こんにちは。めがね税理士の谷口(@khtax16)です。
「個人で事業を始めたい」
「個人で事業を始めている」
あなたがこういった状況であれば、まず青色申告とはなにかを知っておくことをおすすめします。
この前書いた法人の記事と重複する部分も多いですが、異なる部分もありますので、今回は個人に絞って「青色申告」の概要やメリットについて解説していきます!
(法人のメリットを見たい方は『青色申告とは どこよりもざっくりわかりやすく解説!(法人編)』へ!)
青色申告とは 青色申告と白色申告の違い
今回もまた超初心者の方に向けてものすごくざっくり書いていきます。
(法人の記事を見た方は「メリット」から読んでいただいても大丈夫です)
税務署は申告する人を色で分けている
まず、個人や法人が確定申告をするとき、税務署はその方の状況によって色を2つに分けています。
それが、
- 青色申告
- 白色申告
という2つです。
なにが違うのか?
なにが違うのか?
ものすごくざっくり言うとこういうことです。
- 青色申告 … 手間が増える代わりに、いろいろ特典がもらえる
- 白色申告 … 青色申告に比べたら多少は楽だけど、特典はもらえない
なのでもし「青色申告と白色申告どっちがいいの?」という話になったら、
特典を取るか、楽さを取るか
で決めるということになります。
どんな手間が増えるのか?
特典(メリット)については後述するとして、どのような手間が増えるのか。
法人であれ個人であれ、事業をする人は日々の取引を記録しておかなければいけません。
なんで記録しなくちゃいけないのか、事業をする方の目線で言うと、
あとあとの税務調査で「この入金なに?」「この支払いは?」と聞かれたときに記録がなくて答えられないと困る(意図的に隠しているとみなされて罰金などもあり得る)から、
と言ったほうが身に迫って感じられるでしょうか。
税務署目線で言うと、
「記録がないと調査が大変だから取っといてほしい。よし、特典で釣ってちゃんと記録を残してもらおう」
という感じですね。
この日々の記録の細かさが、
- 青色申告 ⇒ しっかりつけてね
- 白色申告 ⇒ 多少簡単でいいよ
というふうに分かれています。
簡単なほうがいいな
そこで「簡単なほうがいいな」と思われたあなた。
そうは言っても、いまは会計ソフトが発達しているので、会計ソフトを使っていれば青色申告の水準を満たす記録が結構簡単につくれます。
(会計ソフトというのは、弥生会計や、freee、MFクラウドなどのことですね)
逆に白色申告だとExcelや手書きでもなんとかなりますが、
- 会計ソフトに入れる手間
- Excelに入れる手間、手で書く手間
を考えると正直それほど変わりませんので、後述するメリットを踏まえて大半の方が青色申告を選んでいます。
(税理士事務所に投げている方も多いですね)
税務調査のリスクも変わる
ちなみにですが、同じ業種で同じような規模で事業をしていれば、白色申告のほうが税務調査に入られるリスクは高いです。
なんでかというと、
- 青色申告 … しっかり記録が残っているはずだし、そういう記録を残せる人だという印象を与える
- 白色申告 … しっかりした記録が残せない、ずさんな処理しかできない人だという印象を与える
という違いがあるからです(印象論ですが)
青色申告がおすすめ
個人事業の場合は自分で申告される方も多いですし、税理士がこう言うのもなんですが、毎年税理士に費用を払うぐらいなら自分でできるようになったほうがいい、と私は考えています。
(法人を自分で申告するのは結構難易度が高いです)
なので後述するメリットとこの手間を考えていただいて、可能であれば青色申告をおすすめしています。
まず青色申告になっているか確認しよう!
もうすでに事業を始められている方は、まず自分が青色申告になっているかを確認しましょう。
確定申告の時期に税務署から届いた書類を見ればわかりますが、手っ取り早いのは「青色申告承認申請書」があるかを確認することです。
こんな書類ですね(大きいので一部を切り取っています。個人用です)。
出典:国税庁webサイト
届出が見当たらない?
余談ではありますが、「あー見た覚えはあるけどどこ置いたっけな」というあなた!
