11月8日(火)、アメリカの大統領選挙が実施されます。
今年の1月から、ず~っと選挙活動が行われていますが、終盤になって「史上最低の大統領選挙」とおおっぴらに言われているとおり、ひどい誹謗中傷合戦が繰り広げられました。
そのせいかどうか、両者とも支持率より、なって欲しくない率?のほうが上という珍現象が起きています。
クリントンもトランプも、どっちもイヤだ!という人が、とても多いということですね。
ところで、アメリカの大統領選挙の仕組みって、分かりますか?
なんか、ゴチャゴチャしていて、よく分からないところがいっぱいありません?
私は、なかでも、本選挙における「選挙人」のことが、ずーっと???だったのです。
が、それが、今日、はじめて分かったのです。
せっかくなので、アメリカ大統領選挙とその素朴な疑問と回答をザックリとまとめてみました。
アメリカ大統領選挙は3つの選挙から成り立っている
アメリカ大統領選挙は、「予備選挙」「本選挙」「選挙人による投票」の3つの選挙から成り立っています。
予備選挙
予備選挙は各政党の「大統領選の立候補者を決める」ことを指します。
流れとしては、
- 「党大会で投票権を持つ人=代議員」を一般党員が選ぶ
- 選ばれた代議員が党大会で投票し、党の立候補者が決まる
という2段構えとなり、一般党員による選出は投票を行うのがほとんどですが、中には集会で決められるケースもあります。
いずれにしても、これらのプロセスを総称して「予備選挙」と呼んでいます。
代議員は、候補の支持者や支持団体の代表によって構成されており、あらかじめ、どの候補に投票するかをオープンにしています。
党員は自分が投票したい候補者を推している代議員に投票するのです。が、保守的な地区では、集会という話し合いの名の下、力のある人が意見をごり押しすることも。
テレビ等を見ていると、「国が行っている公式な選挙」と思いがちですが、日本で言えば自民党や民進党の代表選のような「党内の選挙」なのです。
もちろん、これで選ばれた人の中から大統領が決まるわけですから、非常に重要な選挙となります。
本選挙
本選挙は事実上、大統領を決める選挙です。
実質的にやることは12月に上院で実施される「選挙人による投票」で投票する人を決めることなのですが、この選挙人は誰に投票するか、あらかじめオープンにしていますので、この時点で決定となるのです。
選挙人の数は州ごとに決められており、全部で538あります。これを人口等で各州に配分しています。
カリフォルニア州は人口が多いので選挙人の数は「55人」、アラスカ州やコロンビアDCなどは少なく「3人」です。
出典:Wikipedia
本選挙の流れ
さて、アメリカの大統領選挙でここが一番ややこしいところなのですが・・・、
- 各候補者は、州ごとに自分の選挙人となる人を決めておく
- 一般アメリカ国民は、候補者に投票する(マークシート方式)
- 一番多くの票を得た候補者が、その州の「大統領候補」になる
- 州の「大統領候補」になった人が決めていた選挙人が、12月の「選挙人による投票」に参加し投票する
- 最も多くの得票となった候補者が、次の大統領になる(別途細かい規定がありますが、省略します)
という流れなのです。
具体的に書くと、
- アラスカ州で、ヒラリーさんはAさん・Bさん・Cさんの3人を、トランプさんはXさん・Yさん・Zさんの3人を自分の選挙人として、前もって決めておきます。
- 本選挙で、国民は投票用紙に書かれている候補者にチェックを入れて投票します。
- 結果、ヒラリーさんが200万票、トランプさんは100万票の得票で、ヒラリーさんが勝ちました。
- これによって、ヒラリーさんが選んだA・B・Cの3人が、選挙人となります。そして、この3人は12月「選挙人による投票」に参加し、ヒラリーさんに投票します。
ということで、選挙人候補は、候補者の数×選挙人枠数だけいるのです。
なお、投票用紙に選挙人の名前が書かれていて、それに「○」をつけるところもあるけれど、ほとんどの州では、選挙人の名前は書かれておらず、候補者の名前にチェック、もしくは、記名するのです。
