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マスター:神子月弓
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:5人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2016/10/31


みんなの思い出

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オープニング




 世間に、ハロウィンの季節がやってこようとしている。
 町中にオレンジと黒の装飾が施され、「トリック・オア・トリート」の飾り文字が踊る。

 しかし、撃退士の皆にとって、ハロウィンの悪戯は、とっても気を遣わなければならないものである。
 一般人相手、特に子供相手だと、大怪我をさせかねないからである。
 従って、実質的には「トリート&トリート」(間違いなくお菓子を貰えるだけの行事)と化していた。

 これに対して、一部の撃退士から不満の声があがっているのに、マリカせんせー(jz0034)は気が付いた。
 特に、初等部低学年の撃退士ほど、やんちゃに遊びたい年頃だ。
 イタズラが出来ないハロウィンなんてつまらない、という意見が出るのも仕方がないところである。

 そこで。

 学園敷地の隅にあるちょっとした洞穴(以下、ダンジョンと呼ばれる)を使って、撃退士同士の熱いハロウィンが出来ないかと、せんせーは考えた。

「撃退士さんVS撃退士さんなら、多少本気を出して悪戯しても、問題ないと思うのですー。それに、悪戯されたくなかったら、食べ物を差し出せばいいと思うのですー」

 そう、「トリック・オア・トリート」ならぬ「ファイト・オア・フード(FOF)」がこうしてスタートしたのであった。





 洞穴、いやいや「ダンジョン」の中は、割合と広く、うねうねとした一本道になっている。
 なんの変哲もない一本道に、レトロっぽいランプを灯すことで、雰囲気を否応なく盛り上がらせている。

 今回は、8人を4人ずつ2組にわけ、探索班と防衛班とする。
 防衛班は「ダンジョン」で待ち構える役割。
 探索班は「ダンジョン」を制覇する役割だ。

 チーム分けについては事前によく話し合っていただきたい。上手く4人ずつに分かれられなかった場合、せんせーがくじで解決することになる。

 まず、防衛班が「ダンジョン」に潜り、所定の位置につく。
 「ダンジョン」の道のりを大体4等分した位置に1人ずつ立っていることになる。
 防衛班は、探索班と出会った時に、脅かしてもいいし、かっこいいセリフを吐いて挑発してもいい。
 勿論、特に何もしないでいても構わない。

 準備が整ったら、探索班が並んで「ダンジョン」に潜る。

 ファイト・オア・フードは1対1の対決だ。
 防衛班1名と遭遇したら、探索班から1名が進み出て、試合に挑む。

 じゃんけんで勝負し、「ファイト」するか、「フード」と叫んでお菓子を差し出して戦闘(?)を回避するか、探索班も防衛班も選べる。
 「フード」と差し出されたお菓子は、拒むことは出来ず、「ファイト」を続けることも出来ない。
(嫌いなものだったら食べなくてもいい。お菓子を差し出された時点で「フード」は成立する)

 一度ファイト・オア・フードに出たものは、それぞれ班を抜け、どの陣営でもなくなり、「賑やかし要員」として、列の最後尾を歩いてハロウィン気分を盛り上げる役に徹する。

 これが、マリカせんせーの考えた、「アウル解禁版トリック・オア・トリート」であった!

 尚、多少のアウル使用では崩れることのない、丈夫な洞穴なので、安心していただきたい。
 実際に実技訓練の演習場としても使われている「ダンジョン」である。


プレイング

歴戦勇士・龍崎海(ja0565)
大学部7年9組 男 
目的
依頼を楽しむこと

動機
折角のハロィンなので何かのハロウィンイベントに参加したかったから

行動
防衛班
パサランの着ぐるみがあるので、それを着ていく
他の防衛班と連絡を取り合えるようにする
折角、ダンジョンということなのでBGMとかを流す
曲は国民的RPGの竜の探索から
連絡から状況にあった曲を流す

順番が来たら「野生のパサランが現れた」と言って登場
じゃんけんはグー、次はパーを出す
ただ、勝ってしまいそうになったら星の輝きを使用し、即座に自分が負ける手に変える
「パサランフラーッシュ」
ハリセンはあえて受ける
「というか、手が短くて頭まで届かん」
その後に、
「なんと パサランが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!」
と言って探索班に加わり、
「コンゴトモヨロシク」
と言ってついていくことにする

勝ってしまった場合は、
パサランらしく、「オレサマ オマエ マルカジリ」といって飲むこむふりをする
他との対戦時に、探索班に「マケタラ オマエモ マルカジリ」という

お菓子はたい焼き
勝負後に分け合い食べる

死のソースマイスター・佐藤 としお(ja2489)
大学部2年7組 男 

「レッツゴー!」
今回の目的はあくまで皆と仲良く楽しむこと!

