2016年11月07日

GDPで中国が日本を抜いて久しいが、日本は未だ世界第三位の経済大国の地位にある。GDPのトップ5の国に関して、2001年から2013年までの間の名目GDPの成長率を比較すると次のとおりだ。

  1. 米国: 122.9%
  2. 中国: 318.6%
  3. 日本: 110.4%
  4. ドイツ: 112.3%
  5. フランス: 113.8%

さすがに中国の成長率には大きく水を開けられているが、欧州の先進国にはそれほど引けを取っていないように見えるだろうか。たしかにこの数字だけ見れば、思ったよりも悪くない、日本まだまだ行けるという感じがしてくる。


実質GDP比較


しかし、見方を少し変えてやれば、とても安穏としてられる状況でないことが見えてくる。次の図は日本を各地方ブロックに分割し、2001年と2013年の実質GDPを他国と比較した図である。実質GDPは世界銀行のGDP at market prices (constant 2010 US$) から取得した。2014年以降のデータは国によって抜けが多いので2013年の値を用いている。また、日本の実質GDPは内閣府の県民経済計算から取得し、2010年のドル円レートで換算している。

GDP2001-2013


図をクリックすればインタラクティブVizに遷移し、各国をポイントすれば、国名や名目GDP、成長率などを確認することができる。これを見ると日本の経済成長を牽引しているのは関東であり、東北・中国・北海道・四国などの地方は21世紀以降ほとんど成長していないことが分かる。

実は現時点の関東のGDPは2001年における中国のGDPとほぼ匹敵する。それから10年余り。中国は図上でほとんど垂直の線として表されるバグのような成長を達成し、今の地位を築いたのだ。

実質GDP順位比較


日本の現状を知るには、順位で見るほうが分かりやすいだろう。次の図は、各国と日本の地域ブロックを実質GDPの大きさでランキングしたものだ。クリックすれば、インタラクティブなVizに遷移することができる。

GDPRank2001-2013


図を見れば一目瞭然なように関東以外の各地域は21世紀になってから大きく順位を下げている。47位に深刻な経済危機に苦しんだギリシャがいるが、北海道や四国はそれを上回る落ち込みだ。

まず関東を見てみよう。関東は118%の成長率を達成しており、ほぼ同等の経済規模となる英国(120%)にも引けを取らない。しかし、周囲をブラジル(154%)、インド(234%)という新興国に包囲されており、徐々に地位は低下してくことだろう。

中部と近畿は同程度の経済規模で、韓国を少し下回る程度だ。成長率はおおよそ110%だが、ライバルと比べると十分な値ではなく、2001年から2013年までの間に、インド(234%)、オーストラリア(144%)、韓国(161%)、メキシコ(132%)に抜かされた。間もなく、インドネシア(191%)、トルコ(179%)、サウジアラビア(195%)という国々にも抜かされることだろう。2001年にほぼ同水準だったインドは、2013年にはほぼ倍の経済規模に成長している。

九州はスイスと同程度の経済規模で成長率は114%。日本としては良い方だが、インドネシア(191%)、トルコ(179%)、サウジアラビア(195%)といった国々に置いて行かれ、ポーランド(156%)、アルゼンチン(157%)、イラン(154%)に地位を脅かされている。2001年にほぼ同水準だったインドネシアは、2013年では九州の1.5倍になっている。

東北と中国はおおよそタイに相当する経済規模であり、両方共110%程度の成長率となっている。サウジアラビア(195%)、ポーランド(156%)、アルゼンチン(157%)、イラン(154%)、ベネズエラ(147%)、ナイジェリア(259%)、南アフリカ(148%)といった国々に抜かれ、UAE(169%)、コロンビア(171%)、マレーシア(182%)、シンガポール(205%)という国に抜かされようとしている。2001年にほぼ同水準だったサウジアラビアは今や倍の水準だ。

北海道はポルトガルと同程度のGDPとなる。成長率は100%と完全に停滞しており、地盤沈下が著しい。UAE(169%)、コロンビア(171%)、マレーシア(182%)、シンガポール(205%)、イスラエル(153%)、チリ(164%)、香港(163%)、フィリピン(183%)、エジプト(165%)、アイルランド(132%)などにゴボウ抜きにされ、チェコ(133%)、パキスタン(164%)、イラク(174%)、ペルー(204%)、ロマニア(152%)、アルジェリア(155%)、カザフスタン(231%)などにも間もなく捉えられるだろう。2001年に北海道と肩を並べていたタイは2013年には1.7倍に成長した。

最後の四国はニュージーランドと同規模の経済規模であり、成長率は105%と悪い。シンガポール(205%)、チリ(164%)、香港(163%)、フィリピン(183%)、エジプト(165%)、パキスタン(164%)、イラク(174%)、ペルー(204%)、ロマニア(152%)、アルジェリア(155%)、カザフスタン(231%)などに置き去りにされ、ニュージーランド(133%)、カタール(415%)、ウクライナ(147%)、バングラデシュ(197%)に差を詰められている状況だ。2001年に同レベルであったナイジェリアはもはや2.6倍だ。

現在の日本は、世界経済における地位を一日一日と失っている。1990年台には欧州の先進国と肩を並べた各地域の経済規模は、今や新興国に次々と抜かされる状況にあり、経済規模から見れば日本の地域は既に後進国のレベルである。しかも経済活動は停滞し、他国が達成しているような成長率が望めない。このグラフを数年後作ったときにどうなっているか想像してみて欲しい。5年後はどうだろうか、10年後は?

日本が強かった時代は既に遠い昔の話だ。過去の栄光にすがるのではなく現実に目を向け、この沈みゆく国においてどう生き残っていくか、その方策を真剣に考え実行する時期に来ている。

lunarmodule7 at 21:00│Comments(0)TrackBack(0)

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