メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ドゥテルテ氏訪日 混乱の修復を期待する

 フィリピンのドゥテルテ大統領がきょう日本を公式訪問する。26日には安倍晋三首相と会談する。

     ドゥテルテ氏は先週、日本に先立って訪問した中国で、米国との「離別」を語って物議をかもしたばかりだ。訪中に同行した閣僚は火消しに追われ、ドゥテルテ氏自身も帰国後に「関係断絶という意味ではない」と釈明した。

     米国は、ラッセル国務次官補を急きょマニラに派遣して真意をただした。中国ですら、突然の発言には戸惑ったのではないか。

     今回の訪日を通じてこうした混乱の修復が図られるよう期待したい。

     耳を疑わせるドゥテルテ氏の発言はこれにとどまらない。

     米軍との合同軍事演習については「(今年が)最後になるだろう」と述べ、テロ対策で南部ミンダナオ島に駐留する米軍を「出て行かなければならない」と切り捨てた。オバマ米大統領には暴言を吐いて首脳会談が取り消されている。

     背景には麻薬対策への米国の批判がある。裁判抜きでの容疑者殺害という手法を米国が問題視するのは当然だが、ドゥテルテ氏には治安を回復させたという自負が強いようだ。

     一連の言動からは、19世紀末から半世紀近くに及んだ米国による植民地支配への反感も垣間見える。その思いは、冷戦終結直後の1990年代初めにフィリピン上院が新条約批准を拒否して駐留米軍を撤退させたことにも通じるのだろう。

     しかし、アキノ前政権は2014年に米軍を再びフィリピンに戻すことで米国と合意した。中国による南シナ海での権益主張強化への対応策であり、米国との同盟が安全保障の根幹だという現実的な判断に立った決定だった。

     日本とフィリピンは、自由と民主主義という価値観を共有してきたパートナーだ。ドゥテルテ外交の迷走によって、アキノ政権下で築かれた日米比の協力関係が揺らぐことは望ましくない。

     重要な海上交通路である南シナ海での航行の自由を守るためにフィリピンと協力することは、日本の国益に直結する。26日の首脳会談には、日米とフィリピンの協力強化につながる建設的な議論を期待したい。

     安倍首相は先月、ラオスでドゥテルテ氏と会談した。南部ダバオの市長を20年以上務めたドゥテルテ氏は「日本はダバオの発展に多大な貢献をしている」と評価し、特に国際協力機構(JICA)の事業への感謝を語ったという。

     政府は、「ドゥテルテ氏は親日家だ」と評している。それならば、互いに率直に物を言い合える関係を目指してはどうだろうか。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 社会人野球 JR西・加賀美がノーヒット・ノーラン
    2. 嗣永桃子 “ももち”がハロプロ卒業で芸能界引退へ 幼児教育の道へ「大きな決断」
    3. 社説 パリ協定発効 出遅れ挽回に力尽くせ
    4. 広島優勝パレード 黒田、泣き崩れる 思い出のマウンドで
    5. 兵庫県教委 給食牛乳、自宅に持ち帰り…教諭を停職1カ月

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]