トップ > 一面 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

一面

幸運のニワトリに「弟分」 「生き餌」の危機を3度くぐり人気

(右)「会うと幸せになる」と来園者に人気のニワトリ「マサヒロ」 (左)飼育員の河合さんの肩に乗り移動する「ヨシト」(乾高弘撮影)=いずれも大阪市の天王寺動物園で

写真

◆大阪・天王寺動物園

 大阪市天王寺動物園(大阪市天王寺区)で「幸運のニワトリ」が人気を集めている。肉食動物用の生き餌として三度、食べられそうになる危機を乗り越えたが、慣れない来園者の視線や夏の猛暑が影響したのか、最近は疲れ気味。そこで園は、同じ境遇で生き延びた「弟分」をデビューさせた。来年のえと「酉(とり)」に向けて予想される年末年始の繁忙期を、幸運の二羽で乗り切るつもりだ。 

 まず人気者になったのが雄のニワトリ「マサヒロ」だ。昨年七月、アライグマなど夜行性動物の生き餌として園が入荷したヒヨコ約七十羽の一羽。幸運の始まりは同じ頃に、マガモのひなが人工ふ化で生まれたことだ。親を見て食事方法を学ぶ習性のある子ガモの先生役にマサヒロは偶然、選ばれて難を逃れた。

 次に、園に侵入して鳥類を襲う野生のイタチを捕獲するためのおとりとして使われた。だが三日三晩、おりに入って待ったがイタチが現れず、お役御免に。その後、トラやライオンなどの大型肉食獣の餌になるはずだったが、園内から申し出がなかった。結局、園は昨年十月下旬、餌とすることを断念して飼育を続けることにした。

 マサヒロは境遇を知った来園者の人気を集め、昼と夕方の散歩には人だかりができるように。来園者に抱かれたり、写真を撮られたりして、園きってのスターとなった。

 だがこの夏、異変が起きた。飼育担当の河合芳寛(よしひろ)さん(42)は「口を開いて呼吸を始め、便が軟らかくなった。疲れです」。散歩を中止して静養に入った。

 その頃、似た境遇の雄のニワトリがいた。マサヒロから二カ月ほど遅れて、ワニ用の餌として園に来た「ヨシト」だ。だが、マサヒロと同様に子ガモの先生役となってワニに食べられる危機を逃れ、おとりになったらイタチが現れず、肉食獣の餌としての要請もなかった。結局、ヨシトも園で飼育されることになった。

 マサヒロは羽根の一部が抜けて尾が短いが、ヨシトは羽根が生えそろい、肉付きも良く、尾はピンと上を向いている。河合さんは「マサヒロほど愛嬌(あいきょう)はないけれど、肩に乗ってくれる。どちらも人を怖がらないのがいい」。

 酉年を前に、園が二羽をモデルにして開いた年賀状撮影会は、すぐに定員を超えるほど大盛況だった。大阪府豊中市の会社員福田治記さん(57)はヨシトを抱きながら「来年の年賀状に使います」。妻かず子さん(57)も「幸運をもらいます」と笑顔を見せた。

 マサヒロの体調は回復したが、年末にかけて人気沸騰が予想されるだけに、ヨシトが交代要員を務められることが園には心強い。二羽の共演で「幸運も倍増」と宣伝したいところだが「二羽を一度、一緒にしたら、本能をむき出しにして蹴り合いになった。シャモの闘鶏のようでした」と河合さん。ライバルの出現は、お互いにとって幸運とは言えないようだ。

(大阪報道部・武田和則)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索