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●がんに負けないための7カ条 本の最後のところで、僕は「がんに負けないための発想の転換七カ条」というのを書きました。がんにこれからなる確率、日本人の場合は2人に1人が一生の間になるんじゃないかというデータもある。ですから、例えば、自分は絶対がんにならないってこの会場の中でも思っておられる方がいたとすれば、2人に1人はなるといったら、お隣にいる人ががんになってしまう可能性が高いっていうわけですよね。 だから、がんにならないためにどうしたらいいのか。それから、手術は成功して終わったけど、再発をしないためにはどうしたらいいんだろうか。それから、既に再発している人たちにもがんに負けないためにはどうしたらいいのかっていうことで、がんに負けないための7カ条というのを書きました。 第1条は「闘い方を変幻自在にしよう」。がんに支配されないように、自分で自分の生き方をきちっとしていきながら、頑張ればいい。問題は解決すると思わない。頑張ったり頑張らなかったり、その微妙な駆け引きが僕はがんと闘う上では大事かなと思います。 これは免疫学者の安保徹先生から教えられたんですけれども、頑張ると思うと交感神経が緊張する。そうすると、顆粒球というのが増える。細菌と闘う、感染症で風邪を引いて肺炎にならないためには、頑張ると思い込んでたほうがいい。結核になった時に、頑張ると思い込んでいる人のほうが生き抜けられるわけです。 しかし、がんと闘ってくれるのは、リンパ球。リンパ球は副交感神経が支配して、副交感神経というのは温泉に入ったりいい気持ちになったり、美味しい物を食べて、美味しいなと思ったりすると副交感神経が刺激される。そうすると、リンパ球が増えて免疫力があがる。だから、頑張るって思い過ぎないほうがいい。肩の力を除いていったほうが、どうも病気とは闘いやすい形になるんじゃないか。 実際に、僕は『あきらめない』という本の中にも書きました。膵臓の悪性腫瘍で肝臓に転移があるのにもかかわらず、10年間生きた中村哲也さん。この方は実にニコニコしながら、転移があるのにいろんなところへ旅をして、人のために随分一生懸命いろんな活動をしていました。 「自分の満足の軸が動いた」って言っていました。働きバチだった彼が、道端の野の花に目をやったりしながら「ああ、小さい花だけど、きちっと咲いているんだな」って思うようになった。仕事人間の時には、そんな野に咲く花なんて気に留めることはなかった。自分の考え方がちょっと変わることによって、自分の生き方が変わってきた。転移があるのに、10年間も生きたということが起きました。 第2条は「『がんばれない』とき、自分をダメ人間と思わない」。自分を肯定的にとられることが病気に負けない結構大切なコツかなと思いました。 第3条は「つながりのなかでがんと闘う」。人と人のつながり、人と自然のつながり、体と心のつながり。結局、体にがんという病気ができても、心と体はつながっているとすれば、心にいい刺激を与えることによって、がんと闘う新しい知恵が出てくるんじゃないか。それから、人と人のいいつながり。例えば、患者会がある、家族がいる、いい人たちがいることによって、生きる力というのがわいてくることがある。 それから、永田勝太郎先生という心療内科の先生と僕は対談をしました。その先生から、大きながんや転移したがんが自然退縮して消えたという人の例を見ていると「実存的転換」が起こっているのではないかと思われる、と教えてもらいました。 それはどういうことかといったら、景色を見てすごく感動したとか、或いは、だれかにいいことをしてもらって「ああ、生きていてよかったな」って思った。そういう感動した心が何かの病気と闘う新しい力になっているということを教えられました。 第4条は「希望を持ち続ける」。僕の『あきらめない』という本の中に出てくる42歳のスキルス胃がんで余命3カ月という方が1年8カ月生きました。それは自分の娘さんの卒業式まで生きたい、という願いがあったからです。2人の娘さん、年子だったんですけども、1年8カ月生きて、2人のお子さんの卒業式を見ました。母親が子どものために生きたいという思いが、多分、彼女の体の中にあるナチュラルキラー細胞とかに何か新しい働きかけをしたんだろうと思うんですね。 第5条は「笑う」。笹森恵子さんという73歳の方。広島で被曝し、その後、2回がんになって乗り越えている方と、僕は去年の9月、チェルノブイリへ行きました。 その笹森恵子さんはアメリカに渡り、ノーマン・カズンズという『笑いと治癒力』という本を書いて世界的なベストセラーを書いた方の養女になっていくんですね。 ノーマン・カズンズは膠原病になったのですが、笑うということで、ステロイドの薬やなんかを使わずに治した人です。その人の養女になった。被曝をしているからがんになりやすい。だけども「笑いなさい」って新しいお父さん、ノーマン・カズンズから言われ続けた。笹森恵子さんと僕は2週間ほど一緒にベラルーシ共和国の旅をしましたけども、本当に彼女はよく笑うんですね。笑うっていうことがこの人の命を支えてきたんだなとういことを感じました。 第6条は「逃げない。がんと向き合うこと」。お配りした資料に出てくる乳がんの患者さんが末期を迎えたのに奇跡的に改善をしていますよね。やっぱり彼女は逃げなかったことが大きかったと思います。第7条は「ささやかな日々の営みをていねいに行う」。 こういうふうに、僕なりに、がんになってない人ががんにならないための工夫や、がんに今なっているけど、今度、再発しないための工夫、或いは、既にがんが再発したけど、がんに負けないための工夫というのを1冊の本にしてみました。 僕の話はいったん終わりにして、樹木さんがスタンバイできたそうなので、今度は樹木さんをお呼びしたいと思います。
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