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マスター:シチミ大使
シナリオ形態:シリーズ
難易度:難しい
参加人数:6人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2016/10/31


みんなの思い出

1
1

オープニング

 主に告げることはあまりにも膨大であり、サーペントは報告に一昼夜を要した。
 だが、クリムゾンレイは静かに聞き届け、そして部下である彼を労う。
「よくやった。して、進化は見られたようだな。わたしの放ったディアボロが撃退士共との戦いで進化を果たし、その結果として血で贖うか」
 失った右腕は止血処理されているが、利き腕を失ったのは大きい。
「主、クリムゾンレイ。どうか我に今一度チャンスを……! あの忌々しい撃退士を、今度こそ血祭りにあげて見せます!」
 その言葉にクリムゾンレイは小さな過ちを諭すように、チッチッと指を振った。
「違うな。間違っているぞ、サーペント。わたしはお前の過ちなど、最初から咎めるつもりなどないのだ。わたしが求めるのは進化の果て、その先に何があるのか、それのみ。お前はむしろよくやってくれている。前回の戦闘で遣わしたディアボロもうまく進化した。つまり、戦いでのみ研ぎ澄まされるものがある、とわたしは考えている。進化とは! 戦いの極限の神経が遣わせた一種の天啓である、と」
「で、ですが主……。我に是正のチャンスは」
「焦るな、サーペント。お前が出るまでもない、ということだ」
「――そのようだな」
 言葉尻を引き継いだのは岩石の巨体であった。
 サーペントはその天魔を知っている。だが、すぐにその名を口にしなかったのは巨躯の持つ武装とその威容のせいだ。
 赤い瞳がこちらを見下ろす。
「クリムゾンレイ。オレを雇ったのは賢明だ。で? 何をすればいい?」
「簡単なこと。撃退士の引き付けをやってくれ。わたしの生み出したディアボロ二体を使役させよう。首輪つきだが、使えるだろう。お前に与えるのはディアボロの進化モニターと撃退士の戦力をはかることだ。――ディアマン」
 名を呼ばれたディアマンは不遜そうに鼻を鳴らす。
「いいだろう。戦場は慣れている。少なくとも、頭の足りなさそうなトカゲ頭のヴァニタスよりかは使えるだろうさ」
 その場を後にするディアマンの背中を見送ってからサーペントは口にしていた。
「……恐れながら、主。あれは裏切りの天魔です。ここ最近、天魔の間を練り歩いている傭兵の悪魔、ディアマン。その悪名を知らぬわけではないでしょう」
「存じているさ。わたしはね、奴の処遇も含めてのことだと感じている」
 クリムゾンレイが玉座につく。その采配にサーペントは疑問を挟んだ。
「と、言いますと?」
「首輪つきのディアボロ二体を与えたが、その二体に仕掛けをしておいた。戦場を渡り歩き、雇い主を裏切ってきた天魔に少しばかり教えてやろうと思ってね。悪魔の真の恐ろしさというものを」
 そう口にして口角を吊り上げたクリムゾンレイにサーペントはただひれ伏すばかりであった。

『ご覧ください! 今、上空から映し出されているのは破壊の爪痕です!』
 一体の岩石の悪魔が両腕に金輪を装着し、鎖で繋がれたリザードマン型ディアボロを先行させている。
「まさかオレの役目がトカゲの散歩だとはな。だがこのディアボロ二体に前回、武器商人から授かった大型ハンマー。負ける気がしない、とはまさにこのこと」
 ディアマンの放ったリザードマン型が駆動し、群集へと襲いかかる。
 ディアマンは座してその様子を眺めていた。
 戦場が血に染まるのはいつの時代も同じだな、という達観さえ湛えて。

「……またしても、という感じですね」
 久遠ヶ原の事務係の女性が淡々と告げる。
「悪魔の傭兵ディアマン。それがリザードマン型ヴァニタスの言うクリムゾンレイ、なる天魔と組んだ、形になるのでしょうか。ディアマンの脅威判定は二度の戦闘で既に弾き出されています。以前よりも強くなっていると仮定し、充分に留意してください。ディアマンは派手に人を襲っていますが、二度の取り逃がしから鑑みてこれも恐らくはパフォーマンスでしょう。ディアマン含むディアボロ二体の殲滅とクリムゾンレイの情報引き出しも視野に入れています。この依頼を引き受けますか? 引き受ける場合はこちらにサインをお願いします」


