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1人でふたつの国籍を持つ、「二重国籍」の論議が最近、国会などで続いてい…
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1人でふたつの国籍を持つ、「二重国籍」の論議が最近、国会などで続いている。
国際化が進む今、二重国籍はもはや珍しくはない。
父母のどちらかが外国人である場合のほか、米国など出生地によって、ほぼ自動的に外国籍が与えられるケースもある。
そうした日本人が80万人以上いるとされている。
論議の中には、その現実とは無関係に、過度に問題視するような意見もある。しかし、ここは未来の日本をしっかり見据えて、どんな国籍の扱いが望ましいか冷静に考えたい。
日本の国籍法は22歳までに日本か外国の国籍を選ぶよう求めている。日本国籍を選択した場合、外国籍については「離脱に努める」のが決まりだ。
だが、罰則はなく、日本国籍を選んでも外国籍は離脱しないケースが大半だ。自分に外国籍があることに気付かない人もいる。国籍の離脱手続きが難しい国もあり、強制はできない。
国籍を剥奪(はくだつ)されると思い込んで他方の国籍を放棄してしまい、後悔する人も少なくない。
「国籍選択は、父母のどちらかを選ぶようなもの」「二重国籍であるだけで悪いことをしているように思われる」。そんな切実な声にも耳を傾けたい。
国境を越えた人の往来や経済活動が盛んになり、90年代以降は多くの国が二重国籍を認める立場にかじを切っている。
欧州では97年、出生などで得た外国籍の保持を認める条約が採択された。主要7カ国で認めていないのは日本だけだ。
幅広い人材を呼び込めるだけではない。国籍を柔軟に認めた方が社会参加を促し、国を安定させるとの考えが基盤にある。
日本政府も、二重国籍が原因での具体的な弊害は起きていないことは認めている。そろそろ「国籍唯一の原則」を再考すべき時ではないだろうか。
一方、政治の場での論議の発端は、蓮舫・民進党代表の「国籍」をめぐる問題だった。
台湾籍を放棄したかどうかで説明が揺れたことは、公党のリーダーとして不適切な対応だったといわざるをえない。
ただ、日本は外交官など外務公務員を除き、二重国籍者の公職就任を禁じていない。外国籍があるのを理由に参政権などを奪うのは、憲法が定める法の下の平等に反する可能性もある。
二重国籍と公職とのあり方については、慎重に時間をかけて論議を重ねる必要があろう。
多様な背景を持つ日本人が胸を張って共に暮らす。目指すべきはそんな社会である。