ーー自己紹介とこれまでの活動についてお聞かせください。
中学2年の春に藤原和博先生に「お前は日本じゃなくイギリスの学校に行けばいい。」と言われて、中学2年の時に単身で渡英しました。そこから3年間イングランドのボーディングスクールに通っていました。高校2年生から3年生の間はスコットランドのボーディングスクールに2年間通い、大学入学前に1年あけて、ギャップイヤー制度を取得して日本に一度帰ってきました。
その時にも藤原先生から「俺が支援してるNPOの代表で面白いヤツがいる」、と当時e-EducationProjectの代表を務めていた税所篤快(さいしょ あつよし)を紹介して頂きました。そこから話はトントン拍子に進み、僕がアフリカ・ルワンダでの教育プロジェクトの立ち上げメンバーになりました。
ただ現地のルワンダで過ごすうちに、農村では作物は余っているのに、都市部では食料が足りず欲している人たちがたくさんいる、ということに気づきました。そこでこの2つの状況を噛み合わせればいいんじゃないかという話になって、そこからは僕が主導でプロジェクトベースで進めていきました。単純に、農作物があり余っている農村部と農作物が足りていない都市部を繋げる事業です。 当初は教育事業が目的でルワンダに来ていたのですが、国民の70%以上が雇用されている農業セクターで課題があったので、そちらで事業を興すことにしました。その事業では30人くらいの現地人と一緒に、国連と僕たちの会社とでプロジェクトを進めていきました。
「好きなことをすべきだ」と思えるようになった事です。それは海外の特性というよりはボーディングスクールの風習なのですが、基本的には生徒のやりたい事をサポートするのがボーディングスクールの先生たちの役割なんです。ですので、学校の授業を休んでも、それなりの理由があれば許可してくれたり、理解してくれたりするんです。そういった環境にいたので、僕も東日本大震災の時は学校の中でタレントショーを開いて、約2万ボンドのお金を赤十字に送るという活動も行っていました。そういった活動を全面的に学校が支援してくれたので、他の生徒たちもやりたいことがあればバンバンやっていましたね。 生徒会で授業のカリキュラムを決めることもありますし、食事の献立も生徒が考えていました。本当に生徒が主体の学校でしたね。 土日になればパーティーを開いて、先生もTシャツで騒ぐこともありました(笑)。 基本的にみんなノリがいいですよね。そういうところからプロジェクトマネジメントやコラボレーションスキルを学べたと思います。
あとはやはり‘’ノブレス・オブリージュ‘’に関してですね。高貴なる者の義務、と言いますか。「多くを与えられた人は、多くのことを期待される」、ということは日々意識しています。先進国に生まれた以上、これまで培ってきた経験・知識・機会を社会に還元するのは義務であり、世界は私たちに期待する権利がある、と。やはりこれが一番自分を新興・途上国で活動させるモチベーションとなっているのかもしれません。
ーーボーディングスクールで得たことは、どのようにしてその後のプロジェクトに生かされているのですか?
