関東のゴミ高校に在学している僕の同級生が次々に童貞学校を卒業していく。
童貞を卒業できずに留年した僕は、彼らの後姿を厭世的な気持ちで眺めていた。
教室でクラスメイトのチャラい容姿良男が友達とエロトークをしているのを聞いていた。
「童貞って何?」彼の友人が言った。
「え!? 知らねーの?」
「知らないw」
「へー」
彼らの話を聞いた僕は家に帰ると自分の部屋に直行し、携帯で「童貞」と検索した。
そして知ってしまった。
童貞は恥ずかしいこと。
中高生と合法的にセックスできるのは中高生のうちだけだということ
二十歳すぎて童貞を卒業しても性春を楽しめなかった虚しさだけが残るということ
風俗で童貞を捨てた人は「素人童貞」といってダサい人だということ。
そういう情報を知ってから、童貞である自分がすごく恥ずかしいと思った。
それからというもの、童貞特有の劣等感に苛まれる日々が続き、気が付いたら街ですれ違う人を見て、「この人は童貞じゃないんだろうな。あ、この人は童貞っぽい!」と、童貞か否かを推測する癖がついていた。
ネットで調べて、童貞を卒業するには素人女子とセックスをする必要があって、セックスをするには恋愛関係に持ち込むのがいいと知った。
鏡を見る。お世辞にもイケメンとは言えない顔面に加え、アトピーゾンビウイルスに侵されたガサガサで赤い顔と体が写っていた。
恋人どころか友達すらまともにできたことのないアトピーゾンビの童貞卒業は、クジラが海で溺死するくらい難しいことだろうなと思った。
それでも僕は戦った。
処女学院の女子生徒に性的魅力をアピールして童貞学校を卒業するために奔走した。
運動部のレギュラー争いを勝ち抜き、勉強を頑張って学年上位の成績を手に入れた。だが、容姿が悪いためモテなかった。
モテないのはスクールカーストの底辺にいるからだと思い、スクールカースト上位グループに話しかけて仲間に入れてもらおうとした。
「え?何こいつきもいんだけど。誰?」話しかけたとき、そんな顔をされた。
修学旅行で学年トップレベルの顔面偏差値の高い女が顔面偏差値の高い男に告白して付き合うことになったのを知って泣きそうになった。
バレンタインデーに淡い期待をしていたけど一つもチョコをもらえなかった。
自分と同じ、スクールカーストの底辺にいた奴がダイエットやワックスで容姿が良くなり女の子にもてはじめ、童貞を卒業したという話を聞いたときは胸がきゅーっと苦しくなった。
その後、アトピーゾンビウイルスが暴走をはじめて、ただでさえ醜い容姿がさらに醜くなったり、痒みが酷くなったりして童貞がどうとか考える余裕がなくなった。
「今年も童貞学校を卒業できなかった……」と敗北感と恥ずかしさと劣等感を感じていた。
同時に、処女学院の生徒とセックスをして童貞学校を卒業した容姿に優れた同級生をみて嫉妬にくるっていた。
今この瞬間にも、処女学院の顔面偏差値の高い女の子が次々に寝取られていく。
僕が好きだった清純系女子も容姿の優れた運動部の男に寝取られた。
二度と戻らない性春という時間が少しずつ削られていく。
中高六年間。この間の楽しい思い出が脳の九十九パーを占めるのだ。
アトピーゾンビはこれからの人生で灰色の青春という重たいバッグを抱えて生きていかなければならない。
皆、充実した表情をしている。
今までの人生もうまくやってきたのだろう。