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プレイング

歴戦の戦姫・雫(ja1894)
中等部1年1組 女 
【心情】
「匿名の情報から見て裏があるんでしょうが、乗るしか無いですね」

【行動】
リザードマン型をメインに闘気解放を使用して仲間と連携を取って攻撃を仕掛ける
氷の夜想曲を使用する時は3体纏めてか、リザードマン2体が攻撃範囲に入っている時のみとする
左右に大きくリザードマンを移動させる様に引き付けて金輪を絡ませて行動範囲を狭め、回避力を低下させる
金輪が張っている状態の時に武器を振り下ろして破壊、振り回されない様にする
リザードマンに止めを刺す時は、ディアマンがダルマモードになる寸前を狙って行う
「黒幕の思惑通りに動くのは業腹ですが、ディアマンを倒すチャンスなのは確かですね」

リザードマン殲滅後は、ディアマンを攻撃
兜割りを使用して動きを止めたら、アークを使用して足などを狙って逃走を阻む

ディアマンを倒す前に話を聞く時間が有る場合は、クリムゾンレイについて聞き出す
「貴方が連れて来たディアボロ、クリムゾンレイから提供されましたね?」
「雇い主について、調べない傭兵は居ない。奴が何を狙っているのか知っているのでは?」

口を割らない場合は、今回の匿名情報について話して揺さ振りを掛けて情報を引き出す
「・・・ダルマモードの強制解除、おかしいとは思いませんか?」
「匿名では合っても起点はクリムゾンレイのディアボロ、誰が情報を流したかは言わずとも判るのでは?」

※アドリブOK

崩れずの光翼・向坂 玲治(ja6214)
大学部3年4組 男 
散歩の代行業も始めたってか?
……何にせよ、散歩のマナーがなってないから、ペット共々纏めて躾けてやる

■行動
基本方針としては、リザードマンを優先しつつ、ディアマンも可能ならばこの場で始末する。
現地到着したら、一般人が退避できるように敵の襲撃を妨害し、
リザードマンとディアマンを分断するように位置取りし、各個撃破できるように調整。
ディアマンをその場に足止めしつつ、リザードマンを集中攻撃して撃破。
間髪入れずディアマン狙いに切換え、逃走される前に撃破する。

俺個人の行動としては、リザードマンへの対応を優先する。
敵を分断する様に体を間に割り込ませ、連携されない様に妨害しながら近接戦を挑む。
攻撃はフルメタルインパクト、回数が切れたら物理攻撃。
リザードマン撃破後はスターライトハーツに持ち替え、ディアマンに接近して魔法攻撃。
退路を塞ぐように包囲しつつ、スタンエッジも使って行動の妨害も試す。
また、攻撃する時は関節や目等の防御が薄そうなところを狙ってみる。
敵の攻撃はシールドで受け、生命力が少ない味方は庇護の翼でカバーリング。
自分の生命力が半分以下で、リジェネレーションを使用。

大切な思い出を紡ぐ・ジョン・ドゥ(jb9083)
大学部5年9組 男 
ディアマンの対処担当
聖炎の護り用に【蒼炎ノ凰】で召喚し高度限界で待機するようにさせる

懐では格闘か本でのゼロ距離射撃、ハンマーの頭が届いてしまいそうな距離では斧槍
そのどちらもの中間に立ったら二刀、鋏
と相手との距離に合わせ攻撃手段を変える
「そっちは深入りしたくないだろうが、こっちはオタクを倒すのが仕事だからよ、行くぜ
「本職の忍者ほどじゃないが。多少機動戦も出来ると思うんだよな
「自慢じゃないが、俺はそこそこと色々出来るぞ。退屈はさせないつもりだぜ?

裏をとっての奇襲的攻撃は
ディアマンの傭兵の勘を働かせてしまう可能性を感じるので控える
そういうのは同じディアマン担当に任せ
正面側面での注意惹きを
逆にこちらに対する相手の注意が殺がれたら
鳳凰の攻撃か鋏、本での魔法攻撃を行う

リザードマンでの竜巻を行おうとしたら亜空砲で邪魔を試みる

ダルマモードになったら流転隔絶を使用(但し情報収集したい味方がいたらそれは先にさせる
「硬さが自慢と聞いたが。空間攻撃ならどうだ?

