で、展示に関わった学生が「展示物を明るく見せるため、(火災当日の)6日に投光器を設置した」と警視庁四谷署に説明していることが、捜査関係者への取材で分かった。同署は投光器の白熱電球の熱で木くずが燃えたとみて業務上過失致死傷容疑で調べている。

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 燃えた展示物は、木の枠を6段積み上げ、飾りとして多量の木くずを木枠に絡めたジャングルジム状の作品(高さ約3メートル、幅約4メートル、奥行き約5メートル)。日本工業大工学部の学生らのグループが制作し、10月26日から展示していた。白熱電球の投光器は、夜間の準備作業のために使用したが、展示開始前には取り外していた。展示期間中の夜間の照明には高温の熱が出にくい発光ダイオード(LED)1個を使っていた。

 捜査関係者によると、学生は「展示物を明るく見せるため、6日に投光器を展示物の中に再び設置した」と説明。薄暗くなった午後4時半ごろに投光器を点灯したという。火災は5時20分ごろ起きた。点灯から短時間で出火したとみられる。展示物の監視や案内担当として6日は学生4人が配置されていた。4人とも、展示期間中に担当するのは初めてだったという。

 7日に記者会見した日本工業大の成田健一学長は、展示中に投光器を使った理由について「作品をより良く見せる意図があったのではないか」と話した。投光器は展示物内の端の方に置かれ、展示物を照らすために上向きに点灯させていたという。

 同署は7日、司法解剖の結果、健仁ちゃんの死因は焼死だったことを明らかにした。助けようとした父親(44)は両手にやけどを負い、目撃者の男性(40)も顔に軽傷を負った。【神保圭作、深津誠、春増翔太】

 ◇「活発で優しい子」幼稚園長

 火災で亡くなった佐伯健仁ちゃん(5)が通っていた聖徳学園三田幼稚園=東京都港区=の川並妙子園長(75)が7日、報道陣の取材に応じ「明るく活発で優しい子だった。この先長い人生を生きるはずだったのに。本当に耐え難い」と無念さを語った。

 この日、川並園長が電話した際、健仁ちゃんの母親は「(イベントに)楽しく参加していたのに、こんなことになってしまって残念です」と声を詰まらせたという。

 健仁ちゃんは、年下の子が泣いているのを見ると「どうしたの?」「お母さんのところに連れていってあげようか」などと話しかける優しい性格の子だった。園の運動会に家族と一緒に参加している姿が川並園長の印象に残っているという。川並園長は「昨年4月の入園直後は、お母さんを恋しがって泣くこともあったが、最近はすっかり幼稚園が好きになっていた」と涙をぬぐった。

 現場には7日昼、献花台が設置され、多くの人が花を手向けて冥福を祈った。世田谷区の渡辺英理子さん(40)は、「お父さん、お母さんにだっこされるように眠ってねという気持ちと、ご両親の悲しみが少しでも楽になるようにと祈った」と話した。【春増翔太、五味香織】

 ◇「白熱球注意を」専門家が指摘

 東京消防庁麻布消防署長などを務めた公益財団法人「市民防災研究所」の坂口隆夫事務局長は「白熱電球を可燃物に近づけることは非常に危険で、やってはいけない」と指摘する。白熱電球は発光ダイオード(LED)に比べて点灯中の温度が高くなる。坂口氏は「木くずは250~260度で発火する。白熱電球の場合、状況にもよるが、10分から1時間程度で周囲が木くずの発火温度に達することもある」と話す。展示物が屋外にあったことについては「屋内に比べて新鮮な空気が供給されやすく、一気に燃え広がったのではないか」とみる。

 東京理科大研究推進機構総合研究院の菅原進一教授(建築防災)は「電気はエネルギーであり、熱を出す。木材でも一定温度になれば燃える可能性があり、十分に注意が必要だ」と話した。【高島博之、山崎征克】

最終更新:11/8(火) 7:51

毎日新聞

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この2年あまり写真家のリサ・クリスティンは世界中を旅して、我慢できないほど過酷な現代の奴隷の現実を記録してきました。彼女はガーナの鉱夫やネパールでレンガを運び出す人々等、心に残る写真を紹介しながら、世界中で奴隷扱いされる2千7百万人に上る人々の窮状を訴えます。