誰かの発言の引用ではない。ジョークを意図したものでもない。
そして、その文言を添えられて顔写真を「さらされて」いるのは、スパイだとか政府の金を横領した人物だとかではなく、「仕事中」の服装をした判事である。
最初にこの画像を見たときは、「デイリー・メイルのこういう一面はまだですか」という主旨の風刺作品だろうと思った。しかし、ほんの10秒ほどで、風刺作品ではなく本物だということが確認できた。BBCで毎日「今日の新聞一面」を淡々とフィードする記者のアカウント(「事件記者」めいた「電話で真顔」のアバターの由来は、おそらく電話中の首相の真顔である)が、これを淡々とフィードしているのが確認できたからだ。
「法の統治」という大原則を、デイリー・メイルのような歴史ある報道機関が知らないはずはない。しかしそれでも、高等法院の判事(裁判官)たちのことを引用符つきで 'out of touch' と断罪してみせているのは、これまでずーっと「負け」続けてきて今年の6月にごく僅差で「勝った」ためにやたらと勝ち誇り、「民主主義」をただの「多数決」にしようとしている「一般大衆 the people (と自認しているであろう人々)」の聞きたいことを言ってあげて売り上げとPVを稼ぎながら、彼らを煽動し、彼らを方向付けるためである。
あの英国で、まさかこんなことが起こるとは、誰が予想していただろう。いくらデイリー・メイルでも、である。
私が東京でこのとんでもないことを知ったのは、TwitterのTrendsに「人民の敵 Enemies of the People」という文言が上がっているのに気づいたときだった。キャプチャをとってツイートしたのは、最初に見てからしばらくしてからだが、下記のようになっていた。
https://t.co/8ExuUP50pQ Enemies of the People (via UK Trends) pic.twitter.com/hiSLevDGyj
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2016
それなりによく訓練されたUKウォッチャーなので、内容は察しがついていた。3日、高等法院がBrexitについて、あのレファレンダムの結果は「人民の意思」であると声高に叫ぶ人々の意に反する判決を示していた(下記)。「人民の敵」というのは、それについて使われているとしか考えられない。
Brexit court defeat for UK government
http://www.bbc.com/news/uk-politics-37857785
Parliament must vote on whether the UK can start the process of leaving the EU, the High Court has ruled.
This means the government cannot trigger Article 50 of the Lisbon Treaty - beginning formal exit negotiations with the EU - on its own.
Theresa May says the referendum - and existing ministerial powers - mean MPs do not need to vote, but campaigners called this unconstitutional.
The government is appealing, with a further hearing expected next month.
Blimey. In just 5 minutes the High Court has blown away the Prime Minister's plans for Brexit.
— Carl Dinnen (@carldinnen) November 3, 2016
High Court rule that Government do not have power to trigger Article 50 under royal prerogative. Judgment here https://t.co/bSxaKAzY5m pic.twitter.com/NPagsFWS4t
— Judicial Office (@JudiciaryUK) November 3, 2016
