このショッピングモールは2年前、大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョンア)元副社長による「ナッツリターン」事件の時も、これをマーケティングに利用したことで知られる。当時は「言葉はいらない。そのピーナツ(実際はマカデミアナッツ)」というキャッチコピーがツイッターに掲載されて話題となり、しばらくするとこのサイトのマカデミアナッツ販売は前の週に比べて149%も増加したという。一方で崔順実セットについては「企業による気の利いた風刺」という見方もあれば「企業の販売戦略にも一定の節度を持つべき」といった反対の声もあったため、サイトは問題のツイッター文書を削除した。
武器ロビイストのリンダ・キム氏、キュレーターのシン・ジョンア氏、脱獄した申昌源(シン・チャンウォン)受刑者などが世間の注目を集めた時も、実は同じような現象が起こっていた。大衆はカメラのフラッシュの前でうなだれる当事者に批判の声を浴びせながらも、一方でどんな服を着ているか、何を食べどこに住んでいるかなどに強い関心を持つ。ちなみにこれら一連の問題もしばらくすれば落ち着くと思っていたが、国防をめぐる不正はその後も続き、財閥オーナー家族らによる横柄な態度は相変わらず世間から厳しく批判され、凶悪犯罪が収まる気配も一向に見られない。
崔氏を「悪魔」などと批判しながら、彼女が履いていた靴に熱狂する背景には、この種の社会悪を軽々しく考え消費する風潮がある。今は崔氏による国政私物化の範囲とその実態を明らかにし、これに朴槿恵(パク・クンヘ)大統領がどこまで介入していたかを明らかにしなければならない重要な時期だ。それでも国民は「悪魔が出てきた」などと国がひっくり返るほどの大騒ぎをしたかと思えばすぐ覚め、またしばらくすると「また別の悪魔が出てきた」と言ってはいたずらに興奮するだろう。このようなパターンはもう繰り返してほしくない。