テトリスコラボに大学作品展。今「bitカルチャー」を加速させる創造力とは何か? 【TOKYO DESIGN WEEK】
DIGITAL CULTURETOKYO DESIGN WEEK 2016が開幕した。前期は10月26日〜10月31日、後期は11月2日〜11月7日と合計12日間開催される。
東京デザインウィーク×テトリス
見所のひとつは、テトリスブランドとのコラボレーションだ。1984年に旧ソ連の研究者アレクセイ・パジトノフによって開発されて以来、世界中を熱狂させ続けたゲーム『テトリス』は、そのミニマルなデザインからライフスタイルブランドとしても成長している。
こちらは、メインテント内のステージ「TDWソクラテスカフェ」に展示されている、コンテンポラリーアーティスト鬼頭健吾とテトリスのコラボレーション。鬼頭によるフラフープを使ったインスタレーションの曲線と、キューブ状のテトリミノ(テトリスのブロック)の融合が、ポップな空間を演出している。
テトリスで頻繁に遊ぶプレイヤーに見られる症状に「テトリス効果」というものがある。形の異なるテトリミノを回転させて隙間なく揃えるゲームに没頭するあまり、日常生活で目に入るもの全てがテトリミノに見えてしまうというものだ。
彼らには、積んである箱や床のタイル模様などを見て「この隙間を埋めるには...」と考えてしまう習性がある。会期中にTDWソクラテスカフェの壁面のあちこちにある隙間を見てムズムズした結果、何か暴挙に及ぶテトリスプレイヤーが出て来ないか心配である。
TETRISの出展ブースには、そんなテトリス効果をさらに加速させかねない製品が販売されている。
アイシングでテトリミノを再現したクッキーは、ゲーム好きへのお土産に喜ばれそうだ。しかし、テトリスプレイヤーであるなら、1袋ではとても足りないだろう。
テトリミノ型の氷を作るアイストレーも販売されている。これなら量産できるので、重度のテトリスプレイヤーでも安心だ。ただし溶けるので、これで遊ぶとなればゲームのテトリスとはまた異なる時間制限が生じる。そのうち「アイステトリス」という遊びが流行るかもしれない。
TETRIS FAB BARはリンゴ音楽祭のテント内に土日祝日限定で開店する。バーカウンターでドリンクをオーダーすると、上記のトレーで作られたテトリミノ型アイスキューブ入りで提供される。デジタルサイネージにはテトリスの謎に関わるコンテンツが表示されるという噂もある。
メインテントから外に出ると、Air Tentのエリアになる。ここでは河口洋一郎、隈研吾、NAKED Inc.、 落合陽一といったトップクリエイターたちの作品が見られる。直径約4メートルの透き通ったバルーン型テント内に展示されている作品の一部は発光するので、宵の口から夜にかけてが美しい。
融合からミニマリズム、そしてbitカルチャーへ
Air Tentエリアを越えると、TOKYO AWARDS 学校作品展が並ぶ。不思議なことに、今年の学校作品展はキューブモチーフの作品が数多く展示されていた。TOKYO DESIGN WEEK 2016がテトリスとコラボレーションしたことを受けてと思いきや、どうやら違うらしい。一体どういうことだろうか?
今年の学校作品展のお題となったテーマは「pairs」である。こちらの作品は、網を2重に貼り合わせて作ったキューブ群で、中に人が入れるように設計してある。中から外を見ると、ちょうど水の中から水面を見た時のような波紋状の模様が視界に入る。これは外界からの刺激によって波紋が広がるという、事物の関わりと視覚的変化を表現しているとのことだ。貼り合わせた網もまたpairsなのである。
東京理科大学の展示は、よりテクノロジーに寄せた解釈でpairsを表現している。葛飾北斎の作品『神奈川沖浪裏(富嶽三十六景のひとつ)』を、8bitのピクセル画に変換し、それを3Dで表現したのが、こちらの作品。
素材は発泡スチロールで、表面をレーザーカッターで削り、日本の伝統的な文様をつけている。さらに、初日には間に合わなかったようだが、この作品に合わせたプロジェクションマッピングも用意しているとのことだ。
こちらのチームの作品は『素の家』というタイトルで作品を制作した。入り口には次のようなメッセージが刻まれている。
生物は巣を創った
人間は家を造った
「私は素に戻りたい」
私は家を削り、暖をとる。
素に戻ることで、住居がプリミティブな巣へ回帰するというストーリーだ。中に入ると、削った木々に全身を包まれた。確かに暖かい。住まいだけではなく、そこにいる自分自身も原始的な生物に回帰したような、不思議な気持ちになる。
学校展示に出展している学生たちに制作意図を聞いてみると、一つひとつがまったく異なる。それにもかかわらず多くの作品のデザインがキューブという共通点を持つのが面白い。
今、ビデオゲームやピクセル画といったモチーフは、ファッションやプロダクトデザイン、グラフィックデザインという垣根を越えたブームになっている。出展している学生たちにとって、ファミコン時代の8bit画はノスタルジーを感じるものではなく、昔流行ったポップカルチャーだ。彼らが生まれる前に流行った文化と、テクノロジーが生活の隅々に行き渡る今の時代背景と組み合わせることで、東京のbitカルチャーは加速していくのかもしれない。
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