舞台「三婆」 初共演のベテラン女優3人に聞く

舞台「三婆」 初共演のベテラン女優3人に聞く
大竹しのぶさん、渡辺えりさん、キムラ緑子さん。3人のベテラン俳優が、1日からの舞台で初めて共演しています。作品のタイトルは、『三婆(さんばば)』。60代から80代までのおばあさん役を演じています。どんな舞台にしようとしているのか、廣田アナウンサーが、3人一緒にお話を伺いました。
(廣田アナ)「最初、おばあさん役をやるときに、どんなふうに思われたのでしょうか」

(キムラ緑子さん・55歳)「おばあさんか、もうそういう年になっちゃったんだなあって思いました」

(渡辺えりさん・61歳)「私は、小学校の学芸会から、もうおばあさん役ばっかりやってた人間なんですよ。初めて実年齢で、60歳で、おばあさん役をやるっていう、なんて言うか、もうなんとも言えない複雑な気持ちで」

(大竹しのぶさん・59歳)「自分ではそれほど年を取っている感じはなかったので、でも戯曲のその年齢だと自分とさほど変わらないことに、まずびっくりしました」

魅力は3人のぶつかり合い

原作は、ベストセラー作家・有吉佐和子さん。昭和36年に発表し、老いを、いちはやく社会問題として描きました。物語の舞台は、昭和38年の東京です。大竹しのぶさん演じる松子の夫が、急死したところから始まります。

夫の葬儀のあと、義理の妹のタキが、突然引っ越してきます。ずっと独り身を通し、風変わりな性格のタキを、渡辺えりさんが演じます。さらに、夫の愛人だった元芸者の駒代までもが松子の家に転がり込んできます。キムラ緑子さんが演じます。

60歳を越えた女性3人の、突然の同居生活。ぶつかりあいながらも、いつしか奇妙な絆が生まれていきます。プライベートでも仲の良い3人の強烈なぶつかり合いが、舞台『三婆』の大きな魅力です。
 
(キムラ緑子さん)「稽古場でいちばん最初に顔合わせがあったときに、えりさんが、髪を白髪にしたほうがいいかなって言ったら、そのままでたぶんいいと思いますよって、私が答えたんですけど。すごく老け役をやらなきゃいけないって、みんな、私も含め思ってるんですけど、ほとんど今の年齢なんですよね。そこがちょっとびっくりしましたよね」

(大竹しのぶさん)「このおふたりに翻弄されているところから、自分が変化していくところをうまく出して。老いとか高齢社会というものが、すごく笑いの裏に隠されている作品だなっていうことを思います」
 
(廣田アナ)「見終わったあとにちょっと、笑っただけじゃ終わらない感じがしますね」

(大竹しのぶさん)「そうですね、だから笑いながらも、ちょっと切ないというか、あっ、でも自分は楽しく生きようっていうふうに思ってもらえれば、いいなあとは思います」

(渡辺えりさん)「3人の同性である女性の、友情の部分が立ってくる話だというふうに私は解釈をしていて。この世代の私たちの励みにもなるし、お客さんたちの励みにもなるんじゃないかなっていうふうに思っています」
 

老いを考える機会に

おばあさんを演じる大竹さん、渡辺さん、キムラさん。稽古を重ねるうち、みずからの老いについても、考えることが多くなったと言います。
 
(キムラ緑子さん)「自分は最期どういうふうに老後を迎えて、このあとおさらばするのかなって、考えることはあります。誰かがそばに、ひとりでもいいから間際にいてくれればいいな、だけです」。

(渡辺えりさん)「子どもがいないので、誰かにみとられるっていうことはないんだろうな、と。それは覚悟しなくちゃいけないなあと思って」

(大竹しのぶさん)「母を見ているので、老いを受け入れなくちゃいけないこととか、その周りの家族も含めて、そうやって年を取っていくんだろうなというのはわかりますけど。子どもは、私はいますけれども、私のそばにはいなくてもいいだろう、ぐらいの覚悟で。ひとりでも、しっかり生きていけるような自分になりたいなって思います」
 

90歳になっても共演を

(廣田アナ)「もしお三方が一緒に暮らすとしたらどうですか?」

(渡辺えりさん)「芝居とかやってるかもしれないよね、もしそうなったら」

(キムラ緑子さん)「そんなすてきなこと、ねえ。なんか、またお芝居があって、そこで90歳ぐらいで一緒に共演とかできたら最高ですね。それこそ三婆をやるんですよ、再演」

(渡辺えりさん)「3人が90歳になってから三婆をやったほうが、感動的な舞台になる可能性は大きいですよねえ」

(大竹しのぶさん)「そんな、これから見に来て下さる人が…」

(廣田アナ)
「あと30年待って下さいと言うわけにはいかないですもんね」
 
お話を伺って、何より3人のパワフルさに圧倒されました。舞台「三婆」は、今月27日まで、東京の新橋演舞場で上演されます。