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古来、我々が身にまとうものはただ体を温めるためのものではなかった。それは芸術品として、文化や信仰について何かしらの意味を有していた。
普段は衣服を身につけないのに、儀式では衣装をまとう部族もいる。そこにあった機能や意味合いは今ではもうほとんど忘れ去られ、同質化が進む世界において記憶の中からも消えようとしている……そこにまつわる物語もそうである。
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10. ユピク族のシャーマン
image credit: Frank George
ユピクは厳冬のシベリアからやってきた。食料に乏しいこの地では、狩人たちはシャーマンの祈祷に頼る。
シャーマンは彩色された木製の仮面を被り、狩の成就を祈願する。この儀式には獲物となる動物を鎮めるよう精霊の助けを乞うという意味合いがあった。シャーマンは村の医師でもある。病人がいれば、精霊に頼んでその人を苦しめる魔を祓ってもらう。
しかし、ヨーロッパ人がこの地を訪れた際、ユピクはキリスト教に改宗させられた。伝統的な舞踏は禁じられ、仮面もまた壁に飾られる単なる工芸品に過ぎなくなってしまった。
9. ナバホ族の神、ナイェネズガニ
image credit:Edward S. Curtis
1930年代、エドワード・カーティスという写真家がナバホ族のもとに滞在した。彼は死につつあった文化の記憶を保存するために、儀式に着用する衣装を写真に収めた。撮影されたナバホ族が着用していた仮面は、彼らの神々を似せたものである。
その一柱をナイェネズガニという。異邦の神々を殺す存在で、ナバホ族はこの神に出産や戦争での助力を祈願する。祈願を詠唱する間、男は神の姿を模した衣装を身にまとい、その振る舞いをダンスなどで表現する。詠唱の内容は、幸運や退魔を精霊に乞うものだ。
8. セクルナム(Sekl’nam)族の精霊
image credit:thestorybehindthefaces
現在のアルゼンチンとチリに住んでいたセクルナム族の衣装は、ゲーム『サイレントヒル』の世界から持ち出してきたかのようだ。彼らは子供が怖がるよう、あえて不気味な衣装を作った。
衣装は成人の儀式において着用される。男の子たちは何も知らされずに暗い小屋へと連れて行かれる。すると、衣装を着た者が突如現れ、邪霊を演じる。
これは彼らの創造神話と教訓を伝えるためのものだ。男の子が怯えつつもきちんと振舞っていれば、仮面を外し、かつて女が世界を支配していたと告げる。その時代、女たちはこの仮面で男たちを脅かしていた、と。だが、ある日、太陽の男(Sun Man)がそれはただの女であり、精霊ではないことに気がつく。そして男たちは女たちを倒し、権力を手にした。
現在においては不適切とされそうな神話であるが、セクルナムの人々はこれを信じ、少年たちに恐怖を克服せよと教えた。
7. アステカの仮面
image credit:Josh & Leanne Bearden</span>
アステカの仮面は頭蓋骨に似ている。実は似ているだけでなく、その一部は実際に頭蓋骨から作られる。アステカの戦士は文字どおり犠牲者の顔を取り外し、それで仮面を作ったのだ。外された頭蓋骨は寺院に持ち寄られ、黒い石や木、黒曜石で飾られる。歯や目をつけることもあった。仮面は装飾品として飾られたり、貴族の墓に遺体とともに埋葬されたりした。
6. アサロ族の泥男
image credit:Jimmy Nelson
白土で体を覆い、不気味な仮面をかぶるこの出で立ちは、アサロ族が戦に行くときのものだ。
彼らの伝説によれば、かつてアサロ族は敵部族に襲われたことがあったという。命からがら逃れた者はアサロ川の白土の中に身を隠した。しばらくして村へ戻った彼らは頭の天辺から爪先まで真っ白に覆われており、敵の部族は幽霊だと勘違いして逃げ去った。こうして武器を振るうことなく、敵を追い払うことができた。
これ以降、彼らは戦があれば必ず体を白く塗り、精霊の顔を模した仮面をかぶるようになった。これを見た敵は、恐怖に陥り、戦うことなく敗れ去るのである。
5. チベット、チティパティの仮面
image credit:traditionalartofnepal
チベット仏教の法要にチャムという舞踏がある。僧侶は衣装を身につけ、踊りながら祈りと瞑想を行う。使用される衣装や仮面には様々なものがあるが、チティパティの仮面ほど気味の悪いものはないだろう。
仮面が表すのは仏教の一組の神チティパティだ。彼らは生前僧侶であり、熱心に瞑想を行なっていた。あまりにも深く瞑想に入り込んでいたため、泥棒に首を斬られたときも気がつかなたったという。
