「希代の詐欺師を巫女(みこ)だなんて。『巫女の崔順実(チェ・スンシル)に国がもてあそばれた』という言葉に、シャーマン(霊界などと交信できるとされる巫女や祈とう師)たちの自尊心はひどく踏みにじられている」
シャーマンたちは怒り心頭に発している。国政に介入した疑惑が持たれている崔順実(チェ・スンシル)容疑者(60)は巫女だといううわさが広まり、実際のシャーマンたちの名誉が傷付けられているというのだ。シャーマンたちの集まりである韓国巫信教総連合会が先月31日、「崔容疑者に巫女という単語を結び付けないでほしい」として始めた署名運動にはこれまでシャーマン約800人が賛同している。
韓国巫信教総連合会のイ・ウォンボク総裁は「さまざまな不正に関与している崔容疑者に巫女という単語が結び付けられているころから、シャーマニズムがまるでエセ宗教のように非難されている。我が民族の文化遺産を守り、継承することを誇りにしているシャーマンたちに対する名誉棄損だ。崔容疑者が自ら巫女ではないと言わないなら、全国のシャーマンたちは街に出てデモ隊に加わるだろう」と述べた。
「崔容疑者=巫女説」は、新興宗教「永世教」開祖・崔太敏 (チェ・テミン)氏=故人=が生前、「娘(崔順実容疑者)は現夢(死んだ人や霊が夢に現れること)など霊的な能力を持っている」と語ったとされることから広まった。特に、朴槿恵(パク・クネ)大統領就任式に使用された「五方嚢(のう)」や大統領の女性側近たちを指す「八仙女」の集まりなどに崔容疑者が関与していたという疑惑が取りざたされたことから、さらに広まった。
シャーマンらによると、韓国語でシャーマンを表す「巫堂(ムーダン)」はもともと「天と地をつなぐ行為者」という意味で、韓国の伝統宗教「巫教」に携わる者を指す単語だったという。ところが、帝国主義時代の日本がこの民族文化を抹殺するため巫堂をおとしめる政策を展開したことからネガティブな意味合いを持つようになったとのことだ。韓国巫教学会のヤン・ジョンスン会長は「崔容疑者=巫女説のせいで、シャーマンに対するネガティブな認識がいっそうひどくなっている。シャーマンたちにとって崔容疑者は日本に劣らぬ逆賊だ」と言った。