Adobeアドビ Systems(以下、Adobe)が主催の世界最大のクリエイティブティ・カンファレンス「Adobe MAX 2016」。二日目は「スニークス」というAdobeが開発中の実験技術を紹介する講演が行われました。紹介された技術は将来的に搭載されるかもしれない技術であり、未来のCreative Cloudの新機能を一足先に知ることができるイベントです。今年は史上最大級に画期的なテクノロジーが発表されました。

1. 手書きの陰影を使って、3Dオブジェクトを着色するペイント技術

冒頭を飾ったのは未来のペイント技術「Stylit」。マーカー付きの紙にパステルや色鉛筆、水彩などで陰影のついたものを描くと、3Dオブジェクトに着色されます。デモでは、手元の円形を塗ることで、立体の塗り絵を完成させる実演がされました。

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▲円に色を塗り始めると(右)、3Dオブジェクトの恐竜の境界線に色がリアルタイムで反映されていく(左)

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▲円の内部を描くと、3Dオブジェクトの恐竜の胴体が塗られていく

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▲恐竜の陰影と地面に落ちる影まで含めて同期され反映されていく

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▲背景や地面まで塗りが同期される

他の3Dオブジェクトでも同様の効果が得られることを紹介。

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▲全く別の塗りを適用しても、即座に塗りが適用される。クレヨンだけでなく絵の具の塗りも認識して、そのテイストで塗られる

これは静止画だけでなく、動画にも適用が可能。1万人がいる会場で拍手喝采に。

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▲動画でもこのエフェクトがリアルタイムで適用される

Stylitは http://stylit.org から試すことができます。ぜひ皆さんもこの技術の凄さを体験しましょう。

2. サウンド解析で切り替わりを分析、映像編集に役立つ技術

「Syncmaster」は音楽を高・中・低音に分離し、音楽を映像クリップを同期させる技術。音域ごとに分解された「イベント」のポイントを自動的に生成することで、映像クリップの編集をサポートします。

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映像編集のタイムラインでドラッグすると、サウンドイベント(音楽の切り替わりのポイント)にスナップできます。

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音楽のビートにあわせて画面中央のロゴ画像がスケールアニメーションをするデモを紹介。

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動画編集の際、映像が音楽に自動的にシンクロするため、動画編集がしやすくなる画期的な技術です。

3. テーマカラーにあわせて自動的に写真の色調を整える技術

アートディレクションによって選ばれたテーマカラーに写真の色調をあわせる技術。従来のワークフローでは、テーマカラーにあわせ一貫性を持つようにPhotoshopで写真を一枚ずつ補正するのは大変な作業でした。この機能をつかえばボタンひとつで、写真をテーマカラーに合わせ、統一感のあるデザインに仕上げることができます。

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▲自動的にマッチングするカラーを判別

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▲ 写真素材を配置しただけの状態。テーマカラーに統一感がない

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▲ ポスターのテーマカラーにあわせて写真の色調が統一される

4. 滑らかな映像ループを生成する技術

動画が矛盾なくループするように自動的に調整してくれる技術「LoopWelder」。映像素材がループするときに発生する「ガクッ」という始点と終点のずれを滑らかに補正できます。Webコンテンツ、SNS、プロの作品、動画の尺伸ばし等さまざまな場面で使えます。

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▲レコードが回る動画を使って、滑らかにループ可能な映像素材に変換

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▲DJの動画を使って、これも滑らかにループ可能な映像素材に変換

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▲映像クリップのループ可能な箇所を分析

短いクリップ中のループできるポイントをみつけて、2秒の映像クリップを1分の尺を自然に延ばすことも可能。Premiere Proに取り込んで紹介していました。

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▲尺を伸ばした映像クリップをPremiere Proに取り込む

5. レイアウトとキーワードから画像を検索する技術

Photoshopで大きさとキーワードを指定すると、その指定に即した画像が検索される機能「ConceptCanvas」。例えば下図の「person」と書かれている部分に、人物の写真を挿入するケースを想定しましょう。

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Photoshop上で矩形のシェイプを配置するだけ。「レイアウトの画面の左に人物が写った写真」が検索され、マッチした画像がリストアップされます。

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カンプから瞬時に目的のデザインができました。

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画面左側に「Person」という文字と長方形、右側に「Dog」という文字を配置するだけで、このレイアウトに適した画像が検索されます。

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「Water」「Umbrella」「Person」という文字と作成したい構図を長方形でレイアウトすれば、背景に水があり傘を持った人が写った写真が検索されます。会場からはどよめきが起こりました。

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6. ベクターをトレースする新技術

撮影した写真を解析しベクタートレースする技術「InterVector」。デモでは、登壇者の豚のぬいぐるみを撮影し、Illustratorに合成するまでの手順を紹介されました。

まず、豚のぬいぐるみの写真を撮影します。

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取り込まれた画像がベクター化されます。

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必要に応じてディテールを調整することも可能。ベクターデータが出来上がありました。

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作成したベクターデータをIllustratorのポスター画像に合成。ポスター画像のトーンに合わせ、自動的に作成データのトーンも調整されます。

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次のページではペイント技術やVR映像の編集ツールなど画期的な技術を紹介します。