政局
政治記者100人が本音で答えた「ポスト安倍」そして「小池評」
プロは「この国の行方」をこう見る
週刊現代 プロフィール

リスクは「健康と天皇」

記者の中には、

「安倍総理は現任期中の改憲に向け、'17年中の国会発議が可能なスケジュールで動いている。改憲を実現するために何が最善かを見据えているだけで、'20年まで総理を続けたいとは思っていない」(毎日・30代・男)

「安倍政権への批判が高まる前に安倍総理は政治的影響力を握ったまま、禅譲する形になる」(産経・40代・男)

という見方もあるが、これは少数派。多くは「選挙で勝っているトップ(安倍総理)を替える必要はない」(共同・40代・男)と考えている。

もちろん、安倍総理にも死角がないわけではない。多くの記者や識者が指摘するのが、前回、総理の地位を投げ出したときからくすぶり続ける「健康問題」だ。

「悲願の憲法改正を成すための意欲は否定しないが、超長期政権には疑問符がつく。『時限爆弾』、つまり、持病の潰瘍性大腸炎を抱える安倍総理の心身状態だ。

とくに外交実績が思うように挙げられないことで、ストレスが高じていると聞いている。薬で維持・管理されている心身状態がどこまでもつかに、すべてはかかっている」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)

 

加えて、日本が直面する国際情勢や経済状況という不確定要素もある。

「米国がトランプ政権になった場合は政権が行き詰まるリスクがある。

外務省をはじめ、霞が関も官邸も、日米の同盟関係の見直しにまで言及しているトランプ政権への準備がまったくできていないためだ。日本の外交や安全保障政策が大きく揺さぶられる可能性があり、厳しい政権運営を強いられる。

また、天皇の生前退位問題も大きなリスク要因で、対応を誤れば、世論の反発で内閣支持率が急落して政権が倒れかねない」(毎日・40代・男)

「安保を推進している政権の特徴として、自衛隊員が紛争に巻き込まれて死ぬような不測の事態になると、一気に求心力を失う」(エコノミスト・中原圭介氏)

「今後はアベノミクスの『3本の矢』の成否がカギを握るが、1本目の矢である金融緩和はすでに日銀の黒田東彦総裁が限界を見せ始めている。

このままでは将来のための成長エンジンが見えてこない。構造改革を一気に進めるべきだが、安倍政権は本気で取り組んでいるようには見えず、推進力は乏しい。経済ショックが起これば、たちまち安倍総理は支持を失うことになる。アベノミクスの成否が、政権運営の大きなネックとなるだろう」(嘉悦大学教授・小野展克氏)

先行きは不透明ながらも、前述のとおり、現時点では8割の政治記者が'20年まで続くと考える。では、盤石な安倍政権の後を襲う「ポスト安倍」をどう考えるか。次の総理を担うだけの信頼に足る政治家は誰か。

最も多くの票を集めたのが、岸田文雄氏だった。岸田氏は第二次安倍内閣の発足当初から外相を務め、党内では宏池会の領袖で「ハト派」の政治家と目される。

「自民党の右派の総理の後は、左派の総理に揺り戻しがある。右派の安倍の後は、左派の岸田になる。安倍の祖父の岸信介の後に池田勇人が首相になったのと同じ」(産経・50代・男)

「オバマ米大統領を広島来訪へ導くために尽力したのは評価できる」(フジ・40代・男)

「宏池会の地盤を持っている上、外交の功績が積み上がれば、自民党内で求心力が増していくのではないか。これまでも目立った失政がなく、安定感がある。日米安保や日ロ会談などを着実に進めている。北方領土問題が進展すれば、評価は一気に高まるだろう」(共同・30代・男)

ただ、岸田氏には「器が小さく、つまらない」(朝日・50代・男)、「安倍首相からの禅譲狙いが見え見えな上、度胸もビジョンも持ち合わせていない、真面目なだけの政治家」(毎日・40代・男)といった厳しい意見も少なくない。

そういった意見を持つプロたちは、石破茂氏や小池百合子氏らを「ポスト安倍」に挙げる。