預金保険機構が保有する資金について会計検査院が調べたところ、今後使われる見込みのない資金が1兆円超に上ることがわかった。この資金は国庫に納付できないなど使途が限られる仕組みになっているため、検査院は「改善の必要がある」と指摘した。

 この資金は1990年代後半の金融危機の際、金融機能早期健全化法に基づいて金融機関に注入された公的資金が元になっている。資本増強を目的に、預保は整理回収機構を通じ、32銀行の優先株などを計約8兆6千億円で取得。その後、業績を回復させた銀行が優先株などを買い戻したため、売却益が預保に利益剰余金としてたまっている形だ。

 特に2009年度以降、利益剰余金は1兆5千億円超で推移。15年度末時点で約1兆6千億円にのぼるが、使途は東日本大震災の被災地の6金融機関が破綻(はたん)した際に預金者へ返済する原資などに限定されている。そこで検査院が剰余金のうち使われる見込みがある額を試算したところ、最大に見積もっても約5千億円だった。検査院は、差し引いた1兆964億円は使用する見込みのない「余裕資金」とし、国庫に納付するなど有効活用できる制度の見直しの検討が必要とした。

 検査院は11年度の決算検査報告でも「剰余金の有効活用を図る方策を検討する必要がある」としていた。金融庁は「総合的に検討していく必要があると考えている」としている。(田内康介、力丸祥子)