しかしそれでも、最初は、「人民の敵」などというのは、誰か過激な発言をする個人(UKIPの政治家や活動家など)の発言(の引用符が取れたもの)だろうと思っていた。イタリア首相在任中のシルヴィオ・ベルルスコーニは、自身の汚職などについてまっとうな判決を下す裁判官のことを「左翼」と呼んで、「一般大衆」にアピールしようとしていた。ベルルスコーニと同じようなポピュリストは、現在の英国には何人もいる。だから、そういう発言をする個人が、公人のなかにいたっておかしくはない。そして、そういうことを言いそうな側というのは、「あちらの側」に決まっている。現在の労働党について「スターニリスト」とあげつらう側だ。その誰かがこんな発言をしていれば、誰だって「すさまじいブーメランだな」ということでツイートしたくなるし、それが原因でTwitterでTrendsに入っていてもおかしくはない。発言があったのはテレビのインタビューか何かだろう、誰の発言だろうか、とクリックした私の目に飛び込んできたのが、上掲のデイリー・メイルの強烈な一面だった。
「個人の発言」ではなかった。「新聞の一面」だった。デイリー・メイルだが。
いや、デイリー・メイルだからこそ、これは深刻なことだ。
事態はとっくに、"beyond parody" と言うべき域に達していたのだ。6月23日のEUレファレンダム前の1ヶ月ほどは、BBCの「今日の新聞一面」担当記者(2人いる)のアカウントでフィードされるタブロイドの一面も、Twitterでの「サイレント(だった)・マジョリティ」たちの発言も、「何の冗談だよ」と反応したくなる様相を呈していた。誤情報・デマ・感情の煽動が、見ているだけでうんざりするほど飛び交っていた。「冗談」と思っていなければ付き合いきれないレベルだった。このときに私はずいぶん多くのプロパガンダ・アカウントの発言をカジュアルな検索結果などで目にしないよう、ミュートしたりブロックしたりした。それまではただスルーしていたのだが、目にするだけで消耗し、吸い取られるくらいにしつこく繰り返され、増幅されていた。Twitterは「エコー・チェンバー」として最大限に機能していた。ジミヘンもびっくりのフィードバックが鳴り響く……と、冗談にして笑っていてもがまんできる範囲を超えていた。
が、それらは「冗談」などではなかった。英国で、つまり「連合*王国*」で、「選挙で選ばれたわけでもないエリートたちによる意思決定」そのものを問題とする(かのような)政治的言説が、完全に日常化していた。それも、古くから馴染みのある王政廃止論者(共和主義者、republican……同じ用語でも、北アイルランドではシニフィエが異なるので注意)の文脈ではない。制度をよりよいものにしようと建設的な議論をするためではなく、「エリート」を攻撃するために「選挙で選ばれたわけでもない」という形容詞句が使われていたのだ。「選挙で選ばれたわけでもない unelected」はもはや「罵倒のための言葉」に成り果てていた。
しかし彼らは、マードックやデズモンドのような「選挙で選ばれたわけでもない」のに人々の思考を形作るプロパガンディスト・メディアのエリートたちを「エリート」として攻撃していたのではなかった。それらには、何の疑問も抱かずに盲従していた。そして、ネット上に散在するそれらプロパガンディストの拡声器たちは、「エリート」に見えない(「ただのブロガー」だったりするわけで)。
何より頭が痛いことに、彼らが「選挙で選ばれたわけでもない」として攻撃している「エリート」は、実際には選挙で選ばれた人々だった。欧州議会の議員たちだ。(この件について、ひとつ実例を調べてブログに書こうとしていたのだが、調べている間にこちらの精神が食われてしまって形にできていない。こんなの、仕事でならやるけれど無料でやれるものではないというレベルのひどさだ。そもそもこのブログは元々「書いたメモを広く共有する」という意図でやっているもので、書くだけで精神的にダメージを受けるようなことを書いたところで、こちらに得になるものは何もない。私がいわゆる「活動家」に拒否反応を示す系の人物だということがわかると誰もハナもひっかけないし、書いたことが広がっていきもせず、ただネタ・着想をパクられるだけ。すべては無駄、虚無でしかない。)
その「選挙で選ばれたわけでもないエリートたちに支配されている欧州連合(EU)」というデマ(これは、政治的意図をもって故意に広められた誤情報である)をきぃきぃと叫んで回っていた人々が、現在、テリーザ・メイ首相に対し、「人民の意思」のとおり、EU離脱を実行することを期待しているし、またそうするよう要求している。メイは保守党の党内での権力抗争と、対立候補者のオウンゴールの結果として保守党党首・首相になっているのであり、彼女が党首として率いた選挙で保守党が勝利したわけでもなく、つまり二重の意味で「選挙で選ばれたわけでもない」と指弾されるならこの人の他に誰がいるのか、というくらいの存在だが、そこは英国流のプラグマティズムで、今は問わないでおくようだ。