衣装
要りません、着ません、真っ裸です。
カメラのアングルはウエストアップオンリーでお願いします。(

ジャンケン
漢はグーのみ。

リアクション
勝ち 大きくばんざーい!
負け 肩を落としてしょぼーん

ガヤ
ノリノリで皆を応援
勝手も負けてもナイスファイト!

使用スキル
クイック 目にも止まらぬ速度ですぱーん!
デスペラ 兎に角手数ですぱーん!
パレード まぢ手数ですぱーん!
回避射撃 相手のハリセンすぱーん!



きのこ憑き・橘 樹(jb3833)
高等部2年4組 男 
「ふっ…わし渾身のきのこぐるみを披露するときが来たようだの!!(かっ」

●行動
防衛班
きのこの着ぐるみ着用
「どう見ても動きづらいであるが、気にしたら負けだの!!」
明鏡止水使用
そっと道端にたたずみ身も心もきのこになりきる(でかい)(潜みきれてない)

>じゃんけん
一回目:グー 二回目:パー

勝っても負けても勝負する
「きのこに戦闘回避という選択肢はないんだの!」

勝った場合:
ハリセンを一気に振り抜く
「覚悟なんだのおおお」
だがしかし遠心力に耐えきれず、着ぐるみごと転がっていくかもしれない

負けた場合:
トレイでさっと防衛
「なんてことだの、手が届かないんだの!?」
着ぐるみのせいでトレイを上手く使えず、転がっていくかもしれない

その他:
きのこ図鑑(不思議植物図鑑)を装備し、きのこをあちこちに飛ばす
「必殺きのこパレードなんだの!」
ついでに鳳凰(名前はえのき)を召喚し、やたら神々しいきのこを演出
「くくく…不死鳥の加護を受けしきのこの力を見るがよいの!」
上記エフェクトや賑やかしに使える範囲で使用

終わったら:
マリカ先生やみんなとお菓子をたべる
「遊んだあとのお菓子は格別だの!」

狼闘王・遠石 一千風(jb3845)
高等部3年2組 女 
目的:
ハロウィンイベントとして思い切り楽しむ。
心情:
たまにはゲームで息抜きも良いわね。でも手は抜かないわ。
準備:
仮装は中世ファンタジー風の女騎士。
数日間かけて、得物である槍と目元まで覆う兜と金属鎧(のハリボテ)を作成する。特殊メイクも合わせてマリカ先生に協力をお願いしたい。
探索班として危険なダンジョンへ財宝探しに来た、という設定。
実は死者で、財宝の力で生き返るのが目的。
探索:
「行くぞ、…と、待て、皆早い」
視野は狭い、動きづらいけれど、探索班を率いようと必死で進む。
ファイト:
「洞窟の守護者が相手なら、本気を出そう」
ファイト前に全身鎧の留め金を外して、極小ビキニに骸骨の特殊メイク(ボディペイント)のセクシーでホラーな姿を露わにし驚かせたい。
じゃんけんはチョキ→グー。
戦闘は女性らしからぬ力押し。
縮地で回り込み、疾風突きで勢い良く相手の腕を弾く。または壁を砕いて隠みのにする。その隙をついて荒死による連続攻撃。
勝利「私の槍の前に敵はいない」槍掲げ
敗北「死後も鍛えた槍さばきも通じないとは…」

「もうこれ以上は、ほら、骸骨だし」
フードされた場合、甘いもの苦手なため一口もらって残りは相手に食べてもらう。

「早く、倒してしまえ」
ファイト後は脱いだ鎧は戻らず裸同然なのが恥ずかしくなってきて、身を小さくしつつ早く進もうとする。


紡ぎゆく奏の絆 ・水無瀬 文歌(jb7507)
高等部3年2組 女 
心情】
「ダンジョンといえばお宝!お宝といえば,海賊だねっ

目的】
「ファイト・オア・フード!」でハロウィンを楽しむよ

行動】
仮装はパイレーツ衣装

お宝をゲットするために,もちろん探索班!
一応「フード」用にバケツプリンを持っていくね

じゃんけんは1回目はパー,2回目はグー
「お宝のために,がんばりますよ〜

>じゃんけんで勝った場合
ハリセンを相手に当てるには何より早さが大事ですね
それではINIを上げるマホウ☆ノコトバを使って神速のツッコミハリセンです!
「♪マホウ☆ノコトバを唱えよう♪

