ソフトバンクグループが設立を表明している1000億ドル(約10兆円)規模の投資ファンドに、アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンドが出資する方向であることが、関係者の話でわかった。すでにサウジアラビアが出資を表明。カタールやシンガポールの政府系ファンドも出資を検討している模様で、世界規模のITグループを目指し巨額買収を繰り広げるソフトバンクに、新興国のマネーが大きな期待を寄せていることが浮き彫りになった。
新ファンドには、今後5年間でソフトバンクが少なくとも250億ドル、サウジの政府系ファンド「公共投資ファンド(PIF)」が450億ドルを出資する予定。主に人工知能(AI)などの先端技術を開発する世界各国の企業に投資を行う。ソフトバンクは1000億ドル規模のファンドを目指しており、残る300億ドルについて「複数のグローバルな大手投資家たちと協議中」としていた。
サウジに続いて出資の意向が明らかになったのは、UAEの構成首長国の一つであるアブダビの政府系ファンド「アブダビ投資庁」で、石油収入を原資に世界で投資を行っている。関係者によると、サウジによる出資の働きかけに応じたという。このほか、シンガポールの政府投資公社(GIC)と、カタール投資庁が出資を検討しており、さらに複数の中東の政府系ファンドも関心を示している模様だ。
中東諸国は原油価格の下落で財政の悪化などに苦しんでおり、石油依存からの脱却を目指して大きな見返りが期待できる有望な投資先を探している。ソフトバンクはこれまでに米IT大手ヤフーや中国のIT大手アリババ集団への投資で巨額の株式売却益を稼ぎ出し、英半導体開発大手アームなどの巨額買収で世界の注目を集めている。
AIなどの先端技術を巡る国際競争が激化する中、投資が失敗に終わるリスクはあるものの、邦銀関係者は「ソフトバンクの過去の実績を考えれば、どの政府系ファンドも乗りたいと考えるはずだ」と話している。【安藤大介】