2015年の総選挙で勝つために「単純なYes/Noでのレファレンダム実施を公約する」などというおろかな判断を下し、この事態を引き起こしたデイヴィッド・キャメロン前首相は、既に首相を退いたばかりか、議員も辞職して、政界引退してしまっている。その議席も、既に補欠選挙が行なわれて保守党の新人が(キャメロンと比べたらずいぶん支持を減らしながら)とっている。
そういう流れがあって、なおかつテリーザ・メイとその奇妙な面々の閣僚たちが「EU離脱」の具体的手続きをどうするかの舵取りをしているし、経済界もいろいろと反応を示しているのだが(先日の日産のサンダーランド工場の件は笑った。ジャーナリストのファイサル・イスラムのツイートを参照。あ、2件連続なのでこちらも)、「離脱」に向けたその進行をただ黙って見ているわけにはいかないという人たちも、できる限りのことはすべてやろうとしている。ただし、新聞などがいくら論説記事を出そうとも討論会を主催しようとも、「これが国民の意思だ、ざまあみろ、エリートめ!」というプロパガンダを信じ切ってその中で旗を振り回して拍手喝采している人々にはまるで届かないし、ロンドンで「親EU」のデモ(2014年のウクライナのキエフかっていう)が行なわれたところで、「投票で出された結果に反対するデモ」など、「デモがどれだけ大人数を集めているように見えても、実際の票数とは関係ない」という当たり前の事実の前には、まるで無力であるばかりか、「まだあきらめないで」というメッセージを発することもできているのかどうか微妙というくらいのものだ。
しかし、中には「法律」を武器として闘おうという人たちもいた。今回、高等法院からの判断を引っ張り出した訴訟の主は、そういう人たちのひとりだ。
「今回の裁判は英政府の対応に不満を持つ市民側が訴えていた https://t.co/srfONRLXpa 」のですが、その「市民(側)」のプロフィール記事。 https://t.co/rVFNT8VGfe 英国はほんとに、おもしろいですねえ、とこういう時に思うんですよね。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2016
このダイナミズム、日本語圏でわかったような顔をした人々によって「老大国」だの「大人の国」だの何だのと呼ばれつづけている英国のこの動的な力(同語反復)が、ウォッチャー的には実におもしろい。「お上」意識が言葉の端々にまで浸透しているこの言語圏(例えば「○○公害訴訟の判決を受けて、国が控訴しました」というマスコミ様のナラティヴを参照。「政府」をなぜ「国」と言うのか?)から見れば、すがすがしく見えるほどだ。が、「おもしろい」などという言葉を使っていると、また「不謹慎だー」と怒鳴り込まれるだろうから、ほどほどにしておく。
でも一番明示的におもしろがってたのはこの人だよね。
If I was the three #HighCourt judges I would do a pose like this pic.twitter.com/cDMR5EFYkx
— Jeremy Vine (@theJeremyVine) November 3, 2016
ともあれ、高等法院が「EU離脱の手続きを進めるには、国会(下院と上院)での採決が必要」という判決を出したことで、司法に対する反発が起き、それをジョン・プレスコット元副首相やウィル・ブラックさんは「(最高裁の次は)欧州司法裁判所ですか」とまぜっかえし(爆笑)、デイヴィッド・シュナイダーさんはBrexiterの決まり文句、"You lost, get over it!" をそのまま熨斗つけて返し、ジェイミー・ロスさんも同じBrexiterの決まり文句を使って究極の真顔芸を披露し、デイリー・メイルはあのような一面にした。
Brexiters: "WE WANT BRITISH SOVEREIGNTY"
— TechnicallyRon (@TechnicallyRon) November 3, 2016
High court: "ok"
Brexiters: "no not like that"
Brexiters: "We want Parliamentary sovereignty"
— I, Daniel Blake🇺🇬 (@Blick_Oyinbo) November 3, 2016
High court: "ok, there you go. Have it"
Brexiters: "no no not like that"#bbcqt
Leavers: 'Give us parliamentary sovereignty!'
— John Prescott (@johnprescott) November 3, 2016
High Court: 'MPs must vote on Article 50
Leavers: 'We'll appeal to European Court of Justice!'
