JR東海の柘植康英社長と阿部守一知事、施工するJV代表の鹿島建設の茅野正恭副社長は起工式後に取材に応じた。阿部知事は、リニア計画に対してトップ会談で意見交換する定期的な場の設定を柘植社長に求めたことを明かし、同社長は「緊密な関係で話し合いをすることはプロジェクトを進める上でも大きな意義がある。有意義な場にしたい」と応じる姿勢を示した。主なやりとりは次の通り。
―起工式を終えて
阿部守一長野県知事「地域の中にはリニアに期待する声も多くあるが、反面、さまざまな課題に不安を抱える住民もいる。JR東海には真摯に耳を傾けてほしい。工事の安全に万全を期すとともに、将来に向けて大鹿村、飯田下伊那地域がさらに発展するようJRにも協力してほしい。引き続き地域の声をしっかり承り、リニア関連道路の整備や地域の振興について、地域と一緒に取り組む」
柘植康英JR東海社長「まずは感謝したい。県道59号(松川インター大鹿線)で大鹿村に入り、知事や市町村長とあいさつをしながら、身の引き締まる思いを感じた。特に安全面が最優先。地元と確認書も結んだが、生活面、環境への影響があるので、極力抑えながら進める。これまでも膝詰めで地元と話をさせていただいたが、これからがスタート。地元のさまざまな意見に耳を傾け、説明すべき点は説明し、地元とさらに緊密な関係を持ちながら工事を進めたい」
茅野正恭鹿島建設副社長「技術的には大変難しい工事で、これまで培った技術と、地元の理解なくして工事はできない。JR東海の指導をいただきながら無事故、無災害で進める」
―長野県にとって大きな節目となった
阿部「県の将来の発展にとって大きな一歩。リニアの活用をしっかり進める決意を新たにした。反面、地域には懸念を持つ人がいるのも事実。寄り添いながら、JRと連携して対応する。
前段に柘植社長と話し、定期的に話し合いをすることを提案し、快く受け止めていただいた。課題をしっかり共有しながら、地域がより発展し、大勢の皆さんに理解、協力してもらえるよう取り組みたい」
柘植「首都圏、中京圏、関西圏と長野の距離を短くし、それによって観光、ヒトモノカネを誘致し、この地域の振興に貢献できるのが遠くに見える夢だが、今は10年余の非常に大きな工事が始まったばかり。足元をしっかり固め、工事を着実に安全に進めることが何より大事だと思っている。
知事から定期的に意見交換の場を持ちたいとの提案があった。計画を進める中で地元にも色々な影響があり、私たちが十分に説明すべき点もある。場を設け、緊密な関係で話し合いができることはありがたく、プロジェクトを進める上でも大きな意義がある。有意義な場にしたい」
―沿線には工事に反対する声や不安の声がある。どう答えていくか
柘植「きょうで終わったわけではなく、新たなスタート。意見を引き続き誠心誠意聞き、対応することが今まで以上に大事だと思う」
―南アは難工事が予想される
柘植「中央新幹線の工事は品川と名古屋駅の直下と南ア25キロの工事が難工事とされる。南アの土被りはこれまで国内最高の1300メートルよりさらに100メートル高い。非常に難しいが、JVには経験と知見がある。JRの技術陣と一体化して乗り切る」
―トンネル発生土の運搬先は今後どのように決まるか
柘植「当面仮置きし、その後どのようにするかはまだ決まっていない」
―松川町の候補地の下流域では反対の声もあるが
柘植「県とも相談して総合的に判断する」
―新駅のイメージは
阿部「周辺地域や関係市町村の思いを具現化し、地元と一緒に構想を立てて具体化する。長野県は南北に長く、南は総体的に交通が不便な地域だったが、リニアが開通した暁にはメリットが伊那谷や県全体に広がるよう道路整備などを行い、ネットワークの一つの核になるよう取り組む」