周りの目を気にしない、という部分がかなり活かされていると思います。実はボーディングスクールでは外部の人たちは巻き込まずに、内部の環境で自由にやらせてもらっていたんです。でもそれが逆に良かったんですよね。例えば、新宿のど真ん中でプロジェクトをすると周辺の住民たちから反発が出てくると思うんですよね。でも僕らは学校の中だけで行っていたので、偏見や固定概念がなくて、周りを気にせず、やりたいことをやれたのが大きかったです。 あとは、やはり多様性がありました。それがボーディングスクールに世界中から人が集まる理由だと思っています。イギリス人だけではなくて、本当に世界各国の生徒がいました。中東から来ている石油王の息子もいましたね(笑)。土日の休みだけで飛行機で地元に帰ってました。マジで意味分かんないです(笑)。 そういった環境にいたので、普通の学校で得られる以上のことはあったと思います。
大学に行く意味はあるのか。【学生が知っておくべき4つの事実】
一番の強みは圧倒的にブランド力です。先祖代々の日本人の方が頑張ってくれたおかげでブランド力があると思います。‘’トヨタ=日本人‘’みたいなことですね。特に途上国に行くとトヨタの車ばかりですし、その車の性能の高さだけで「日本人はすごい」という評価になります。トヨタは一例ですが、そういったブランドが国と同じぐらいのレベルで信用されているので、日本人というだけで信用を与えることがあります。
逆に弱みとしてはシャイな性格だと思います。実は僕と一緒に留学に行った人の4割くらいが1年以内に日本に帰ってしまいました。海外の人たちから日本人に対するジョークを言われて、必要以上に落ち込んでしまう人もいますね。「中国人だろ」と言われて真剣に返事してしまうと言いますか、ジョークを真に受けてしまって、「自分はいじめられている」というイメージを持ってしまって、部屋に閉じこもってしまう人なんかも結構いましたね。
ーー弱みとされているシャイな部分はどう強みに変えることができると思われますか?
強みにするとすれば「空気を読む」という能力ですよね。実は東アフリカの人と日本人は結構似ていて、本音と建前があります。僕が意識していることとして、欧米人と話す時はまず結論を言うようにしています。一方、東アフリカの人には、雑談を入れて結論をスバっとは言わないようにしています。彼らは日本人と一緒で何も言わず欧米人の意見に飲まれてしまうという傾向があるんです。やはり最初に結論をズバズバ言ってしまうと一方的な上から目線になってしまいます。日本人は交渉ごとの前に、雑談を入れながら話しますよね。それと同じで、いきなり結論からは入らず世間話をはさむんです。その中で相手の意見を引き出すと商談は上手くいきやすいと思っています。時間はかかるのですが、信頼関係は絶対日本人や東アフリカの人の方が築きやすいと感じています。そういう気を遣うような気質は欧米人は持っていないことが多いので、ここは日本人の強みにはなるんじゃないかと思います。
ーー欧米人と話すときはどういう接し方をしていらっしゃるのですか?
ガツガツくるので、こっちもガツガツいきますね(笑)。自分の力量以上の発言をして、自信をつけるようにしています。悪い言い方をすると相手を見下す形ですね。僕がいる世界は本当に僕以外志が高くて優秀な人たちが多いので自己主張が激しいんですよね。そういう環境だと、主張することを意識して話さないと「こいつはこの程度の人間なんだ」と思われてしまうんです。ただ僕自身はもともと自己主張が強い人間なので、日本ではマイノリティな人間だと思いますよ(笑)。
僕の同期はほとんどが今は大学3年生で就職活動真っ最中なんです。彼らは大学1,2年生の頃にインターンをしたり、自分で学生団体を立ち上げたりと、いわゆる意識の高いことをやっているんですよね。でも大学3年生になると就職活動を始めて結局は大企業、例えばコンサルや商社などのネームバリューに魅かれて入社してしまうというパターンが9割なんです。じゃあ他の1割は何が違うのかを考えると、「思いの強さ」と「自信」だと思います。どれだけ「自分を信じられるか」ですね。そこで人と差別化できると思います。そもそもその1割の人はリスクとか、そういうことなんて考えないんですよ。気づいたら今がある、といった感覚だと思います。
ーー日本人は周りに流されてしまうことが多いと思うのですが、どうすればその流れに捉われない考え方が身につくと思われますか?
