元パティシエではなく現役パティシエが腕を振るう本気のつけ麺。
今回紹介する東京・日暮里の「裏サブロン」では、脱サラしてパティシエとなり欧風菓子店まで構えた山崎博司氏がラーメンの神様こと「東池袋大勝軒」創業者の故・山岸一雄氏に教えを請いつつ独学で築き上げたおいしいつけ麺が食べられます。
日暮里駅&三河島駅から徒歩10分くらい。本業の洋菓子店「サブロン」の裏口で営業するからその名も「裏サブロン」
尾竹橋通り沿いに店を構える「サブロン」。
普通のお菓子屋さんに見えますが、季節の商品とかの貼り紙に混ざって「おみやげ用の冷凍つけ麺(1人前700円+税)本日あります」なんて告知も確認できるあたり、一風変わっているとも言えます。
くるりと裏に回れば「裏サブロン」……
って、のぼり旗や立て看板こそあるものの大変分かりづらいですね。
昼間や行列ができていると何かのお店と認識はしやすいですが、
洋菓子店の裏口にあるわずか4席の狭いお店なだけに、基本的にとてつもない穴場感漂う外観です。
多くの飲食店が立ち並ぶ繁華街の路地裏を歩くと、勝手口から厨房の様子を拝めたり、洗い物をしたり鉄鍋をガコガコ振りまくる料理人と目が合って妙なスマイルを浮かべることもありますが、この「裏サブロン」もある意味そのパターンのような見た目です。そんな見た目なんだけど立派なつけ麺専門店として迎え入れてくれますよと。
食べログ主催の「Japan Ramen Award 2016」で38,000店の373位と上位入賞を果たした際の旧店名は「カリフォルニア・フュージョン」で、「裏サブロン」と同様に名前だけでつけ麺を出すと分からないのも大変味わい深いです。
そんな「裏サブロン」のある路地裏を抜けてすぐの大通り沿いには漫画版・孤独のグルメでおなじみのアフロな蔦屋敷「ニューマルヤ」もあり、東日暮里ってば何とも濃ゆいエリアと感じさせてくれます。
すりガラス越しに何名着席しているかを確認。
4名だと満席なので入れません。その場合はお店の外に並ぶ形となりますが、前金制なので待ちつつ支払いの準備をしておくとベター。
日暮里「裏サブロン」のメニュー一覧。
つけ麺専門店なので基本メニューはつけ麺のみ。そこに肉増しなどのトッピングやらドリンク、ランチタイム限定の日替りプチデザートを任意でつけますが、こちらも入店前に何を食べるか決めておくと事がスムーズに運びます。
麺量は、並盛320g(一般的なお店の大盛相当)で700円、大盛440g(一般的なお店の特盛相当)で800円、さらに特盛550gで850円の3段階。つけ麺はあつもりにも対応。
ふと見上げると、でかでかとダクトが。
そして目と鼻の先に厨房が。
説明されなくともお店の一部を改装したと丸分かりな空間。とにかく狭いので、ビールケースの椅子は横向きではなく縦向きにして幅を縮めて座ると他のお客さんにも優しいですし、みんながみんなそんな配慮をできるようになると今よりもっと優しい世界になると思うんだ。
定番調味料のカスターセット。ボックスティッシュに加えてさり気なくウェットティッシュ完備。
加えてお水ではなく冷たいお茶、それも店主自ら程良いタイミングで注いでくれるのも嬉しい。
洋食が作られる過程を眺めながら食事ができる「日本橋たいめいけん らーめんコーナー」はまだ客席スペースが広々としている分、「裏サブロン」の場合は屋台メシに近い雰囲気がありますね。
調理も接客も何から何までワンオペなのもそういう印象を抱く理由ですかね。
山さんから山さんへ。山岸一雄氏がご主人にあてた手紙が大切に飾られていたり、
多くの方々が疑問を持つであろう「洋菓子店の裏口でつけ麺屋を始めたのか?」に対する答えを熱く語っていたりするので、それらに目を通して待ちましょう。
つけ麺の生みの親・山岸一雄氏の薫陶を受け、今も尚進化し続ける日暮里「裏サブロン」のつけ麺
最初につけダレ、続いてドカンと他店の大盛クラスの麺が到着。
往年の「東池袋大勝軒」を彷彿とさせる甘辛酸が絶妙に同居した魚介ベースのつけダレ。
おれがよく通っていた1990年代後半の「東池袋大勝軒」の麺量250gよりも多い、並盛330gの自家製太麺。
山岸氏のレシピをそのまま再現したのではなく、洋菓子の技法を取り入れたというツルツルモチモチ、心地良い歯応えが特徴的。
あつもりにしていただいたこともありますが、麺が温かいと小麦の風味が際立つ代わりに少なからず弾力が失われてしまうので、個人的にはひやもりのままがおすすめです。
ただ、温かい麺だといくらかお菓子の生地を口にしているかのような感覚にも浸れて、「なるほど、これが洋菓子の技法なのだな」って通ぶることができるかもしれません。
あらよっとジャブン!
ぬわーんと持ち上げズヴィヴィヴィヴィン!
数あるつけ麺の中でも確かに「東池袋大勝軒」の味がベースにあるんだけども、そこに固執し過ぎない工夫とやらが随所に散りばめられた仕上がり。
熱すぎることなくむしろ常温に近い温度感のつけダレだから、いきなり麺ジャブジャブからのズビビン啜り上げーの前に、タレをそのままちょいグビ、麺も素のまま味わってみるのも面白い。並盛でもなかなかの麺量なので色々な楽しみ方ができそうです。
側面に焼き色がついた香ばしい肩ロース肉のチャーシュー。
私の記憶が確かならば、かつての「東池袋大勝軒」のチャーシューは大判の豚モモ肉で、モソモソの質感がそれはそれでつけダレをジューシーに感じるキッカケと相成りましたが、こういうトッピングレベルでも違いが見受けられます。
デフォルトで1枚、+300円の肉増しにするとそんなブラッシュアップのチャーシューが計3枚。
麺を食べ終えたらスープ割して余すことなく完食!
夏場だとどうってことないんですが、これからの寒い季節だと食べ終わりは暖まっている状態が理想的なので、熱い煮干しの和風スープは欠かさず頼んでおきたいところです。
さらに昼営業時のみ食べられるプチデザートも摂取するなら言うことなし。
つけ麺(並盛)に本格的なデザートがついて1,000円でお釣りが来るなら満足度も高いんじゃないでしょうか。
14日夜営業予定です。スープは改良型スーパースープです。お味の違いはわからないかもしれませんが。
— つけ麺屋 裏サブロン (@urasablon) October 14, 2016
本業の片手間とは思わせない意欲的なツイート。
山岸一雄氏の元で修行した弟子達は実に数百名を超え、直系、傍系、そのインスパイアと多岐に渡っているのが現状ですが、その中でも断トツで異色の経歴と言える現役パティシエが手がける珠玉のつけ麺。機会があれば是非食べてみてください!