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2%物価目標 政府こそ失敗の検証を

 日銀が、また物価見通しを下方修正した。目標とする上昇率「2%」の達成時期は7月時点の予測から約1年後ずれし、「2018年度ごろ」となった。延期は5度目で、黒田東彦総裁の5年の任期中に目標達成が困難なことを認めた形だ。

     「2年程度で2%」の実現を宣言し、黒田日銀が異次元緩和と呼ばれる大規模緩和を始めたのは3年7カ月前である。すでに発行残高の約4割にあたる国債を買い占め、大量の資金を経済に供給したにもかかわらず、物価上昇率は2%どころかマイナスが続いている。

     日銀は9月に「総括的検証」を行い、失敗の要因を分析した。急激な原油安や新興国経済の悪化で物価が下がったこと、そして長年のデフレにより、日本人の物価予想が今の物価情勢に引っ張られる傾向を持つこと、などを挙げた。

     お金の量を驚くほど増やせば、物価が上がると人々が予測するようになり、本当に物価が上がる--。根本の筋書きが誤っていたわけだが、日銀は認めていない。

     目標を達成できなかった時、「自分たちのせいではない、他の要因によるものだ」と言い訳をすれば、市場がその金融政策を信用しなくなる。岩田規久男副総裁が就任会見で語った言葉だが、今の日銀はまさにそれにあたる。

     では、これは日銀だけの問題か。

     物価上昇目標「2%」は、12年末の衆院選で、「デフレからの脱却」を掲げ政権奪回に挑んだ自民党が公約に明記した。日本経済の実力に照らせば高すぎる2%の目標を、13年1月、日銀との共同声明に盛り込んだのは安倍新政権だ。

     日銀の大胆な金融緩和は、アベノミクス三本の矢のまさに1本目である。積極的に推進してくれそうな人物を総裁以下、政策委員会のメンバーに送り込んだのも安倍政権だ。

     その目標はいまだに実現していないばかりか、再三の先送りの末、最新の達成時期は目標設定から6年後の「18年度ごろ」だ。それさえ民間エコノミストらは楽観的だと見る。なぜ最も強調した国民との約束を果たせていないのか、少なくとも説明する責任が政府にはあるはずだ。

     政府は日銀に早期のデフレ脱却を求める一方、自らは「持続可能な財政構造を確立する」と財政再建を誓った。しかし、消費税率の引き上げは2度先送りし、年間予算も過去最大規模に膨れあがっている。

     財政が市場の信認を失い、国債価格が急落(長期金利は急騰)した時に経済が受けそうな衝撃はかつてなく高まっている。破綻が明らかになった政策を、点検もなく掲げ続けることは無責任極まりない。

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