届出は年数に関係なく、何年・何十年あとでも見直しが必要になる可能性がありますので、届出はまとめて見やすいところに置いておくことをおすすめします!
青色申告の大きなメリット6つ
法人は青色申告のメリットを3つ挙げましたが、個人は増えて6つ、またしても独断で効果の大きいメリットをまとめていきます。
最大65万円の控除を受けられる
最大65万円の控除を受けることができます。
これを「青色申告特別控除(あおいろしんこくとくべつこうじょ)」といいます。
しかしこの「控除(こうじょ)」ってどういう意味でしょう?
これをパワフルにざっくり言うと65万円分経費を増やせる、というとわかりやすいかもしれません。
つまり、
- 今年は売上が500万円でした
- 経費は全部で400万円でした
- この500万円から400万円を引いて100万円の利益でした
- じゃあ100万円に税金かけますねー
となるところ、
- 今年は売上が500万円でした
- 経費は全部で400万円でした
- この500万円から400万円を引いて100万円の利益でした
- 本当は100万円だけど、しっかり記録を残してくれたから65万円引いていいよ
- 引いたら利益は35万円に!ここに税金かけますねー
となる、という感じです。
(本当はここから更に足し引きするのですが、ざっくりとした考え方としてはこういうことです)
図解
文字ばっかりだとわかりにくいので簡単な図をつくってみました。
白色申告さんはこのようになります。
青色申告さんはこういうことですね。
(実際にはここから更に足し引きしてから税金を計算します)
ただし条件がある
ただしこの65万円の控除を受けるには条件があります。
先ほど、
こんな感じで税務署は「青色申告」と「白色申告」に色を分けていると言いましたが、実はこの青色申告が更に2つに分かれるのです。
貸借対照表をつけて65万円ゲット!
この「10万円」と「65万円」の違いはなんなのか。
65万円にするための条件として、検索すると「複式簿記にすること」とか「帳簿書類を備え付けること」とか出てくるんですが、ひどいくらいにざっくり言うと、
- 会計ソフトで記録すること
- 貸借対照表をつけること
というのが具体的に必要な作業です。
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)というのは、
- 現金や預金
- 売掛金
- 固定資産(小学生でもわかるとうれしい減価償却費入門!参照)
- 買掛金
- 借入金(誰かからの借金)
などをそれぞれ分けて管理して、「青色申告決算書の4ページ」にあるこれをつけるということです。
この貸借対照表も、考え方を知って処理をしておけば、たいていの会計ソフトは連動して出してくれます。
これをつけることで65万円の控除を受けられるようになりますので、可能な方はぜひ挑戦してみましょう。
家族への給与を経費にすることができる
次のメリットです。
特にフリーランスのような事業をされている方は、
- 奥さんに経理や事務作業をしてもらっている
- 家族に仕事を手伝ってもらった
というようなケースがよくあります。
白色申告だと一定の金額(※)までしか経費にならないのですが、青色申告は自分で金額を決めて支払うことができるのが大きなメリットです。
税金というのは基本的に分散させることによって安くなりますので、こうすることでうまく散らすことができるのですね。
注意点
ただし全額が無条件に経費になるわけではありません。
「赤の他人を雇ってもこれぐらいのお金はかかるよね」という金額がだいたいの基準になりますのでご注意を。
そして税務署に届出を出しておく必要もありますので、これもご注意を!
(国税庁webサイト:青色事業専従者給与に関する届出手続)
(※)白色申告の一定の金額
- 配偶者(奥さんやご主人) ⇒ 86万円
- そのほかの親族 ⇒ 50万円
家賃などを按分して経費にすることができる
これもフリーランスの方だと、自宅で仕事をしていることがよくあります。
この場合、仕事をしている分は経費にすることができるのです。
経費にできるのは家賃だけ?
しかもこれは家賃だけではありません。
つまり仕事で実際に使っているものなら経費になる、ということなのですが、例を挙げると、
- 家賃
- 光熱費
- 電話代
- インターネット代
- パソコン代
- 車の購入代
- ガソリン代
などなどいろいろなものが該当します。
仕事をしている分ってどういうこと?実際にいくら?