リザードマンを倒して皆合流したらあとは狙撃主が狙い撃ち易い状況を作る事にシフトする
皆俺より強いヤツばかりだから何とかなるだろう

負けた方が、害虫だ・エカテリーナ・コドロワ(jc0366)
大学部4年9組 女 
「フン、完全武装したつもりだろうが隙だらけだな」

ディアマンについては彼女は今回が初戦であり、詳しい能力や目的などは知らない。
だが彼女の意思に容赦や慈悲の文字はない。
全力で蹂躙し尽くし、抹殺する。

敵の能力特性からリザードマン撃破→ディアマン撃破の順で攻略。
スキル「悪鬼険乱」で火力を上げつつ、先にリザードマンを叩き潰す。
リザードマンの心臓に集中攻撃し、二体とも完全に息の根を止めるまで攻め続ける。
ダルマ形態への変形能力を確実に封印する。
リザードマン撃破確認後本体を集中攻撃。
「アウル毒撃破」により「腐敗」を与え、徐々に防御力を削っていく。
その間に「アウル炸裂閃光」を叩き込み、一気に生命力を削る。
可能ならばハンマーの破壊も試みる。
リザードマン撃破後は機動力が上がる可能性があるので、武器の射程が許す範囲で距離をとる。
「お荷物を背負って戦っていたのでは満足に動けんだろう?だが手加減はせん。それが殺し合いというものだ!」
「弱点が知られては元も子もなかろう。貴様の負けだ、さっさと楽にしてやる」



童の一種・逢見仙也(jc1616)
高等部2年4組 男 
なんだろうなーあのハンマーだけは覚えがあるけどなー
まあどうでも良い事か

トカゲ狙い
剣で戦闘
前回と同じく剣戟、他者の攻撃の起点になるようにフェイントを行う
防御はニュートラライズで行う
特に傭兵の方の攻撃に使用

蜥蜴が振り回された際鎖であれば軌道へ仕掛けるようにスタンエッジ
相手が他へ注意をそらしていれば夜想曲で複数まとめて不意打ち狙い
その他スタンなら他へ大損害が起きそうなときに傭兵へ
夜想曲なら傭兵がかばったときに肉の壁などを無視するように等
状況へ合わせスキル使用

進化進歩は生物としては当たり前
成長が速いならこっちもそれに適応していけばいいんだからなあ?

完全に戦闘が終了したら回復、救援補助を行う
生埋め等には透過で場所を調べる、民間人へ残りの回復を重度の人を優先に使用、救急箱使用等

北風を身に纏い・不知火あけび(jc1857)
高等部2年1組 女 
「今後の依頼で役に立つはずだぜー」…か
ラル、雷電改を早速使わせてもらうよ

目的
蜥蜴とディアマンの撃破

準備
仲間と連携
作戦の齟齬修正

戦闘
ディアマン担当
「久しぶりだね。今までどこにいたの?」
傭兵と忍者のスタイルって似てるからね。ビジネスライクもわからなくはない
でも残念、ここにいるのは義理人情大好きな忍なんだよね
ここが貴方の最後の戦場だよと挑発

リザードマン(以下蜥蜴)二体の撃破まではディアマンの攻撃を全力で回避、凌ぐ役
NHでディアマンを注目させジョンさんが背後を取り易くする
攻撃回避が難しい場合は空蝉使用
味方の攻撃後間髪入れず羽断ちを繰り返す
ジョンさんが攻撃し易くしてくれてる時も遠慮なく羽断ち!
積極的に連携していくよー!

勿論蜥蜴二体にも注意を配る
ディアマンが統合役ならこっちにけしかけてくるだろうし、二体巻き込んで攻撃もしてきそう
敵三体の動きを阻害してくれている金輪は絶対外さないよう注意する
竜巻攻撃も回避を狙う
万が一バステを食らっても狼狽えず戦闘続行

蜥蜴二体撃破を確認したら刀変更
雷電改→雷切に
雷切も使うのは初めて。私にとって初めての魔攻刀だね
魔命特化の龍威しを連打
龍威しの回数0→雷死蹴にして追い打ち

生命力半分以下→回数0スキルを疾風にして回復&囮回避続行
NHが切れたら再度ディアマンに使用
此処で仕留めておきたいね。毎回敵側に味方されると面倒だし
蜥蜴も進化はさせないよ



