「二度としないでください」といじめの被害を訴える遺書を残し、八月に自殺した青森市立中学二年の葛西りまさん(13)。ネットの世界では今や、加害者グループとして十五人ほどの生徒たちの実名や写真、親の職業などの個人情報が拡散され、攻撃されている。
青森県黒石市で行われた夏祭りの写真コンテストで、笑顔で踊るりまさんを捉えた作品への市長賞授与の決定がいったん取り消された騒動も、情報流出を加速させたらしい。義憤に駆られた周辺人物の仕業なのか。
りまさんの自殺とは無関係の校内アンケートの報道を引き、暴行、恐喝、万引や自殺の練習の強要までしていたと誤信させる書き込みも目につく。いじめても処罰されず、十四歳未満の犯罪なら刑事責任も問われない。そんな世の中への不満が背景に読み取れる。
社会的制裁を科したいという気持ちも分かるが、日本は法治国家。真実であれ、虚偽であれ、ネットに個人情報を勝手にさらす“ネット私刑”は、名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害にも当たりうる。情報の削除は難しく、加害者の立ち直りの機会も奪いかねない。
遺族は「いじめの抑止につながって」と願い、娘の実名と写真を公開した。仕返しを望んでのことでは決してない。ネットでの加害者バッシングは集団いじめそのもの。遺族の思いを踏みにじる行為だ。もうこれ以上、りまさんを悲しませるのはよそう。 (大西隆)
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