>じゃんけんで負けた場合
相手の派手なエフェクト…しかし残念ですがその攻撃は打ち消しですっ
シールドバッシュでスキル効果を打ち消しですよ
「これが海賊の奥の手ですよっ

>賑やかし要員として
得意の歌とダンスで盛り上げます!
「今日はアゲアゲでいくよ!レッツ・ダンシング・ハロウィン〜♪

終了後
「せっかく「フード」用の食べものがあまっているので,みんなで食べましょう!
(食べたそうにしているマリカ先生を見て)「先生もイベントは終わったので、あまった「フード」用の食べものを食べてもいいですからね^^;



リプレイ本文




 洞穴、いや「ダンジョン」は、うねうねとした広い一本道が、入口から出口まで繋がっている。
 その壁面に、レトロなランプを飾りながら、マリカせんせー(jz0034)は雰囲気を盛り上げていた。


「折角、ダンジョンということなので、BGMを流すのはどうでしょうか。曲は国民的RPG「竜の探索」から、状況にあった曲を幾つか選曲してきました」

 龍崎海(ja0565)がせんせーに、音楽プレイヤーとスピーカーを渡す。

「防衛班で連絡を取り合って、劣勢の時はこの曲、優勢の時はこの曲に変えるのも、盛り上がっていいと思います」

「あらあら、有難うございますですー。確かにBGMがあると雰囲気が出るのですー。終わったら返しにきますね〜」

 せんせーは海から有難くBGM一式を受け取った。


「せんせー、私からも提案があります」

 水無瀬 文歌(jb7507)が、出口付近を見て回っていた。

「出口のところに、何かお宝を隠しておきませんか? 折角ダンジョンですし、雰囲気アゲアゲですよ!」

「それもいい考えなのですー。何か考えておきますですー」

 せんせーは乗り気だ。


 こうして「ダンジョン」の準備は、順調に整っていった。





 一方、仮装のために時間をかけて準備をしているものもいた。

 ハロウィン当日まで毎日、放課後に美術室にやってきて、丹念に型に和紙を水ノリで重ね、ハリボテをこしらえているのは、遠石 一千風(jb3845)だ。
 物干しざおを使った本格的な槍、西洋風ファンタジーに出てきそうな、フルヘルムと全身甲冑。仕上げにアルミホイルを丁寧に貼り付けていって、光沢が出るように艶出しを塗って、ぴかぴかに磨き上げる。

「せんせーあのさ、相談なんだけど‥‥」

 更に一千風は、二段構えの仮装を考えていた。そのために、マリカせんせーの協力を仰ぐ。

 こうして、立派な女騎士が出来上がった。





 当日放課後。
 参加者一行は、「ダンジョン」入り口前に、時間をずらして集まった。


 まず、防衛班が集う。

 パサランの着ぐるみを着た海。
 明らかに手が頭の上まであがらない。

 きのこの着ぐるみ着用の、橘 樹(jb3833)。
 同様、明らかに(以下略
「どう見ても動きづらいであるが、なぁに、気にしたら負けだの!!」

「ええとその、わたくし助っ人と伺ったのですが‥‥」
 人数調整のために呼ばれたアリス・シキ(jz0058)こと、魔王マントを被った、ばにーすーつ。
 首から大きなカギのペンダントを提げているが、恰好が恥ずかしいのか、もじもじしている。
 ちなみに、アルビノヒリュウの「えるくん」のために、お揃いのうさぎフードも用意されている。

 3人は、ダンジョンの通路を概ね3等分にしたところに、それぞれ配置されることになった。
 防衛班が入っていくと同時に、ダンジョン風のBGMが流れ出す。

「思った通り、なかなか雰囲気がでているね」
 海は着ぐるみの中で、ほくそ笑んだ。


 続いて、探索班が入口に集まってきた。

「あわあわ、ちょっ‥‥!?」

 マリカせんせーが慌てるのも無理はない。
 この寒空に、佐藤 としお(ja2489)が、一糸まとわぬ姿、つまりスッパでやってきたのだ。
 左側頭部と上半身にたくさん刻まれたタトゥーが、一瞬、肌色の服の模様に見えた。

「あ、カメラアングルは、ウエストアップオンリーでお願いしま〜す」
「そそそ、そういう問題じゃないのですー! とにかく、スッパはくらりん的にも困るのですー! せんせーも怒られたら困っちゃうので、せめてこれをつけてくださいですー!」

 そう言って、「いちじくの葉っぱ紐パン」を渡すせんせー。
 芸術的ではありますが、余計に、目のやりどころに困ります。
 ていうか、どうしてそんなの、持っていたんですか、せんせー?