リプレイ本文


「前回のトカゲ人間に今回の傭兵、ディアマンの行動。あまりに軽率だと、俺は思う」
 そう切り出した向坂 玲治(ja6214)は人気のないバスの中で揺られていた。
 同席する雫(ja1894)が首肯する。
「匿名情報の件もあります。何かしらの悪意を、感じずにはいられませんね。ディアマンも操り人形に過ぎない、という可能性も」
「だが、ここで歩みを止めてられない。トカゲの散歩のアルバイトなんて始めやがった三下傭兵を、ようやく追い詰められるチャンスが来たんだ。ここで俺らがやらない手はないだろ」
 雫はぎゅっと拳を握り締める。今まで学園の放った撃退士からことごとく逃げてきた傭兵の悪魔。
 軽々と雇い主を裏切り、情報を横流ししてきた存在がここに来て切られるとは。
 因果応報と人は言うが、天魔の世界でもそれは同じなのだろうか。
「匿名情報の流し手……何となく当てはついているみたいですね」
「考えるまでもないことだろうけれどな。当然の帰結って奴だろうさ。突きつけるのは、マナーのなっていない天魔をぶっ潰してからだ」
 この剣の切っ先が今まで翻弄してきた天魔に引導を渡す。
 ――届く、と感じた雫は語気を強めた。
「絶対に、ここで真意を聞き出します。そして、悪魔、ディアマンには今までの償いを」

 秋風に吹かれていると不意に身体の芯が冷たくなることがある。
 そのような感覚と同じようなものを、ジョン・ドゥ(jb9083)はエカテリーナ・コドロワ(jc0366)に感じていた。
 冷たい鉄の女、という感覚だ。
「心まで武装しているみたいだぜ?」
 声を投げると厳しい目線がこちらを射抜いた。
「ふざけている暇はない。今は、一刻も惜しいのだろう」
「合流するまでは何もできないさ。それにしたって、傭兵の悪魔、ねぇ」
「……何か思うところでも?」
「俺もビジネスで戦うってのは案外、理解できる。それがどこまでドライなのか、そういうのも。ただ、戦場で三度も会うって連中もいるとすれば、気の毒だな、って話だよ」
「気の毒、か。戦場を渡り歩いてくれば、自然と分かる摂理だ。一秒でも長く戦地にいたい人間と、一秒でも早くここを離れたい人間。存外に生き残るのは前者なんだよ」
「戦場で一秒でも生き残りたければ狂えって話か。命の賭け事の上に成り立つ、そういう場所で」
 戦いに酔うとはそういうことなのだろう。
 エカテリーナが銃を構え、その銃身を撫でた。
「私の辞書に慈悲の文字はない。ここで、滅殺する」

「今後の依頼で役に立つはずだぜー、か……。ラル、早速使わせてもらうよ」
「それ、ラファルの刀か」
 タクシーで隣の席に座った逢見仙也(jc1616)が刀を覗き込む。不知火あけび(jc1857)は頷いて鞘を翳した。
 自分にはあまり似つかわしくないような近代的な見た目をしている。無骨さが前に立ち、普段の軍刀では見られない「浮いた」感覚を生じさせていた。
「うん。ラルったら、こういうのはすぐに用意するんだから。仙也君。私は正面突破でディアマンを狙う。ジョンさんもいるみたいだし、この戦法がこの子には一番合っていそう」
「俺には因縁とか、そういうのはないから。決めたい人が決めればいいと思っている」
 その言葉にあけびは笑みを漏らす。
「相変わらず、だね」
「戦いに私情は持ち込まないだろう。前の個体との進化の情報共有確認。それくらいができれば御の字だと思っている」
 進化するディアボロをどう相手取るかで仙也の脳内はいっぱいであった。
 あけびは軍刀を腰に提げ、手にした近代剣の刃紋を見やる。
 忍たるもの、刀身に浮かぶ刃紋を見れば、どのように扱われてきたのかが手に取るように分かる。
「……そう。そうやって戦ってきたんだね。だったら、私も応えるよ。何よりも、二度目の相手に、忍として、打ち漏らしはあってはいけないからね」