実はこれまで、この選挙人というのが、いったい誰で、何人いて、どうやって選ばれているのか、よくわからなかったのですが、今日、ようやっと仕組みがわかりました。
このように、各候補者が(政党や支持団体などと相談して)、州ごとに選挙人の枠数だけ「人」を選び(選挙人団)、候補者が1番得票することによって、全員丸ごと選挙人になるのです。
選挙人が選ばれているのですが、有権者は選挙人に投票しているのではない、ということでした。
ややこしいですね。
選挙人による投票
本選挙で決まった選挙人が投票を行い、ここで正式に次のアメリカ大統領が決定となります。
本選挙で勝敗は決まっていますから、おまけみたいなものですな。
選挙人が裏切ることも
各候補者は、選挙人には当然、「選挙人による投票」で自分を裏切らない人を指名しておきます。が、ときどき、裏切り者が出るのです。
おそらくは、事前に負けが決まっている候補者の選挙人が裏切るんでしょうけど、ね。
大統領選挙の素朴な疑問
このようにややこしいアメリカの大統領選挙、いろいろと疑問に思うこともあります。
これまた、ザクッとまとめてみました。
なんで11月の第二火曜日なの?
日本では選挙は日曜日に行われるものですよね。
ところがアメリカ大統領選挙は、「11月の第一月曜日の次の火曜日」と決まっています。
なんか、変な決め方ですが・・・、これは諸説あるようですね。
日曜日はキリスト教の安息日で皆、教会に行くからNGです。
月曜日は週初めで忙しい、だから火曜日にしたという説。
昔は交通が不便だったので、月曜日は投票所までの移動に費やすため火曜日にしたという説。
11月になったのは農閑期で、かつ、雪が積もる前だからとのこと。
ちなみに、「11月の第一火曜日」としなかったのは、これが11月1日になった場合、月初で皆、忙しいからというのが理由だそうです。
これから考えると、月曜日は週初めで忙しい説が信憑性が高そうです。
なんで選挙人選挙なの?
そもそも、アメリカともあろう国が、なんで直接選挙ではなく、選挙人選挙という間接選挙を行っているのでしょうか?
これは建国当初まで遡ります。
当時は、政治のことが良く分からない人や字の読み書きができない人がたくさんいました。
そういった人たちは、「字も読めて政治のことがちゃんと分かっている人に大統領を選んでもらったほうがいい」と考え、そして始まったのが、選挙人選挙なのです。
以降、アメリカの伝統として、この選挙方式が続いています。
今どき、投票用紙はすぐに集計できるのだから、直接選挙に方式を変えれば良いのにと思うのですが、そういう議論にすら、ならないそうですね。
1番が選挙人を総取りするのはなぜ?
民主的な選挙だったら、上の例で言えば、選挙人はヒラリーさん2人、トランプさん1人が選ばれるというように、得票数に応じて選挙人数も決めるべき、と思いますよね。
でも、アメリカの大統領選挙では、1番が選挙人を総取りしています。
これは、1番の人をその州として「大統領になってもらいたい人」と「州の総意」にするためなのです。
アメリカは合衆国ですから、(漢字は違いますが・笑)州としての独立性が高いのとともに、「まとまり」を大切にしているからですね。
この方式だと、候補者の得票数と選挙結果が逆転することもあります。
実際、2000年の大統領選挙では、民主党・ゴア候補のほうが、共和党・ブッシュ候補よりも、得票は多かったものの、獲得選挙人数で負けています。
そして、この後、「票の数えなおし」ですったもんだしましたね。
選挙前から結果が決まっている州がたくさんある?
伝統的に民主党が強い州と共和党が強い州があります。
候補者の人物や主張等に関わらず、過去の選挙でブレなかった州が、結構、たくさんあるのですね。
赤い州(共和党)、青い州(民主党)と呼ばれていますが、結果がほぼ見えているだけに、期間中、ここでは各候補者ともあまり選挙運動は行いません。
逆に、コロコロ結果が変わる州や、「近年、ここを獲った人は全て当選」しているオハイオ州には、選挙終盤、何度も訪れてテコ入れを図っています。
昨日、ワシントン州(青い州)の友人に、「選挙戦はどう?」って聞いたら、「静かなもの」って答えていました。
もしかしたら、日本のほうが大騒ぎしているのかもしれませんね。
今回は赤い州はどうなるの?