 続いてやってきたのは、パイレーツ姿の文歌だ。
 黒地に金の模様入り帽子とブーツ、ピンクのマフラー、へそ出しの青い衣装とふりふりスカートが如何にもアイドルらしく、人妻とは思えない可愛らしさをアピールしている。


「うぐぐ‥‥紙って意外と重いんだな‥‥」
 ハリボテ全身甲冑の一千風が、物干しざお、いや、本物そっくりの槍をまるで杖のようについて、周囲を探りながらやってきた。
 フルヘルムの視界は狭く、非常に見通しが悪い。
 ‥‥そこまで忠実に再現しなくてもいいのに。

「私は、探索班として、危険なダンジョンへ財宝を探しに来た、という設定だ‥‥うぐぐ」

「そう、ダンジョンといえばお宝! お宝といえば、海賊だよねっ。だから私は海賊コスだよー♪」
「え、まじ、お宝があるの?」

 としおは、文歌の発言で、初めてダンジョンの奥にお宝が隠されていることを知った。
 一千風も、自分の仮装の設定のつもりだったのだが、本当にお宝があると聞いて、俄然やる気が出てきた。

「ふふん、お宝、頑張ってゲットしてくださいですー。それでは、皆さん、気を付けて行ってきてくださいね〜♪ ハッピーハロウィーンです〜!」

 これ、探索班の、ファイトの順番ですー。公正にくじで決めたのですー。
 せんせーはそう言って、醤油をしみ込ませて古紙に見せかけた、メモを渡す。

 アウル攻防に巻き込まれないため、一般人のせんせーとは入口でお別れだ。
 せんせーは外側からぐるりと回り道をして、出口で待っているという。

 探索班は1列に並んで、ダンジョンの入口へと消えていった。





 第1回戦は、樹VSとしおのFOFだった。

「レッツゴー!」
 楽しそうに気合を入れるとしお。

「ふっ‥‥わし渾身のきのこぐるみを披露するときが来たようだの!!」
 かっと目を見開き、<明鏡止水>で【潜行】と【覚醒】を得る樹。

 そっと道端にたたずみ、着ぐるみで、身も心もでかいきのこになりきっている。
 それにしても、でかい。
 人間、いや悪魔だが、が、すっぽり入っている大きさなのだ。でかすぎる。
 【潜行】してはいるのだが、どことなく潜みきれていない。

「おー、おっきなきのこだなあ‥‥いいダシが取れそうな‥‥」
 ラーメン王・としおは、巨大キノコを見て何か違うことを考え始めていた。

「勝負であるのぉぉぉ!」
「うわあぁぁぁ!」

 巨大きのこが突然喋ったら、誰だって驚きます。

「ひあああああ! 何じゃあその、おぬしの破廉恥な恰好はの〜!」

 出会った先輩が、全裸にいちじくの葉っぱイッチョなら、女子でなくても驚きます。

 しかし、きのこもとしおもすぐに気を取り直し、ハリセンとシルバートレイを持ち、じゃんけんの構えをとるところ、歴戦の撃退士と言えるかもしれない。

「最初はグーだの。しかるのち、じゃーんけーん‥‥!」
「漢は黙って〜‥‥!!」

 ぽん。

 グーとグーで、あいこだった。

「「あーいこーで‥‥!」」

 ひたすらグーを出すとしお。
 2回目はパーと決めていた樹。

「あーあ、きのこに負けちゃったかあ‥‥」
 肩を落としてしょぼーんとする、としお。
 負けを認め、支給されたシルバートレイを掲げる。

「きのこに戦闘回避という選択肢はないんだの! ファイトだの!」
「オッケー、こちらもフードは無しだ。勝負!!」
 
 としおの挑発に、ハリセンを一気に振り抜く樹。
「覚悟なんだのおおお!!!」

 そのハリセン目がけて、シルバートレイを投げつけるとしお。
 <回避射撃>で少しでも狙いを逸らす目的だ。

「ほ、ほむ〜!?」
 見事に狙いを逸らされ、更に遠心力にも耐えきれず、着ぐるみごと転がっていくきのこ。

「た、立ち上がれぬ〜。誰か、助けて欲しいのだの‥‥!」


 勝負を終えたとしおと樹は、賑やかし要員となった。列の最後尾に並び直す。

 「きのこ図鑑」(不思議植物図鑑の×巻)を装備し、きのこをあちこちに飛ばす樹。
「必殺きのこパレードなんだの!」

 更に、えのき(鳳凰)を召喚し、やたら神々しいきのこを演出してみせる。
「くくく‥‥不死鳥の加護を受けし、きのこの力を見るがよいの!」
 薄暗いダンジョンの中、えのきが神々しく輝いて見えた。

