2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、一部の会場選びが論議の的になっている。

 各競技ごとの個々の計画を精査することは大切だが、この巨大な事業全体の成功を期すためには、同時にもっと大きな視座で急ぐべき改革がある。

 全体の構想と準備の進み具合を常に見渡す「仕切り役」を明確に決め、東京都や国、大会組織委員会などの分担と責任の所在をはっきりさせることだ。

 さもないと開催までの4年のどこかで再び混乱しかねない。この「本丸」の改革に本気で取り組めるか、小池百合子都知事の覚悟と技量が問われる。

 会場の見直しについて、都は国際オリンピック委員会(IOC)も加わる4者協議に委ね、作業部会が3日間開かれた。

 都が示した複数案は、どれも一長一短ある。「復興五輪」の理念、費用や工期、選手の使いやすさ、大会後の利用計画など幅広い角度から分析して、より良い結論を導いてほしい。

 不可欠なのは、議論の過程を公開することだ。しかし作業部会は当初、内容を一切公表しないとする方針を示した。

 最終日に報道陣の質疑には応じたが、密室の議論にしようとした姿勢は不適切だった。

 結論がどうあれ、決定過程が不透明では、候補地に名乗りを上げた県も、税金を出す都民も、選手らも納得できまい。

 新国立競技場の迷走やエンブレム選考問題は、まさに不透明な過程による過ちだった。同じ失敗を繰り返してはならない。

 一方、小池知事が投じた一石には功績もあった。開催費が膨らむ危機感が共有され、工夫次第で会場整備費を削れることがわかった。復興五輪という意義にも再び光があたった。

 ただ、ボートなど3会場の見直しで削れる整備費は、最大440億円。3兆円ともいわれる総額に比べれば「焼け石に水」だ。一層の工夫が必要だ。

 作業部会は、輸送や治安対策も含めた全体のコスト削減も議論したようだ。だが、都の報告書が指摘した「社長と財務部長のいない」運営体制については改善の気配が見えない。

 五輪・パラリンピックは、その開催都市がホストとして大きな責任をもつ以上、知事が論議を率先するのは自然な流れだ。

 小池知事が自ら旗をふった会場の見直し案は、IOCや競技団体などとの調整で、変更や改善もありえるだろう。

 だが、全体の責任の所在を決める改革こそ知事には求められている。そのために国や組織委は前向きに協力すべきである。