Looking forward to Brexiteers calling for the Article 50 case to go to the European Court if the Supreme Court upholds the High Court
— Will Black (@WillBlackWriter) November 3, 2016
Ideally, for karma, the Supreme Court will simply say to Brexiters: "The High Court said Parliament must be consulted. Get over it!" #bbcqt
— David Schneider (@davidschneider) November 3, 2016
I'm confident Brexiteers will now accept the will of high court and move on.
— Jamie Ross (@JamieRoss7) November 3, 2016
最高の真顔棒読み芸。RTが760件以上、Likeが1k件以上で、みなさんノリがよい。https://t.co/PTRslS6LH7
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2016
DAILY MAIL: Enemies of the people #tomorrowspaperstoday #bbcpapers pic.twitter.com/n5ynFalnEa
— Neil Henderson (@hendopolis) November 3, 2016
このデイリー・メイルの一面が拡散し、法律家のデイヴィッド・アレン・グリーンさんがこれに呆れかえったツイートがRTされまくって、"Enemies of the people" などという不穏当なフレーズがTwitterでTrendsに入ったようだ。
"We want UK judges deciding on UK legal matters!"
— Law and policy (@Law_and_policy) November 3, 2016
- UK judges decide on UK legal matters.
"ENEMIES OF THE PEOPLE!"
さっそく「トルコか」とか「インドか」といったアレげな比較もなされている。
Daily Mail's "Enemies of the People" headline seems like one straight out of Erdogan's Turkey.
— Gareth Golder (@GarethGolder) November 4, 2016
High court judges who ruled against UK govt are now "Enemies of the people". Looks like we are adopting the Indian democratic model
— Vipul_T (@RationalVt) November 4, 2016
トルコやインドはまあ「あっはっは、そうですよねー」なのだが、バルカンはマジ洒落にならないのでやめてくれと思ったが、そもそも洒落になっていないのはデイリー・メイルだ。
Naming 'Enemies of the people' plus free XL map of the country...could just as well be a Balkan tabloid https://t.co/jWP5ZB0T0K
— Valerie Hopkins (@VALERIEin140) November 4, 2016
I almost forgot that the Daily Mail was called "comic". Now they place a "GIANT map of Britain" against the "Enemies of the People". Quality
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2016
Twitterにはいろいろな人がいる。アバターからしておそらく確実にBrexiterだろうと思われる人(「過激派からユニオン・フラッグを取り戻すためにアバターにしている」とプロフィールで説明しているが)が、極めて冷静に、このデイリー・メイルの一面に警戒心を抱いているということを表明している。(この人のツイートはもう少し下で改めてみる。)
I think all of us (remain or brexit) should be uneasy a national newspaper has called judges Enemies of the People for upholding rule of law
— Adderboba44 (@AdderCowley) November 4, 2016
「専門家でない人でも百科事典は作れる」という革命的思想を現実化したウィキペディア、ウィキメディアのジミー・ウェールズは、EUレファレンダム前にBrexiterたちによって繰り返された「専門家への侮蔑」と、裁判官の「人民の敵」呼ばわりをダイレクトに結びつけた(鋭い)スチュワート・ウッドさんのツイートにリプライする形で、「選挙で選ばれていない首相に対し、選挙で選ばれた議会が決定権を持つべきとする司法の判断が、人民の敵呼ばわりされるなんて」と驚いている。
@StewartWood A ruling that an elected Parliament has the last say over an unelected Prime Minister -> enemies of the people. Wow.
— Jimmy Wales (@jimmy_wales) November 4, 2016
JOE.co.ukというLAD系オンライン媒体のフットボール担当記者、トニー・バレットさんも、このように反応している。
Forget the politics of it, this is beyond irresponsible. pic.twitter.com/oPqw3csSkk
— Rory Smith (@RorySmith) November 3, 2016
Judges depicted as enemies of the people. This is genuinely scary shit. https://t.co/caECOInfRH
— Tony Barrett (@TonyBarrett) November 3, 2016
In June an MP was assassinated for doing her job. Now sections of national press branding judges 'enemies of the people' for doing theirs.
