LINEのMVNOサービス「LINEモバイル」が9月21日に本サービスに移行して1カ月が経った。MVNOとは、NTTドコモなど、通信会社の回線を借りて格安スマホのサービスを展開する事業者のことだ。
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SNSの利用はデータ使用量に加算されず使い放題で、料金も月額500円からと、LINEユーザーを意識したかのようなサービスは、格安スマホの新勢力として大手通信会社からも注目を集めている。
3月にMVNOサービスへの参入を発表してから、水面下でどのような準備を進めてきたのか。そしてLINEモバイルを率いる嘉戸彩乃社長はどのような戦略で挑むのか。キーパーソンを直撃した。
■前倒しで本サービスを開始
LINEモバイルはドコモの回線を借り、NTTコミュニケーションズをMVNE(ドコモとの間に立ってLINEのサービスを支援する役割)としている。これらは、参入を表明する2カ月前の「今年1月には決まっていた」と嘉戸社長は明かす。
その後の3月にMVNOへの参入を表明し、9月5日に2万契約限定で試験運用を開始した。試験運用、本サービス移行と二段構えにしたのは「品質を担保したかったら」と嘉戸彩乃社長は言う。実は試験運用前の8月から社員を対象に社内試験を実施。申し込みの手続きなどを確認するとともに、LINE特有の年齢認証のアプリなども試していた。
午前中の注文なら当日、午後の注文は翌日にSIMカード(スマホに挿して使う、通信に必要なカード)を発送する。MNP(番号を変えずに携帯会社を乗り換える)も1~2時間で対応できる。「明日数万件の申し込みが殺到しても問題のない体勢が構築できた」(嘉戸社長)ことに加え、マイページや公式アカウントの使いやすさなどが「合格」となった。そこで、10月1日に予定していた本サービスへの移行を、9月21日に前倒しすることになったという。
「LINEモバイルの魅力はユーザー目線でのサービスの構築・改善だ」と嘉戸社長は胸を張る。たとえば、1カ月分のデータ通信量が契約の上限を超えた場合、通信速度が極端に遅くなり、事実上使えないに等しい状態になる。だが、ユーザー目線からすれば、そうした場合、LINEやツイッター、フェイスブックなどのSNSが使えないのが最大の痛手だ。
そこでLINEモバイルは、SNSの使い放題にこだわった。11月1日にはインスタグラムも使い放題の対象にすると発表している。
■モバイル事業は、「すぐにはやめない」
サービス開始後1カ月の契約数や解約率は明かしていないが、「ユーザー満足度は驚くほど高い。それは解約率の低さに表れている。SNSの書き込みなどでネガティブ意見とポジティブ意見のバランスも見ているが、それを見ても満足度が高い」(嘉戸社長)。出足は上々のようだ。
LINEは新規事業への参入を積極的にしてきた会社だが、撤退の決断も早い会社でもある。このため「LINEモバイルもすぐ止めるのではないか」と推測する向きもある。
これに対し、嘉戸社長は「LINEの中では、実験的に始めてすぐやめていい事業と、やめていけない事業とを明確に切り分けている。そしてLINEモバイルはやめてはいけない事業だ。インフラ提供会社として真剣に取り組んでいる」と真顔で話す。
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