 一方、としおは艶めかしく腰をくねくね振りながら、ノリノリで皆を応援していた。
「勝っても負けてもナイスファイト! こういうのは楽しんだもん勝ちだよね!」





 第2回戦は、海VS文歌のFOFだった。

(きのこが倒されただって‥‥! これは、ここで探索班を食い止めなければ‥‥食い止めなければ‥‥何も起こらないけど、一応‥‥)
 BGMを緊迫感あふれるものに取り換え、海はパサランの着ぐるみ内で唇を噛んだ。

 探索班が足音を響かせてやってくる。

「とうっ!」
 海はパサランのふりをして、一行の前に進み出た。

「む、今度はパサランさんだねっ! 着ぐるみ仮装が流行しているのかな?」
 海賊姿の文歌が進み出る。サーベルを抜くような姿勢でハリセンを構え、じゃんけんに備える。

『野生のパサランが現れた』
 きゅっきゅっとホワイトボードに書きしるし、海は文歌に見せた。

「お宝のために、がんばりますよ〜。パサランさんには悪いけど、負けてもらうからね♪」

「最初は、グー!」
「「じゃーんけーん‥‥!」」

 ぽん。

 パサランが出したのはグー。
 文歌が出したのはパーだった。


「神速のツッコミハリセンです! ♪マホウ☆ノコトバを唱えよう‥‥きっと大丈夫、一言言えたらまた言えるよ、貴方に伝えたい想いを胸に♪♪」
 <マホウ☆ノコトバ>を歌い、ドップラー音を響かせてハリセンを振り下ろす文歌。

 シルバートレイを持ったまま、おろおろと、正面をガードしているパサラン。 
(というか、手が短くて頭まで届かん!)

 すぱーん!!!!

 気持ちの良い音が、ダンジョン中に響き渡った。ころころと転げるパサラン。

 その後。
 パサランは、ごろごろ転がりながら奮戦したのち、何とか自力で起き上がる。

『なんと パサランが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!』
 ホワイトボードに書かれた一文を見せる海。

 文歌さん、なかまにしますか?

 >YES
  NO

『コンゴトモヨロシク』

 こうして、賑やかし要員に混ざることになった2人。
 文歌は、得意の歌とダンスで、最終ファイトを盛り上げにかかった!
「今日はアゲアゲでいくよ〜! レッツ・ダンシング・ハロウィン〜♪」





 第3回戦=最終戦は、一千風VSアリスのFOFだった。

「行くぞ、‥‥と、待て、皆早い」
 視界の悪さ、足元の不安定さ、仮装の重さで、騎士らしく皆を率いようと先頭集団に行こうとするが、なかなか追いつけない一千風。

 3人目の防衛班が待ち受けているところまでたどり着く頃には、へとへとになっていた。
(我ながら、負荷の高い仮装を作ったものよ‥‥)
 ふ、とひとり、胸の中で自嘲してみる。

 魔王っぽいマントをかぶり、カギを首から提げ、ばにーすーつで恥ずかしそうに迎えたアリスの姿を見て、女騎士一千風は心を決める。

「ダンジョンの守護者が相手なら、本気を出そう」
「わたくし、守護者でしたの??」

 おろおろするアリスの前で、全身鎧の留め金を外し、マイクロビキニに骸骨の特殊メイク(ボディペイント)という、セクシーでホラーな姿を露わにする一千風。

「きゃー! ガイコツさんですの!!」
 驚きと恐怖で、マジ泣きしそうなアリス。
 ここに立って待っているのも、BGMのおどろおどろしさと相まって、心細かったのである。

