このアイコンを長いことを使ってきた。
ブログのプロフィール画像に使っている。ツイッターやフェイスブックでも使っている。寄稿記事でもアイコンをくれと言われれば差し出している。普段から読んでくれている人は見覚えがあると思う。大昔にブログ開設と同時に作ったものだ。真顔日記だから真顔のアイコンにした。単純なものである。
しかし現在、妙な問題が生じている。この顔にムカつきはじめたのである。
初見じゃムカつく顔ではない気がするが(たぶん)、何年も無表情のこいつと顔を付き合わせていると、ムカムカしてきた。おまえはなんなんだという気持ち、おまえは何を考えているんだという気持ちである。自分のアイコンなのに心が読めない。
これは三十六歳女性に作ってもらったものだ。
「あいつムカついてきたんだけど」と言ってみた。
「あたしもけっこうムカついてる」と返ってきた。
「ずっと見てると腹立ってくるよね、あれ」
「やっぱ無表情だからじゃない?」と女性は続けた。同じ意見のようだった。もしかして人は、無表情の顔を何年も継続的に見ることに耐えられないのか。少しはやわらかい要素がないと、微量の毒が徐々に身体に蓄積するように、ゆっくりとムカつきはじめるのか。それはアイコンとしてどうなのか!
ということで、アイコンの表情を作り直してもらうことにした。五年以上前に作ったものなのに、元データをしっかり残してくれていた(きちょうめんな女)。
三十六歳女性がパソコンで細部をいじくり、私は横でアレコレ口出しした。笑ってないのがまずいんじゃないか、一重なのが冷たい印象を与えるんじゃないか、どうも鼻が太すぎるんじゃないか、などなど。
その結果、目を二重にし、くちびるを薄くし、軽くほほえませてみることにした。
完成したのがこれである。
しかし、これはこれでムカついた。
むしろ、じわじわムカつく顔から、瞬時にムカつく顔になった気がする。
三十六歳女性は「こいつ絶対女グセ悪い」と言った。たしかに、と思った。「いけすかない」という表現がピッタリくる。後輩に手を出しまくるサークルの先輩という感じ。何度かヤッて平気で捨てる。顔はいいが中身はカラッポ。だから同学年は相手にしないが新入生はだまされる。口だけ達者のクズ。それがこいつだ。まあ、アイコンの性格を決めつけてボロクソに言うほど不毛なこともないですが。
「もうわかんないし、勝手に選んで」
三十六歳女性は投げた。
二つ並ぶと、真顔のほうがいいかもと思った。
チャラい奴と比べれば、真顔のこいつは愛想はないが、一度付き合った女は大事にしそうだ。何を考えているのか分からないところが不満ではあるし、友達に自慢できるような派手さはないけれど、年に一度くらい、二人でいる時にふと、この人と付き合っていてよかったと思えて、そのまましばらく手をつないでいたくなるような、そんな人だと思う。
なんだか、別の男と浮気したことで今の恋人のよさを再確認みたいな話になってるが、このアイコンで継続することに決めた。ムカついてる人いたらすみません。この人いい人なんです、二重のあいつよりは。