死後、二人は復讐を誓い、近寄る者なら誰でも殺そうとした。しかし、すでに命を落としていた彼らは、墓の外にいる者にはまるで手を出せなかった。なかなか復讐を果たせず、代わりに笛を吹き、踊りを踊って過ごした。こうした神話は、死をとても滑稽に描いている。
4. モンゴルのシャーマン
image credit:eap.bl.uk
仏教によってモンゴルのシャーマンが消えてしまう以前、この国には実に複雑な衣装を身にまとったシャーマンが大勢いた。その衣装は魔法の力を授けてくれると信じられていた。鹿のツノなら俊敏さ、鷲の羽なら力、フクロウの羽なら夜を見通す目といった具合だ。
シャーマンになるのは幻覚を見た者だ。幻覚は神や精霊の世界を見る力の証とされ、そうした者たちはモンゴルの神秘を伝える役を担った。彼らのお勤めには、何か悪いことがあった場合に麻薬を吸い、アルコールを飲むといったことも含まれる。凶事は邪悪な力の仕業とされ、精霊の世界に入り込んで問題を解決しなければならなかったからだ。
3. クワキウトル族の舞踏
image credit:Edward S. Curtis
クワキウトル族は、カナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー島東岸北部から、その対岸の大陸側沿岸地域に居住する。ネイティブアメリカンの中でもひときわ美しい意匠で知られる。これらは彼らの文化の一部であり、子育ての大切な技術でもある。
その衣装は、ポトラッチという婚礼や伝統的な地位の継承が行われる儀礼で着用される。彼らは仮面を被り舞踏を披露する。これは精霊界の存在を召喚したり、かつて祖先が行なっていた超自然的な存在とともに暮らす方法を演じるという意味がある。
2. ワルムング族のボティペイント
image credit:religionandthehoneststudent.
ワルムング族はかつてオーストラリア北部に存在した先住民。祖国を追われる前、彼らは工夫を凝らしたボディペイントや衣装を身につけて定期的に儀礼を行ない、こうした伝統を世代から世代へと伝えていた。
男たちはお互いの衣装を飾り合う。木の皮から帽子を作ったり、紅白の縞模様で体を塗ったりすることもあった。そして狩や恋、戦いなどを演じる。また先祖にまつわる物語や精霊の役割などを演じることもあった。
男たちは精霊の助けを得る方法などを伝えていたというが、その内容はわからない。部外者と女たちには見ることが許されなかったからだ。
1. 世界最古の仮面
image credit:lefkadaslowguide.gr
人間は太古の時代から仮面を使用していた……そう、少なくとも9,000年前からである。ユダヤの丘から出土した世界最古の仮面を見れば、その用途についてあれこれと想像したくなる。専門家はいくつかの特徴を発見した。
だが、最も特徴的なのは形状だ。その一部は老人の頭蓋骨、あるいはひょっとした死んだ男をモデルにしているようだ。また、一般的なイメージではなく、特定の人間の顔をモデルにしているようでもある。
歴史家によると、亡くなった者に似せて作られているという。そして、これを着用した農民は、モデルとなった人物の話を伝え、そのあとで子供に亡くなった人間の顔を見せたのだそうだ。
via:10 Fascinating Costumes Worn By People In The Margins/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
8番ゼットンぽい
2. 匿名処理班
最初の画像、ウルトラマンの敵かと思った
3. 匿名処理班
最後の仮面が一番怖いのはどういう意図で作られたのか一見分らない所だろうか
4. 匿名処理班
3番みたいなのはバイオで5で見たなー
5. 匿名処理班
最後の怖い!
6. 匿名処理班
クラッシュ・バンディクー
7. 匿名処理班
先端恐怖症だからアサロ族の泥男さん直視できない
8. 匿名処理班
サムネけっかいトリオ
9. 匿名処理班
娯楽の一つでもあったんじゃないかと思う
TVもネットも雑誌も漫画も無い時代だと単調になる毎日を楽しむためにも必要だったのではないかと
10. 匿名処理班
アンパンマーン! 新しい顔よー!
11. 匿名処理班
基本的に恐れの具現化なのかな、怖いのが多い
ゆるキャラみたいなのがない
12. 匿名処理班
サムネの画像が一瞬TMレボリューションに見えた
13. 匿名処理班
セクルナムってケムール人の原型みたい
14. 匿名処理班
全体的にムジュラみを感じる
15. 匿名処理班
これを見ていると、かの遮光器土偶の異様な姿も、何らおかしくは無い様に思えてくるね。
16. 匿名処理班
マッドメンが無かった
17.