「では、ファイトするとしようか」
「ふ‥‥フードですの!!」

 うさぎ帽子を被らされた白いヒリュウが飛んできて、一千風にたい焼きを差し出す。
「ぐっ」

 ルール上、フードを差し出されたらファイトは出来ない。
 しかし、一千風は甘いものが苦手である。

 差し出されたお菓子を食べなければいけないというルールはない。が、騎士として、一千風は、涙目のアリスを見て、冷たい態度に出ることは出来なかった。

「じゃ、じゃあ、尻尾の端っこを一口だけ。残りはどうぞ、もうこれ以上は‥‥ほら、私骸骨だし」

 あんこの詰まっていない、甘くない皮の部分だけを食べて、一千風はアリスにたい焼きを返した。





「で、では、ファイナルイベントに、まいりますわね」

 アリスはもじもじとマントで体を隠しながら、皆に問いを投げかけた。

「朝は4本、昼は2本、夜は3本、一体何のことでしょう?」
「「「人間」」」

 あまりにも有名なクイズ過ぎた。アリスは皆に即答されたことに驚き、そして頷いた。
 ドライアイスが焚かれ、スモークの中から宝箱が出てくる。

 アリスがペンダントになっていたカギを差し込むと、箱がぱかっと大きく開いた。

「皆さんに、マリカせんせーから、財宝(参加賞)だそうですの」
 箱の中にまでドライアイスが焚かれていて、財宝が何かはよくわからない。

「抜け駆けするな、財宝は私も」
 一千風は先陣を切って覗き込む。
 勿論、皆、心を躍らせて、宝箱の中を覗き込んでいた。

 ――そこに眠っていたものは‥‥!!


  \金銀財宝大判小判/


 ‥‥ではなく、カレーパン、コロッケパン、焼きそばパンなどの総菜パンであった。

 あんまん、たい焼き、ドーナツ、バケツプリンという、甘味の苦手な学生には地獄の苦しみ。
 そんな学生を救おうとする、マリカせんせーの粋な計らいだったのである!!!

「私、実は甘いのダメなんだ、これで生き返れる!」

 自らのマイクロビキニを隠すように身を縮め、しかし喜んでいる一千風が天を仰いだ。

「神よ‥‥私は復活せり!」

 実は死者設定だった一千風は、コロッケパンを手に取り、滂沱と涙を流した。





「FOF、楽しめましたでしょうか〜?」

 マリカせんせーが出口から入ってくる。

 既に宝箱の中は空っぽ、支給された甘味類も底をついていた。
 バケツプリンは、文歌が1人分ずつ、宝箱に収まっていた器に盛り直し、アリスが給仕をして(甘いものが大丈夫な)学生たちに配っていた。

「どうですか?」
 海は、たい焼きを二つに折り、せんせーに差し出した。

「遊んだあとのお菓子は格別だの! 疲れが取れるの!」
 樹もにこにこして、もちもちドーナツ(黒蜜きな粉味)を食べている。

「せんせーも、イベントは終わったので、余った「フード」を食べてもいいですからね。折角ですし、皆で分け合いましょう♪」
 文歌が、せんせーの分のプリンを差し出した。

「財宝っていうからには「死のソース詰め合わせ」等かと思いましたけど、こうやって親交を深められることが、一番の財宝ですね!」
 ラーメン王・としおが爽やかな笑顔を見せる。

「取り合えずあなたはマトモな服を着ろ」
「遠石さんだって、凄いマイクロビキニじゃない。変わらない変わらない♪」

 葉っぱ全裸とビキニでは、比較になりません。

「そ、その前にジロジロ見るな! これはあくまでも仮装で‥‥」
 真っ赤になる一千風。
「そうそう。ボディペイント、大変でしたよね〜」
 手伝ったせんせーも頷く。


 こうして、学生たちのハロウィンの思い出がまたひとつ、増えたのであった。
 ハッピー・ハロウィーン!


依頼結果/参加キャラクター

依頼成功度:大成功面白かった!:6人
MVP一覧
 歴戦勇士・龍崎海(ja0565)
 紡ぎゆく奏の絆 ・水無瀬 文歌(jb7507)
重体一覧
 −

歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部7年9組 男 アストラルヴァンガード
死のソースマイスター・
佐藤 としお(ja2489)

大学部2年7組 男 インフィルトレイター
きのこ憑き・
橘 樹(jb3833)

高等部2年4組 男 陰陽師
狼闘王・
遠石 一千風(jb3845)

高等部3年2組 女 阿修羅
紡ぎゆく奏の絆 ・
水無瀬 文歌(jb7507)

高等部3年2組 女 陰陽師


依頼相談掲示板

依頼相談テーブル
龍崎海(ja0565)|大学部7年9組|男|アス
最終発言日時:2016年10月25日 22:28
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2016年10月25日 22:26


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