— Paul James Cardwell (@Cardwell_PJ) November 4, 2016
Regardless of your position on Brexit we should all be horrified by a newspaper calling judges 'enemies of the people' for upholding the law
— Jonathan Pryor (@Jonathan_Pryor) November 4, 2016
QC(とっても偉い法律家)で、100件以上の殺人事件の裁判にかかわり、戯曲家で舞台俳優でもある(ほんとに!)ナイジェル・パスコーは、次のように非常に強く警戒し、短時間で見解をまとめてYouTubeやブログにアップし、同職者に発言を呼びかけている。(YouTubeの映像はご本人がエンベッドしそこねている。)
Parliament is sovereign. It takes a brave lawyer to disagree.
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 3, 2016
Having read the judgment, I predict some very lazy judge bashing arguments. But that is so foolish on a pure question of law.
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 3, 2016
Brexiteers should respect the decision and accommodate it rather than abuse the bench
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 3, 2016
The consequence is that lawyers should stand up for judicial independence and point out that an unprecented Supreme Court will decide it
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 3, 2016
This is getting completely out of hand. If The Daily Mail speaks of Judges as enemies of the people, democracy is being undermined. Shame!
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 3, 2016
Let us have passionate reasoned argument but abusing Judges is utterly contemptible. Lawyers should speak out fervently in their defence
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 3, 2016
I urge my colleagues to condemn now hysterical attacks on the judiciary. It is far too serious to be ignored
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 3, 2016
It's very short but I have put my view late at night on Utube under Attack on serving Judges. So pleased that so many are as concerned
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 4, 2016
I have risked my views in a short blog. 'If you love Democracy, take care'. It would be good if those who should do now speak out.
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 4, 2016
If you love Democracy, take care.. https://t.co/FMNUOeCO5n via @wordpressdotcom
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 4, 2016
The Judges have spoken and there is absolutely no reason why their reasons cannot be analysed and challenged by lawyers and others, indeed by anyone. Provided only that we accept that they were just doing their job according to their consciences.
Sadly the appalling reaction from some of the media and very particularly the Daily Mail, threatens Democracy itself. It is dangerous nonsense to describe serving Judges as enemies of the people. That way lies anarchy and they should hang their heads in shame. The Law Officers should condemn it and so should the Bar Council and every other responsible legal institution. It is absolutely contemptible and I fear for reasoned public debate if it is not opposed in the strongest terms.
Just one note of hope. There are highly intelligent and reasonable Brexiteers out there who do see the point and want no part of this mass hysteria. I want to hear more from them. They have the power to calm these troubled waters. They will earn respect by speaking out unequivocally.
If the Lord Chancellor declines to defend the Judges, the PM MUST.
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 5, 2016
The line crossed by personal abuse of serving judges is so serious that the Gov must respond
— Nigel Pascoe QC (@nigel_pascoe) November 5, 2016
Excellent article on the High Court Ruling. This is not flouting democracy, this is upholding UK's legal system. https://t.co/zmd7Wge2Eh
— Adderboba44 (@AdderCowley) November 4, 2016
パスコー弁護士が「手に負えない状態になっている」と述べているのは、彼1人の感覚ではない。
LEAVERS THEN: We want our parliament to make our laws. We want our judges to have the final say.
— Andy Lewis (@lecanardnoir) November 3, 2016
LEAVERS NOW: Block our MPs. Hang our judges
This #brexit nonsense has to stop. It is splitting this country apart and the rags who support it are enemies of the people. https://t.co/K2TKVqvuJN
— Kat Leach (@KateLeah) November 4, 2016
Dear @DailyMailUK considering that 48.1% of the people of voted want to remain, does that mean they are all enemies of the people?