ただ先ほども書いたように、経費にできるのはあくまで仕事で使っている分だけです。
「じゃあどうやって分けるの?」
と言われるとこれがなかなかややこしく、これだけで1記事書けそうなので詳しくは今度に回しますが、よくあるのが、
- 家賃だと面積で按分
- 電話代なら使っている時間の割合で按分
- 車なら実際に使った量(走行距離)で按分
と言ったように「実際の状況を考慮」して、「あとで説明ができる」ような理屈っぽい分け方をする必要があります。
状況にもよりますが、まあ全額はなかなか難しいよ、ということです。
赤字を3年繰り越せる
以降のメリットは法人とほとんど共通です。
法人より期間が短いですが、個人事業も赤字を3年繰り越すことができます。
白色申告は赤字を繰り越せません(切り捨てられてしまいます)ので、この違いはとてつもなく大きいです。
青色申告の場合
具体的にどう違うのかを見ていきましょう。
赤字を繰り越せるというのは、つまり来年以降利益が出たときに相殺できるということ。
利益と相殺できるということは、余計な税金が発生しないということ。
たとえば、「去年100万円の赤字を出したけど、今年は100万円の利益を出せた人」が2人いたとしましょう。
青色申告さんはこの100万円同士をぶつけることができます。
つまり青色申告さんには今年税金が発生しません。
白色申告の場合
つぎに白色申告さんを見てみましょう。
白色申告さんも同じように「去年100万円の赤字を出したけど、今年は100万円の利益を出した」という結果になりました。
あらららら…………
白色申告さんは去年の赤字と相殺ができなかったので、今年の利益に税金がかかってしまいました。
これが赤字を繰り越せるということのメリットです。
30万円未満の固定資産を一度に費用にできる
『固定資産を買うときの節税』の記事で「30万円未満は一度に費用にできるよ」とご紹介しましたが、これ、実は青色申告の特典の一つなんです。
もし白色申告の場合は、この金額が10万円未満に下がってしまいます。
白色申告さんがもしパソコンを買おうとしたらどうなるでしょう?
一気に費用にしたいなら10万円未満のものから選ばなければなりません。
30万円ならかなり選択肢が広がりますよね?
この10万円か30万円かはかなり大きな違いなのです。
税額控除や特別償却を受けられる
これは今後まとめるつもりなのですが、青色申告だけが受けられる税金が安くなる制度(税額控除や特別償却)があります。
(一部『税額控除と特別償却の違い - どちらが有利なのか』に書きました)
かなり政策的なものなのですが、政府は少しでも景気をよくしたいので、
- 一定の固定資産を買った事業主
- 従業員の雇用を増やしたり給料を増やしたりした事業主
などにこういった特典を用意して「景気回復に協力してね」と言っているのですね。
該当したときの影響はかなり大きいのですが、ただ該当するのもそれなりの規模の事業になります。
事業が大きくなってくると法人にしたほうが有利になることもあって、実際のところ個人事業ではあまり見かけません(^_^;)
青色申告のメリットをまとめると
長くなってしまったので青色申告のメリットを一旦まとめると、
- 最大65万円の控除を受けられる
- 家族への給与を経費にすることができる
- 家賃などを按分して経費にすることができる
- 赤字を3年繰り越せる
- 30万円未満の固定資産を一度に費用にできる
- 税額控除や特別償却を受けられる
といったことがメリットですね。
合わせるとかなりのインパクトになりますので、多少の手間を惜しんでこのメリットを利用しないのは非常にもったいない、というのが私の考えです。
まとめ
というわけで、
- 青色申告の概要
- 青色申告と白色申告の違い
-
青色申告の特典・メリット
- 最大65万円の控除を受けられる
- 家族への給与を経費にすることができる
- 家賃などを按分して経費にすることができる
- 赤字を3年繰り越せる
- 30万円未満の固定資産を一度に費用にできる
- 税額控除や特別償却を受けられる
についてまとめました。
法人と個人でメリットに違いがありますので、法人を知りたい方はこちらをご覧ください!
⇒ 『青色申告とは どこよりもざっくりわかりやすく解説!(法人編)』
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