関口一喜 イチ押し週刊誌

スクープがスクープを呼ぶ『週刊文春』の原動力

  • 文 関口一喜
  • 2016年5月25日

写真:スクープの一方でその何倍もの記事にならなかった空振りがあるはず。それを編集長がどこまで我慢できるかが勝負 スクープの一方でその何倍もの記事にならなかった空振りがあるはず。それを編集長がどこまで我慢できるかが勝負

写真:AERA(朝日新聞出版)2016年5月23日号 AERA(朝日新聞出版)2016年5月23日号

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 タレントのベッキーや宮崎謙介・前衆院議員ら、不倫スキャンダル暴露は『週刊文春』の独壇場といった感じだが、記者たちはどのようにしてネタをつかみ“現場”を押さえるのだろう。『AERA』(5月23日号)で<敏腕記者>が手の内を明かしている。

 まず、ベッキーと「ゲスの極み乙女。」川谷絵音(えのん)の“ゲス不倫”の取材エピソード。「昨年秋ごろから噂(うわさ)があり、正月に川谷の出身地・長崎に二人で入ったとの情報で現地入りし、ホテルを割り出した。川谷がチェックアウトして父親の車に乗り込み、数分後にベッキーがタクシーで追い掛け、長崎市内のちゃんぽん屋で合流しました」(A記者)

 二人はベタ張り(一部始終を見張ること)されていることにまったく気付かず、川谷の実家マンションに入った後、缶ビール持参で小高い丘に登り、乾杯しようとした瞬間、取材班に直撃された。「ディズニーランドや都内各所で出没情報はあったけど、ツーショットは一回も押さえられなかった」(A記者)が、これで万事休すである。

 宮崎前議員もまったく無防備だった。「合コンばかりしていた宮崎氏の周辺を調べ始めたら、例の女性が浮上。ヤサ(自宅)を割り、張り込んで2日目に彼女がバスに乗って外出したんです。慌てて飛び乗ると、彼女は電車に乗り換えて品川駅でストッキングや飲み物を買いはじめました」(B記者)

 新幹線を使うとにらんでB記者はカメラマンや応援部隊に緊急連絡して、彼女と一緒に新幹線に乗り込んだ。「ハコ乗り」だ。京都に着くと、その足で「官報に記載してある宮崎氏の自宅に吸い込まれていったので、この時点で勝負アリ」(B記者)

 人も時間もかかる「張り込み」と「尾行」を根気よく続けることで“動かぬ証拠”をつかんだわけだ。が、こうしたスクープの一方でその何倍もの記事にならなかった空振りがあるはずだ。それを編集長がどこまで我慢できるかが勝負で、新谷学編集長はあるところでこう話している。「親しき仲にもスキャンダルで、うちはスキャンダルに記者とカネを集中している」

 スクープを連発すると情報提供、いわゆるタレ込みが増え、それがまたスクープを呼ぶ。この相乗効果が『週刊文春』の原動力となっているのだ。「AKB48などアイドルの警戒ぶりと比べたら、政治家もスポーツ選手も脇が甘いですね」と敏腕記者氏は苦笑する。『週刊文春』の独走はしばらく続きそうである。

PROFILE

関口一喜(せきぐち・かずのぶ)

1950年横浜生まれ。週刊誌、月刊誌の記者をへて76年に創刊直後の「日刊ゲンダイ」入社。政治、経済、社会、実用ページを担当し、経済情報編集部長、社会情報編集部長を担当後、統括編集局次長、編集委員などを歴任し2010年に退社。ラジオ番組のコメンテーターも10年つとめる。現在はネットニュースサイト「J-CAST」シニアエディター。コラムニスト。

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