 リザードマン型に半ば牽引される形で、ディアマンは殺戮を眺めていた。
 二体のディアボロ、進化すると聞いていたが一向にその気配はない。血潮を浴びて獣のように酔うだけだ。
 ある種、自分にも似通っている。そう感じただけであった。
「獣など、血の臭気に酔うことしかできまい。それ以上でも、以下でもないのだ」
「――分かってるじゃねぇか」
 不意に割って入った声音にディアマンが警戒神経を走らせる前に、降り立った影がリザードマン型の片側を斬りつけた。
 雫が大剣を掲げ、その双眸に決意の色を浮かべる。
「ディアマン、ここで、食い止める」
 仙也が降り立ち、逃げ遅れた人々をまず誘導した。
 ディアマンの目的は元より撃退士の炙り出し。それによるディアボロの進化促進である。
「こちらとしても、願ってもない。オレを止められるか? 撃退士!」
「初っ端から飛ばしてもらうぜ! 時間はかけられないみたいだからよ!」
 玲治が片方のリザードマンを引きつけ、手にした白銀の槍を突き上げた。
 拘束具に繋がれたリザードマンがたたらを踏み、攻撃姿勢に移らせる前に横っ面を引っ叩く。
 リザードマンが腹腔に宿ったダメージに呻いた。
 間髪入れず、槍を頭蓋に突き刺そうとして、相手の石槍がその軌道と全く同じ地点を貫いたのを目にする。
 白銀と紅蓮。
 その二つが相殺し、磁石のように引き剥がされる。
 先ほどまで獣としか思えなかったリザードマンの眼光には、知性が見られた。
 戦いになってようやく芽生えたと思われる野性以外の性質。
「これが、進化って奴か……! 案外に速いじゃねぇかよ」
 しかしこちらの戦術は変わらない。
 雫と玲治がディアマンからリザードマンを引き剥がすために連携する。
 金輪がじりじりと左右に引かれ、中心軸のディアマンが鼻を鳴らした。
「オレからトカゲを剥がして正面突破、か。相変わらず、撃退士という奴は型にはまった戦い方をする」
「それが、俺らの十八番なもんでね」
 中央突破のために駆け抜けてきたジョンへとディアマンが担いだハンマーに手を伸ばした。
「距離、手数、速さ、連携、どれをとってもそれなりだと言わせてもらおう。だが、それなりの相手では超えられないものが存在する」
「誰が……」
「――それなり、だって?」
 ジョンの背後から跳躍した影にディアマンが瞠目する。
 瞬時に躍り出たあけびが一刀を掲げる。
「式神、蒼炎ノ凰。使いな、あけび」
 空中展開していた式神を手がかりにして、あけびがディアマンの懐へと一気に飛び込んだ。
「ラル、私に力をちょうだい。引き裂け! 雷電改!」
 抜刀された直刀が電磁を帯び、ディアマンの頭蓋を割らんと迫った。
 それをさばいたのは岩石の如きディアマンの拳である。
 見た目以上の硬度に放たれた電磁剣の一閃がスパークする。
「見覚えのある撃退士だ」
「覚えてもらって光栄だけれど……何度も逃げ隠れできると思わないで。ここがあなたの、最後の戦場だよ!」
 蹴り返してあけびが離脱した空間をディアマンの拳が掻っ切る。
 瞬間に、懐に入っていたのはジョンであった。
「本職の忍者ほどじゃないが、機動戦も多少できると思うんだよな。自慢じゃないが、俺は色々とできるぜ? 退屈はさせない」
「そうかな!」
 ハンマーを掴んだディアマンが一気に打ち下ろす。
 砂塵が舞い上がり、空間を満たす中、銀色の閃光が咲いた。
 ハルバードを担いだジョンが口笛を吹いて一撃をいなす。
「オタクは深入りしたくないみたいだけれど、こっちはそうもいかないんでね。ねちっこくいかせてもらうぜ」
 瞬間的に懐に入ったジョンには武器の頓着がない。ハルバードを投擲し相手の一手を奪った後に巨大なハサミへと持ち替える。
 その刃が岩石の悪魔に突撃攻撃を見舞った。
「そんな大きな得物、当たるものか!」
 巨躯とは言え戦場で鍛えた第六感がハサミの打突を予測する。
「だと思った……ぜ!」
 その手が次に携えていたのは二刀であった。小太刀を構えて瞬間的に振り返った斬撃にディアマンが舌打ちする。
「……どれだけ手数があるというんだ」
「オタクよりかマシさ」
