東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 言わねばならないこと > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【言わねばならないこと】

(80)憲法と国民 守り合う 児童文学作家・さとうまきこさん

写真

 私の父、佐藤功(いさお)(故人)は憲法学者。戦争から復員後、政府の憲法問題調査委員会の補助員や内閣法制局参事官を務め、日本国憲法の制定作業を支えた。その父が一九五五年、子ども向けに書いた著書「憲法と君たち」が、憲法公布から七十年の今年復刊された。旧憲法下で戦争になったのと同じことが繰り返されるのではないかという、父の強い危機感が表れている。

 五五年は、改憲を党是とする自民党が保守合同で生まれ、「憲法は連合国軍総司令部(GHQ)の押しつけ」といって懐古的な改憲を目指す動きが強まった時代。安倍政権が改憲へとひた走る、今の状況と重なる。父は「いずれこういう日がまた来る」と予期していたかのようだ。

 私も二十五歳で児童文学作家として歩み始めて以来、平和を訴えてきた。初の作品は、ベトナム戦争の脱走兵と少女との交流を描いた物語。八〇年代ごろからは、いじめ問題を取り上げた。いじめは、憲法の根幹である多様性を認めない社会になっていることが根本的な原因。私の立ち位置は、そういうところにある。

 他国を武力で守れるようにする安全保障関連法の審議・採決を強行する安倍政権に危機感を抱き、昨年、国会前デモや集会に親子で出向いた。孫が二人いるが、彼らが成長したとき、どんな日本になっているか。

 著書で父が最も力を入れて訴えているのは「憲法が君たちを守る。君たちが憲法を守る」。憲法を守らなければならないはずの国会議員や大臣が憲法を破ろうとするとき、憲法を守るために投票へ行ってほしいということだ。

 次の衆院選も改憲か護憲かが争点になる。若い人や子どもを持つ親、孫がいる大人は「憲法と君たち」を読んでほしい。そしてぜひ投票に行ってほしい。

 <さとうまきこ> 本名は水科牧子。1947年生まれ。憲法学者・故佐藤功氏の長女。デビュー作「絵にかくとへんな家」で73年、日本児童文学者協会新人賞。近著に、不登校をテーマにした「千の種のわたしへ−不思議な訪問者」など。

 

この記事を印刷する

PR情報