今回の大統領選挙に限って言うと、共和党が強い赤い州がどうなるか、分からないです。
ガチガチの共和党員でも「トランプ大嫌い」って人がたくさんいますから、これまで通りとならない可能性が高いですよね。
なんでトランプさんが候補者になれたのか?
これだけ、共和党が協力しないと言っているトランプさん。そもそもなんで候補者になれたのでしょうか?
上の「予備選挙」でも書いているとおり、候補者になるにはまず、党の選挙で勝たねばなりません。
この選挙で投票するのは党員です。そして、お金を払えば、党員になれるのです。
トランプさんは、立候補表明段階で、過激な発言を繰り返していました。
普段は政治に関心がなく、どの党も支持していない人たちの中に、この言動を見て急遽、共和党に入党し、トランプさんを応援した人が、たくさん、いたのです。
政策が良いと思ったのか、単におもしろがっただけなのか分かりませんが、とにかく、こうやって共和党員の「支持」を集めた結果、最終的に共和党の候補者になったのです。
候補者はヒラリーさんとトランプさんだけ?
予備選挙以降、アメリカの大統領選挙といえば、ヒラリーさんとトランプさんの舌戦という印象が強いのですが、実は、この2人以外にも立候補している人がいます。
リバタリアン党からゲーリー・ジョンソン、アメリカ緑の党からジル・スタインの両氏など、10名以上が立候補しているのです。
アメリカといえば、民主・共和両党の二大政党制だと思われがちですが、あれだけ多様性のある国ですから、政党もたくさんあるのですね。
ただ、この両党があまりにも大きいため、実質的には二大政党制となっており、どちらかからの候補者でない限り、大統領にはなれないというのが現実です。
ただ、今回のように、「あいつらだけは嫌だ!」って言っている人がこれだけ多いと、まさかの第三の候補者が大統領にならないとも限りません。
なんでTV討論会は2人だけ?
そんなにたくさんの候補者がいるのに、なんでTV討論会ではヒラリーさんとトランプさんの2人しか登場しないの?って疑問に思いますよね。
日本の参議院選挙などでは、NHKの政見放送は基本、全立候補者に時間を提供しています。なので、「UFO党」とかいう変な名前の政党が出てきて、わけの分からん政策を訴えたりするので、結構、笑わせてもらっているんですが・・・。
実は、世論調査で一定の支持率以上を持っている人でないと、TV討論会に呼んでもらえないというルールがあるのです。どこかのTV局では、たしか15%以上でした。
ちなみにロス・ペローと言うアメリカの実業家が大統領選挙に立候補したとき、ブッシュ(パパ)、クリントン(夫)とともに、3人でTV討論会に出たことがあるんですよね。
私はそのとき初めて、アメリカは二大政党制ではないというのを知りました。
おわりに
ヒラリーさんの私的メールアカウント使用に対して、FBIが大統領選挙直前に操作を再開、さらに、「訴追は見送る」という発表がありました。
あまりにもチグハグな動き、「メールの内容に問題があった。けれど、パンドラの箱は開けられない」と言ったことだったのでしょうか?(ウソかホントか、知らんけど・・・)
メールのどこが問題かは、こちらをどうぞ。
b-zone-salariedman.hatenablog.com
また、トランプさんがスナイパーに狙われたとかどうとか。
急に帽子をかぶり始めたのは、そのせいだとかこうとか、って噂があるようですが。(これまた、よう知らんけど・・・)
ほんとに、最後の最後まで大騒ぎの大統領選挙。
野次馬的には、ずいぶんと楽しませていただきました。
あとは、誰になるのか、そして、どうなっていくのか、ですね。
では、また。