— Simon Munnery (@Ginmartini83) November 4, 2016
そして、「人民の敵」という不穏当なフレーズからは、当然、こういう連想がなされる。これ、冗談や偶然の一致ではなく、実際、そっちが入ってきてると思うんっすよね。あんまりその話をすると日本語圏で私が攻撃されるから公開の場ではあまり書いてないけど、米国のドナルド・トランプの背後にごにょごにょの存在があることは確実だし、トランプ支持者の中にはもろにそれという人々もいる。そして、トランプ周辺とBrexiter、特にナイジェル・ファラージ周辺は、密接なつながりがある。
Some historical figures who used the phrase "enemies of the people" regularly: Robspierre, Lenin, Pol Pot...
— Sam Freedman (@Samfr) November 3, 2016
Stalin declared "enemies of the people'. I'm sure the Mail did not realise it was channeling the terminology of a tyrant who killed judges.
— David Leask (@LeaskyHT) November 3, 2016
このTrendsの波は、現地で人々が寝静まり、朝を迎えてもまだ続いていた。
デイリー・メイルが高等法院判事を「人民の敵」呼ばわりしている件、7時間経過してなおTrendsに残っている。深夜の朝刊早版で話題になったあと、人々が寝たり起きたりして、今ちょうど朝8時ごろなので、起きぬけにお茶ふいた人の発言が大量出現した状態か。 pic.twitter.com/VQcMUaBE2f
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2016
実際、高等法院の判事に対して「ヒステリックな反応」を示したのは、デイリー・メイルだけではなかった。
※あともう少し、ツイートを整理してここに入れる。
最近、ブログに書くのを面倒がっているのは、ひとつには、タイトルを考えるのがおっくうだからなのだが、当エントリに限っては考えるまでもなく思いついた。
当初は、当ブログの普段の用語法の通り、「英国がおかしい」と書いていたのだが、書きながらお茶でもいれるかと立ち上がったときに、それまでの「英国のイメージ」をがらりと変えた90年代のベストセラー、『イギリスはおいしい』を思い出し、「英国」を「イギリス」に変えた。お湯が沸くのを待ちながら、「『イギリスはおいしい』と『イギリスがおかしい』で、日本語の『は』と『が』の違いが説明できるな」などと考えていた。(私はこの本の内容をすべて支持しているわけではないが、この本が「英国のイメージ」を変えたことは事実だし、それ自体が持っていたダイナミズムは正当に評価されるべきだと思っている。)
イギリスはおいしい 林 望 平凡社 1991-03 by G-Tools |
しかしこの「イギリス」という言葉も、厄介である。日本語の「イギリス(英吉利)」はオランダ語のInglêzが語源だと辞書にあるが、そのオランダ語は要するに「イングランド」を指すもので、現在のthe United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandとは一致しない。けれどそういう「イングランド」を指す言葉が「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(イギリス、英国)」を指すものとして現在も使われているという例は、特に欧州大陸の諸言語に見られる。日本でも、私が中学生のころはEnglishという語に「イギリスの」、Englishmanという語に「イギリス人」という語義が与えられていた(90年代以降、ほとんどの教科書ではEnglishは「英語」という語義でしか言及されなくなったが)。アメリカ(米国)では今なおEnglishはBritishと置換可能であることが多い。政府の公式な文書ではありえないことだが、報道機関の記者ブログなどではエリザベス女王のことを「Englandのクイーン」と呼んでいたりする。北アイルランドでそんな用語法がとられたら即座に「炎上」するというくらい微妙な用語法なのだが(デリーのカトリック・コミュニティ出身の芸能人がそう発言して炎上したことがある)。
おりしも今日は11月5日、Remember, remember, the 5th of Novemberの日である。
この異様な空気の中で、Remember remember the 5th of November か。何とも言えん。
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2016
2012年の女王ダイヤモンド・ジュビリーとロンドン五輪の本当の「レガシー」は、この異様な「愛国心」の高揚だ。レッドポピー着用の事実上の強制(この時期にTVに出る人はアイルランド人まで着用)、先日のFIFAとのあれこれにあったような「ポピー戦争」、そして司法への「人民の敵呼ばわり」
— nofrills/新着更新通知・RTのみ (@nofrills) November 4, 2016
※この記事は
2016年11月05日
にアップロードしました。
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