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オバマ政権で雇用1000万人増 製造業は減、保護主義台頭

2016/11/4 23:24
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 【ワシントン=河浪武史】米労働市場の拡大が続き、2009年1月に発足したオバマ政権下では雇用者数が1000万人増加した。金融危機後に最も雇用が落ち込んだ10年比では1500万人も増え、大統領選で与党・民主党の得点材料となる。ただ製造業は就業者減が続くなど光と影があり、共和党のドナルド・トランプ氏が白人労働者の支持を集める要因にもなっている。

 「1500万人もの新規雇用をわれわれは生み出してきた」。オバマ大統領は3日、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏の応援演説でフロリダに出向き、満面の笑みを浮かべて与党の成果をアピールした。

 米雇用は6年を超えて増加が続く。オバマ政権発足時の09年1月と比べ就業者数は1090万人増え、最も雇用が落ち込んだ10年2月比では1500万人、リーマン危機前と比べても600万人拡大した。雇用回復は個人消費や住宅投資につながり、7年超の米景気拡大をけん引した。

 ただ賃金水準が比較的高い製造業は、10月の雇用統計でも3カ月連続で就業者が減り、09年1月比で30万人減、リーマン危機前と比べると150万人も縮小。「中国やメキシコが米雇用を奪った」(トランプ氏)と保護主義の台頭を呼んでいる。トランプ氏は世界貿易機関(WTO)の脱退に言及するなど過激策を掲げ続け、白人労働者らから熱狂的な支持を得る。

 国務長官時代にアジア重視の政策を掲げてきたクリントン氏も「大統領になっても環太平洋経済連携協定(TPP)に反対する」と同調する。米通商代表部(USTR)のフロマン代表は「製造業の雇用が減ったのは、生産工程の機械化が主因だ」と反論するが、米通商政策は路線変更がまぬがれない。

 米国は転職が盛んで新興企業が雇用を吸収してきた。しかし製造業の労働者が成長著しい金融業や情報産業に移るのは簡単ではなく、主な吸収源は小売業やレジャー・接客業などだ。同産業は製造業に比べ時給が3~4割も低いため、全産業平均賃金の伸び率は2%台と、リーマン危機前の3~4%にまだ届かない。

 中間層の収入が増えないため、経済格差も広がった。米中間層の年収(米家計所得の中央値)は15年時点で約5万6500ドル(約580万円)と、リーマン危機前の07年を2%弱下回ったまま。一方で高所得層(上位10%)は約16万2200ドルと4%増加。雇用のパイは着々と増えているにもかかわらず、格差も一段と広がって中間層には回復の実感が乏しい。

 黒人失業率が8%台で高止まりするなど、雇用回復の恩恵には偏りがある。クリントン氏が勝利すれば初の女性大統領となる。米国の女性の労働参加率(25~54歳)は下がり続けて日本にも逆転された。雇用拡大と裏腹に米労働市場は構造問題を抱えており、次期政権の重い課題となる。

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