一番ダメなパターンは「なんとなく皆そうしているから」という理由で動くことだと思います。自分の意思を何も持たずに就職している人が一番もったいない気がしています。これだけ急速に環境が変わる時代の中で、逆に企業に身を置く方がリスクなんじゃないかと見ることもできると思うんですよね。その辺のインフルエンサーがよく言っているミーハー的考えですが。ただ、そういった風に普段から冷静に自分の頭でまずは考える事が重要だと思います。
あとは価値観の面ですと、日本人だと年収10万ドルで満足する学生が多いんです。いわゆる外資系企業の方の平均の年収ですね。ただそこで僕が言いたいのは、10万ドルの年収が欲しいのか10万人の生活を変えるのか、どっちがいいのかを考えて欲しいという事です。僕は20億人の生活を変えたいから今があると思っています。世界のゲームチェンジャーである、イーロンマスク、ザッカーバーグ、ビルゲイツなどは圧倒的に後者ですよね。そういった価値観を変えていくのも重要かもしれません。
2014年5月末に東アフリカでの農業事業に一区切りをつけて新しいことを西アフリカでやりたいと思っていたら、エボラ感染の波がタイムリーに来たんです。WHOの方に「ビジネスどころじゃなくなるかもしれないよ」と言われたので、一旦日本に引き返してきて、どこで始めようか考えていました。そこで「東南アジアがアツい」と周りの方々が言っているので、自分の目で確かめたいと思っていて、今はそれを準備している段階ですね。 あとは単純に僕が取り組みたかった「BOPの20億人の生活を変える」ことをやりたいという強い思いですね。アフリカとは別の世界でチャレンジしてみたいと思っています。
ーー牧浦さんが取り組もうとされているパーソナルデータ事業とはどういうものなのですか?
ビッグデータとは違うパーソナルデータを使ったサービスが先進国ではβ盤サービスで日々出てきています。 例えばですが、データクープと言われるサービスは、SNS、例えば、Twitter、Facebook、Instagramをデータクープ上のサービスを通じて使うことで、毎月ユーザーに対して10ドル~20ドル還元する、というモデルです。これまでFacebookなどで、ステータスを更新したり、メッセージを送信したりして、様々なページを閲覧してきましたよね。そういったデータがFacebookに溜まっていって、それをFacebookが僕たちに対して広告という形で還元するという方法を取っていました。広告があるから無料で使えるという流れですね。最近の技術の発達でデータを存分に活かすことができるようになったので、それが広告だけではなく、もっと価値のあるデータになってきていているんです。つまり今までお金にならなかったものがお金になってきているという事です。それがパーソナルデータのサービスなんです。そしてその分野は、新興国、途上国の方が需要があるのではないかなと思っています。
解決したい問題は3つあって、1つ目がインターネットがない地域にインターネットを届けること。 2つ目がインターネットや携帯の料金が高いという問題を解決したいというところ。 そして3つ目が資産のない人たちにどういうリソースを与えて、彼らの可能性・チャンスを広げられるか、人生の可能性を広げられるか、ということです。 その3つの解決が当てはまるのが、たまたまパーソナルデータだったんです。だった、というかだと思うのです、まだ準備中なので。資産なき層が持っている唯一の資産がパーソナルデータだったところが、テクノロジーの発展によって、価値のあるものに変わっていったんです。所得が低い人にもデータが加わる事によって、少し所得が上がって、さらにインターネット回線が整えられる事によって、「もっと色んな職を調べてみよう」だとか、そういう世界が広がってくると信じていますね。 人々が今まで記録していた、健康情報であったり、家計簿であったり、Webの閲覧履歴であったりというデータが解析されて、人々に有益な情報を与えられるようなことをやっていきたいです。 そういうモデルは個人情報という壁があって、これまで実現されていませんでした。「これだけの可能性があるんだよ」という事をまずは途上国で成功させて、先行事例を先進国に持ってくる、いわゆるリバースイノベーションを起こしたいと思っています。
ーー牧浦さんのキャリアプランを教えてください。
僕はこの事業をやると同時に将来は、社会企業に特化した証券取引所を作りたいと考えています。