 あけびの打ち下ろした刀が死角からの攻撃を試みる。しかし、その一閃はハンマーの柄に阻まれた。
 だが、その腕がじりじりと動かされていく。
 視線の先の雫がリザードマンと鍔迫り合いを繰り広げていた。
「進化……し切っている感じですね。刃に迷いがなくなってきました」
 石槍から炎の魔術を弾き出し、リザードマンが吼え立てる。
 その背筋を銃撃が叩き破った。
 振り返ったリザードマンの瞳に鉛弾が正確無比に撃ち込まれる。
 エカテリーナが鼻を鳴らした。
「完全武装したつもりなんだろうが、隙だらけだな」
 皮膚に悪鬼のような文様が浮かび上がり、エカテリーナの銃撃をさらに強大な一撃に変化させる。
 打ち据えた銃弾が心臓を狙い澄まし、リザードマンが血反吐を吐いた。
「時間がないのだろう? さっさと首を落とせ」
「……感謝します。エカテリーナさん」
 踊り上がった雫が大剣に力を込め、リザードマンの首をはねた。さらに返す刀で心臓を射抜く。
 息を切らしつつ、雫は声にしていた。
「これで一体目……」
 リザードマンの遺骸を引きずり込み、ディアマンから自由を奪おうとする。
「おのれ小賢しい……」
「よそ見してる暇、あるのかよ」
 ハンマーの一撃は強力でありながらも連射はできない。ジョンの翻弄戦法と不意に咲いてくるあけびの剣術にディアマンは完全に硬直していた。
「うまくやってるみたいじゃんかよ。……さて、こっちもそろそろ終わりにしようぜ? トカゲ野郎」
 玲治は幾度目か分からない刺突を叩き込む。
 石槍でいなしたリザードマンが踊るように接近し、近接格闘を放つ。
 ――思っていたよりやりやがるな。
 汗を拭おうとした途端、石槍に込められた魔術が流転する。
 デカイのが来る、と震撼した神経に差し込んだのは、仙也の声音であった。
「あらかた、逃げさせておいた。にしても、前よりそれっぽいな。進化って奴は」
 氷の魔術が空間に放出され、途端にリザードマンの挙動が鈍くなる。
 今だ、と槍の穂を突き出した。
 心臓を僅かに逸れた白銀の一撃をリザードマンがかっ血しつつも受け止める。
「野郎! 死なば諸共ってことか!」
 石槍に必殺の勢いが灯ったその時、仙也が舞い降りた。
 まず一閃で石槍を掴んでいた手首を落とす。さらに二の太刀が紅蓮の炎を滾らせてリザードマンの顎に突き刺さった。
「前の個体のほうが強かったな。やっぱり飼われちゃお終いか」
 玲治が吼え、白銀の槍を渾身の力で振り回した。
 銀色の閃光を棚引かせてリザードマンがブロック塀に突っ込んだ。
 砂塵を上がらせるその背筋に仙也が刃を突きつける。
「あのハンマーだけは、見覚えがあるんだけれどな」
 ディアマンへと注がれた視線を感じ取ったのか、リザードマンが振り返り様に尻尾による攻撃を叩き込もうとする。
 その尻尾の先端に突き刺さったのは玲治の槍であった。
「悪いな。あまり消耗してもいられねぇからよ」
 リザードマンの頭蓋に仙也の刃が無慈悲に刺し込まれた。
「そういうこと。これくらいの距離なら最終目標も達成されやすいだろう」
「本丸に雪崩れ込むぜ。……増援感謝する」
 拳を突き出す。仙也は目線を振り向けずにコツンと当てた。
「効率よく敵を倒すためだ。他意はない」
 雫とエカテリーナ、玲治と仙也が対ディアマンへと一気に踏み込んだ。
「六人の撃退士との戦闘は想定していないな。……思っていたよりもクリムゾンレイ、使えない天魔であった。ここまでだ」
 ディアマンがダルマモードへと変形しようとした瞬間である。
 リザードマンの遺骸から赤い光が放出された。
 その光を基点として魔術の陣が発生する。突如としてディアマンを襲ったのは内側からの重圧であった。
 内奥に熱の燻りを感じ取ったディアマンはその時初めて、両手首の金輪から血脈が至っているのに気づく。
「……オレの内部魔術式を書き換えて。あの使えないヴァニタスと同じ魔術構造か。身体の中から、オレを縛りつけようと」
「そういうことです。傭兵の天魔、ディアマン。話してもらいますよ、クリムゾンレイの思想について」
