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[FT]中国の買収、ドイツ「待った」
投資の流れ一方向 欧州の不快感映す

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2016/10/30 3:30
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 だが、買収する場合、中国企業はドイツや米国の対象企業から取得できる高度技術に対し、市場価格を大幅に上回るプレミアムを相手企業に払うことになる。過去には、例えば独シーメンスや川崎重工業、仏アルストムは、中国の高速鉄道網の契約を勝ち取るために中国企業と合弁会社を設立し、企業秘密を共有しなければならなかっただけに、それよりは魅力的なアプローチといえるだろう。

 急速に技術力をつけ成長したいという中国の野心が問題なわけでもない。中国としては、軽工業がバングラデシュなど賃金の低い国々へ移っていく中で、手をこまぬいているわけにはいかない。中国がロボットや先進的な工作機械などの専門技術を取得したからといって、欧米の安全保障が損なわれるわけでもない。

 欧米がいら立つのは、投資の流れが圧倒的に一方向になってきているためだ。中国は経済力をつけ01年に世界貿易機関(WTO)へ加盟したことで、世界最大の製品輸出国となり、貿易の不均衡が拡大した。ドイツをはじめ先進諸国は従来、M&A(合併・買収)における不均衡を心配する必要などなかったが、もはやそうはいかない。

■門戸開放など中国は行動を

 中国のWTO加盟を認めたのは、グローバル企業の中国市場へのアクセスをしやすくするためであり、自動車生産など一部の産業では実際、海外からの投資が実現した。ところが、中国は海外企業による医療や物流、通信などの産業への投資を過剰なまでに制限している。中国不動産大手の中国泛海控股集団は23日、米保険大手ジェンワース・ファイナンシャルを約27億ドルで買収することで問題なく合意したと発表したが、中国での海外保険会社の市場シェアはまだ微々たるものにすぎない。

 中国が自国企業への外資の投資を制限したのは過去においては正当な理由があった。外資が大量に流入することで自国の産業がつぶされるのを防ぐためだ。しかし、中国経済はこの15年間に急成長を遂げたが、自由化はさして進まなかった。国の規制が緩和されても、省政府や地方の役人は様々な形で国内企業を優遇し続けている。

 中国企業による買収攻勢になすすべがないドイツは窮地に立たされている。EUには、海外企業による慎重な判断を必要とする買収を審査する米国の対米外国投資委員会(CFIUS)のような機関がない。EUは中国に対し、欧州企業が容易に参入できるよう強く求めているが、不均衡は中国にとってはむしろ好都合で、中国政府との交渉は一筋縄ではいかない。

 だが、中国にとって虫のいい状況が続くはずがない。中国が規制を緩和するか、欧米が規制を強化するかのいずれかだ。このままでは欧米は規制を強化し、中国企業による買収は認められなくなるだろう。そうなれば、全員が不幸になる。

By John Gapper

(2016年10月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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