2%の物価上昇目標の達成時期を「2018年度ごろ」に先送りした日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁。18年4月の任期内の実現を事実上断念したことになり、「ポスト黒田」をめぐる観測もにぎやかになってきた。
「わが国の経済成長率と物価の先行きがどうなるかということと、私の任期の間に特別な関係はない」。1日の記者会見で、任期内での目標達成を断念する責任を問われた黒田総裁はこう言い切った。自身の再任の可能性については「国会の同意を得て内閣が決めること」と言及を避けた。
次期日銀総裁人事をめぐっては、自民党の総裁任期延長で2021年まで安倍晋三政権が続く可能性があり、首相の意向が大きく影響するとみられる。
最近の日銀総裁は原則として5年の任期で交代してきたが、初期のアベノミクスに貢献した黒田氏については、再任が決定的との見方もあった。
ただ、ここにきて、「消費増税の必要性を強く訴え、追加緩和に消極的になった黒田氏と首相の間には距離も開いている」(市場関係者)との声も出てきたのだ。
ポスト黒田として急浮上しているのが、元内閣官房参与でスイス大使の本田悦朗氏だ。「追加緩和に積極的なうえ、欧州金融経済担当特命大使を兼務しているのも総裁の布石では」(同)との指摘ももっともらしいが…。