 剣を突き出した雫に、後ろを取った形の仙也と玲治、さらにエカテリーナが完全に逃げ場を包囲し、あけびとジョンはその首をいつでもはねられる位置についている。
 ディアマンはフッと笑みを浮かべた。
「オレもヤキが回ったな。だがオレは、戦場で一秒でも長く戦いに浸りたいと願う生粋の死狂いさ。切るも切られるも、この世の沙汰よ!」
 ディアマンの怪力がダルマモード強制解除に用いられたリザードマンを持ち上げる。
 まさしく悪足掻きの一手。
 リザードマンの死体を利用し、竜巻旋風が巻き起ころうとしていた。
 その途端、ロックオンサイトが空間に突然に発生する。
 その中心軸に数値が振られ、瞬く間に空間軸と威力値を示す数値が極大化した。
「悪いけれど、オタクのやり口、もう通用しないんだよね。ありったけ、邪魔をさせてもらうぜ」
 目標地点へとジョンが振り返っただけで、巨大な爆発の光輪が生じた。
 光の連鎖と風の逆巻きにあけびが苦言を漏らす。
「この技、ちょっと強過ぎ。私じゃなきゃ、光で対象を取り逃しそう」
 あけびの回り込んでいたのはディアマンの首筋であった。雷電改から新たに武装が持ち替えられている。
「この子も、使うのは初めて。私にとっての初めての魔攻刀。さて、二度も三度も言わせないで。あなたの最後の戦場よ」
 その宣告にディアマンが哄笑を上げた。
「最後か! ここが最後か! ……ならばくれてやる、撃退士。クリムゾンレイの居城だ。今回も逃げに徹し、これを送るだけのつもりであったが、どうやらこれが最後か」
 ピンと弾いた座標の示された紙を仙也が拾い上げる。
「どういう考えでディアボロを進化させている?」
「奴は変わり者だ。進化、という妄執に囚われた存在そのもの。人はどこまで行けるのか。生物はどこから来て、どこに行くのか。そんな果てのない思想に人生を注いでいる。奴と事を構えるのならばこれだけは肝に銘じておけ。貴様らの強さもまた、奴からしてみれば監察の対象物なのだということを」
 最後の手心か。ディアマンの声音に心臓へと狙いを澄ました雫の切っ先が告げていた。
「辞世の句があるのならば」
「いや、ないね。……言っただろう? オレは一秒でも戦場にいたい死狂いなのだと。そんな貴重な一秒を、言葉なんかで飾り立てられるものか!」
 ――百の言葉よりも一の刃で語れ。
「そう、か」
 剣が心臓を射抜く。それとあけびの刀が首を落としたのは同時であった。
 あまりに呆気なく、戦場を練り歩いてきた悪鬼は幕を閉じたのだ。
 踵を返した撃退士たちは次の標的を視野に入れていた。
「行くぜ。進化なんていうお題目で、流される血があっちゃいけないんだ」
 ――合見えるのは真紅の閃光の仇名、クリムゾンレイ。


依頼結果/参加キャラクター

依頼成功度:成功面白かった!:6人
MVP一覧
 大切な思い出を紡ぐ・ジョン・ドゥ(jb9083)
 北風を身に纏い・不知火あけび(jc1857)
重体一覧
 −

歴戦の戦姫・
雫(ja1894)

中等部1年1組 女 鬼道忍軍
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

大学部3年4組 男 ディバインナイト
大切な思い出を紡ぐ・
ジョン・ドゥ(jb9083)

大学部5年9組 男 陰陽師
負けた方が、害虫だ・
エカテリーナ・コドロワ(jc0366)

大学部4年9組 女 インフィルトレイター
童の一種・
逢見仙也(jc1616)

高等部2年4組 男 ディバインナイト
北風を身に纏い・
不知火あけび(jc1857)

高等部2年1組 女 鬼道忍軍


依頼相談掲示板

【相談卓】蜥蜴と達磨退治
不知火あけび(jc1857)|高等部2年1組|女|鬼道
最終発言日時:2016年10月29日 22:03
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2016年10月27日 21:30


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