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辻内崇伸、ドラフト1位の肖像#5――「戦力外通告にほっとした。野球人生に悔いなし」

ベースボールチャンネル 11/1(火) 11:00配信

肩が治るんだったら……

 現在、辻内は日本女子プロ野球機構所属の『レイア』のコーチを務めている。未だに肩の痛みがあり、軟球でさえ投げられない。草野球に誘われるときは、投げる機会の少ない1塁手が定位置である。

「この肩が治るんやったら、ホンマ、何でもしますよ。肩が治ったら、まだ投げられるんちゃうかなと、たまに思ったりします。ある日、朝起きて痛みが消えていたら、一番最高。泣いてまうでしょうね」

 最後に辻内にこう尋ねた。

 もう1回、人生をやり直すことができれば、ドラフト1位で指名されたいですか、と。
 彼は「どうですかね」と首を傾けた。

「違う人生を歩みたいという気持ちはあります。小学校とかに戻るんやったら、野球はやらない。もうちょっと格好いい、サッカーとかテニスとかやりたいですね。大阪桐蔭のあんなしんどい練習は二度とやりたくないですから。あれは地獄でした。でも、あの練習でプロになれた。それは感謝してます。ぼくの人生で自分の思ったような速球を投げられたのは、3、4年ぐらい。それで野球人生を終えたことは後悔はしていないです」

 そう言うと、日に焼けた顔をほころばせて、にっこりと笑った。

(連載終わり)

【プロフィール】
辻内崇伸(つじうち・たかのぶ)

大阪桐蔭高校3年時、夏の甲子園1回戦の春日部共栄戦で152km/hをマーク。一気に注目を浴びる。2回戦の藤代戦では当時の大会タイ記録となる19奪三振を記録。同校をベスト4へ導く原動力に。05年の高校生ドラフト会議では読売ジャイアンツとオリックス・バファローズとの競合の末巨人が指名権を獲得し、1巡目指名で入団。しかし、プロ入団後は度重なる故障に悩まされ、結局06年から引退する13年まで一軍公式戦出場はなかった。引退後、2014年より日本女子プロ野球機構(JWBL)の埼玉アストライアのコーチ、2016年からはレイアのコーチを務める。


田崎健太

ベースボールチャンネル編集部

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最終更新:11/1(火) 11:00

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