【コラム】崔順実氏が口にした「死に値する罪」という言葉

 朴槿恵(パク・クネ)政権の「陰の実力者」と呼ばれ、国政介入などの疑惑がもたれている崔順実(チェ・スンシル)氏は、泣きそうな顔つきで「死に値する罪を犯しました」と述べ、検察庁舎に入っていった。死に値する罪。大統領府(青瓦台)前秘書室長の浅はかな大言壮語のように、封建時代にこそ似つかわしい死罪だろう。そんな風に低姿勢になれば、世論の批判が和らぐと思ったのだろうか。

 遺憾ではあるが、それを見て「うそ泣き」という言葉とともに1本の韓国映画が頭に浮かんだ。ブラックユーモアあふれるソン・ヌンハン監督の「ナンバー3」。興奮のあまりどもりながら話す下っ端ヤクザのソン・ガンホを覚えている人が多いだろうが、私が最初に思い浮かべたのはヤクザよりも血の気の多い検事チェ・ミンシクのせりふだ。「俺が一番○○だと思う言葉が何か分かるか?罪を憎んで人を憎まずという言葉だよ。罪に何の罪があるというんだ? 罪を犯す○○のような○○が悪いんだろう」

 とても紙面には載せられない、卑俗な言葉を使った彼の気持ちは理解できる。罪を憎んで人を憎まず。聖書に出てくるこの格言は多くの場合、崔氏のような「悪党」たちが自らの罪を隠すための手軽な弁明だったのではないか。大検察庁(日本の最高検察庁に相当)に重機を突進させた男の、「死に値する罪を犯したというので死ぬのを手伝ってやろうと思った」という詭弁(きべん)に頷いてしまう。

 文化部の記者として、チェ・ミンシク検事や重機の運転手に肩入れしてしまう理由がもう一つある。崔氏や彼女の側近として知られるチャ・ウンテク氏らによる国政介入は分野を問わなかったが、そのほとんどは「文化」を名分にしたものだったという点だ。利権を得て1800億ウォン(現在のレートで約163億円)の予算を思いのままに動かしたときもスローガンは「文化隆盛」だったし、盗作疑惑で恥をかいた「クリエイティブ・コリア」プロジェクトも名目は「新たな国家ブランドのデザイン」だった。文化体育観光部(省に相当)長官のポストまで夢見ていたというチャ氏が介入した「文化」関連の事業は、これまでに確認されただけで20件ほどに上る。

魚秀雄(オ・スウン)文化部次長
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