そもそも社会起業の定義が日本だと曖昧なんですよね。アメリカだと、州によりますが、「ベネフィットコーポレーション(b-corp)」という法律で社会起業の定義が決まっていて、株式会社とは別のネーミングが会社には与えられるので、事業がやりやすい環境なんです。 マーク・アンドリーセンという有名なベンチャーキャピタリストの奥さんは、社会起業だけに特化した投資ファンドベンチャーキャピタルを持っているんです。ただまだ日本だと社会起業というと「しょぼい」というイメージがあります。規模が小さいというイメージがついてきているので、それを変えるには、社会起業に特化したマーケットを作らないといけないと思っています。そうすると、社会企業全体のプレゼンスも上がると思っています。それを僕は10年後には成し遂げたいと思っています。そのスターティングポイントとしての起業が、いま僕が始めたい事業ですね。 その後には政治にも身を乗り出したいと考えています。
ーー牧浦さんが政治に関わるビジョンをお聞かせください。
今の政治を土台にしてイメージしているわけではないです、決して。若者に対する影響力Top5にYoutuberが入ってきていますよね。YouTubeやツイキャスなどのツールによって誰でも発言ができて、それがパブリックに広がるようになってきたじゃないですか。例えば、最近では元首相の細川さんと家入さんが東京都知事選でツイキャスに出られたケースもそうですよね。 政治家って、ある地域を代表して発言しているのに、Youtuberのほうが影響力があり発言力ある時代、というところに目を向けるべきだと思うんです。そういう人達を活用して、「政治家とは」という原点から変えていきたいですね。そういう意味で今の政治のイメージではなく、若い世代から政治のイメージを新たに創り上げて生きたいです。そうする事でもっと政治を市民と近くして、さらに国を大きくしていきたいです。もちろんそれは今の僕の力じゃ絶対できないと思っています。 今ではまだまだ既得権益が強くて大きいですが、10年後にはITの進化によってもっと市場がフラットになってきていると思うので、政治に参入するにはいい時期かと思っています。
「Yes」と言い続ける事ですね。目の前に桃が流れてきたら、全て自分のところに引き寄せる事が大事です。僕は10個の桃のうち、3つくらいが桃太郎だったら良い方なんじゃないかと思っています。今の学生は何をやるかを選んでしまっていると思うんです。最近、学生の4割が就職浪人しているという記事を読んだんです。トップ層の大学を出た人でも自分の行きたかった企業から内定をもらえなかったといった理由です。でも僕はそもそも現場に入り込まないと企業のことなんて分からないと思っています。そこに入ってみて違うと思えばまた別のところに行けばいい、ただそれだけのことだと思います。僕もまだまだ人のことは何とも言えないのですが、自分が好きなことは社会に出ることで分かるものだと思います。多くの人は3打席で勝負しているんです。10打席で勝負するべきです。もっと言えば100打席バッターボックスに立って勝負すればいいと思います。「これ違うな」「これ嫌いだ」「これ無理だ」ではなく、とにかく打席にたくさん立ちまくって、目の前に流れてきた事をやりまくることが大事だと思っています。いい大学に通っている学生は自己意識が強くて、変なプライドがすごく高いです。僕は「こだわりが強い人間なので」とドヤ顔で言ってみたり、「こういう仕事はやりません」と言ったりする人が結構いるんです。自分で色んな選択をするというのは頭の回転が早すぎるということもあるかもしれませんが、「考えずにとりあえずやってみる」というのは非常に大事な心がけだと思います。Yesと言い続けて、色んなことをやったとしても全然忙しくないですからね。とりあえず全部Yesと言っておいて、後のことは全部後で考えればいいだけです。
もう一つ僕は、「Over-promise」という考え方を大事にしています。自分ができる事+αで約束してしまうんです。そうすると、「こいつ普通の学生とはちょっと違う」と思われるんですよね。嘘はダメですけどね(笑)。お偉いさん(尊敬している人)と話すときはいつも自分のキャパ以上の事を話しています。そうするとその+αの部分に相手との共通点があったりして、話が合って、「じゃあ一度1対1で話しましょう」といったチャンスが生まれることがあります。 Yesを言い続けることと、Over-promise、話を盛る能力は重要ですね。