UNEPが報告書公表
【ブリュッセル八田浩輔】国連環境計画(UNEP)は4日発効した地球温暖化防止の新たな国際枠組み「パリ協定」を巡り、参加国が掲げる温室効果ガスの削減目標を達成した場合でも、今世紀末の地球の平均気温は、産業革命前と比べて2.9~3.4度上昇し、2度未満に抑えるという協定の目標には届かないとの報告書を3日公表した。「2度目標」の達成に向け民間部門や省エネなどの取り組み強化を促している。
パリ協定は、気候変動枠組み条約に加盟する197の国と地域すべてが、それぞれの状況に応じて2030年までの自主的な温室効果ガスの削減目標を策定し、国内対策を実施する。一方で目標達成は義務づけられず、守れなかった場合の罰則もない。
UNEPの報告書によると、参加国が削減目標を守った場合でも、世界全体の温室効果ガス排出量は30年には二酸化炭素換算で540億~560億トンに達すると推計。2度未満に保つには420億トン程度に抑える必要があり、120億~140億トンの追加削減が欠かせないと試算した。10億トンは、中国と米国に次ぐ排出量世界3位の欧州連合(EU)全域での航空を含む運輸部門での年間排出量に相当するという。
7日からは、モロッコのマラケシュで同条約の第22回締約国会議(COP22)が開かれ、パリ協定を実行するための詳細なルールを決める交渉を始める。UNEPのソルヘイム事務局長は「マラケシュでさらなる行動に出なければ、避けられるはずの惨事に悲嘆することになる」と述べ、参加国に削減努力の上積みを求めている。