前回のおさらいはこちら
第31話のナレーションとあらすじ
国家は社会的不公平を放置していたずらに軍備を増強し、
その力を内に対しては国民の弾圧、
外に対しては侵略と言う形で乱用する時、
その国は滅亡への途上にある。
これは歴史上、証明可能な事実である。
加えて現在のわれわれには帝国に進攻するだけの力はない。
純粋に軍事的見地からしても、
アムリッツァでの大敗と昨年の内乱により、
著しい戦力の低下が見られるが、それだけではない。
国家の経済・生産力・人的資源すべてが払底している。
イゼルローン要塞の存在によって、
かろうじて国防が可能な実情にある。
われわれがなずべきは、ローエングラム体制との共存である。
ゴールデンバウム体制は民主的に成立した政権が、
最も非民主的な政治を行った例である。
ローエングラム体制は非民主的に成立した政権が、
優れて民主的な政治を行いつつある例である。
これは民衆による政治ではないものの、
現在のところより民衆のための政治ではある。
それを認めた時、ローエングラム体制との共存は、
可能なばかりではなく必然となるであろう-。
(ヤン・ウェンリーのモノローグ)
査問会はヤンの経歴の確認から始められた。
ヤン・ウェンリーは宇宙暦767年に、
交易商人ヤン・タイロンの一子として生まれた。
5歳の時に母親と死別。
以来、父に連れられて恒星間商船の中で成長した。
16歳の時、進学して歴史を勉強することを認めてもらった直後に、
父親が事故死。
父親の唯一の遺産であった古美術品が、
ほとんど贋作であったことが判明して、ほぼ無一文の状態となる。
やむなく無料で歴史が学べる、
同盟軍士官学校歴史研究学科に入学。
2年の時に学科が廃止されたために戦略研究科に転科。
(自由惑星同盟査問会での経歴紹介)
ヤンと副官のフレデリカは、護衛役のルイ・マシェンゴを伴い、
自由惑星同盟の首都星ハイネセンに到着した。
フレデリカは統合作戦本部長のグブルスリーと、
宇宙艦隊司令長官のビュコックに連絡したほうがいいと言うが、
ヤンはまずいのではないかと答えた。
出迎えにベイ准将が来たが、
彼はヤンだけを車に乗せて、フレデリカらの同行を拒否する。
ヤンは政府関係の施設に行くが、
そこの部屋の窓には鉄格子がはめられており、
事実上の軟禁状態になってしまった。
政府による査問会は一時間後だという。
査問会の議長は国防委員長のネグロポンティで、
国立中央自治大学の学長であるオリベイラや、
人的資源委員長を務めたホアン・ルイが質問者として参加していた。
ヤンの経歴紹介からはじまった査問会だが、
法的拘束力はないものの、一般には非公開であった。
ネグロポンティは「アルテミスの首飾り」を破壊した理由を問うが、
ヤンは無駄な犠牲を出したくなかったことと、
早めにクーデターを収束しなければ、
帝国のラインハルトに攻められていたと答えた。
さらに第十一艦隊とドーリア星域で戦った際の発言について、
ネグロポンティは不見識だと糾弾するが、
ヤンは「人あってこその国だ」と持論を展開する。
そんななか。
フレデリカらはベイの居場所を突き止め、
ヤンとの面会を要求するものの、かたくなに断られてしまう。
さらに査問会は政府による個人的なリンチであると言い、
報道機関に告発も辞さない構えを見せるが、
ベイは国家機密保護法を持ち出して脅しをかけた。
フレデリカは必死で食い下がるものの、
ベイが強硬な姿勢を崩さなかったため、
ビュコックに会って事態を打開しようと試みる。
ベイはその様子をトリューニヒトに報告した。
フレデリカが目的地に向かうと面会時間が過ぎていたことと、
アポイントがなかったために門前払いされそうになるが、
亡き父の知り合いという兵士がビュコックの居場所を教えた。
ところが、彼はトリューニヒトの息のかかった者で、
案内された場所には憂国騎士団が待ち構えていた。
危ういところだったが、
ビュコックの副官のファイフェルが駆けつけ、
フレデリカはビュコックに面会することができた。
ビュコックは救国軍事会議のクーデター以降、
同盟の軍部が弱体化したことを語り、
協力してヤンを助け出すことを約束する。
だが、イゼルローン回廊では大きな異変が起きていた-。
第31話の台詞
ヤン「この番組のスポンサー、どういう会社か知ってるかい?」
フレデリカ「フェザーン資本の総合食品メーカーですが、何か?」
ヤン「いや・・・内容が内容なんでね。帝国の旧体制派が、
政治宣伝のために流しているんじゃないかと思ったんだが・・・」
フレデリカ「まさか・・・そうとも取れる内容ですわね」
ヤン「いいよ、大尉。自分でもずいぶん、
突飛なことを言っていると思ってるんだ。ただ・・・」
フレデリカ「ただ?」
ヤン「フェザーンというところが、かえってひっかかってね」
フレデリカ「・・・と、言いますと?」
ヤン「同盟とローエングラム体制下の帝国とは、
共存できるはずなんだ。おかしな教条主義や、
原理主義に陥らない限りはね」
フレデリカ「はい」
ヤン「ところが、そうなると困るのはフェザーンだ。
もし、同盟と帝国の間に修好関係が成立してしまえば、
彼らの地の利も意味を失くす」
フレデリカ「それでは、フェザーンはあくまで同盟と、
ローエングラム体制との決裂を望むだろうと?」
ヤン「さらにローエングラム体制、
遠からず現実のものとなるであろう新帝国によって、
宇宙を統一させるのに協力するかも知れない。
経済的側面から統一国家の出現が望まれるのは、
往々にしてあることだからね」
(中略)
ヤン「(モノローグ)やむを得ず入った士官学校だったが、
もし本当に落第していたら、
けっこう歴史が変わっていたかも知れないな。
イゼルローン要塞はいまだ帝国の手中にあるだろうし、
逆にアムリッツァで惨敗することもなかっただろう。
そうなれば、死なずに済んだ兵士たちは何万人だろうか。
だがその場合は、逆に今頃は、
ローエングラム公に同盟が滅ぼされていることだってあり得る。
まったく歴史というやつは・・・」
(中略)
ヤン「お言葉ですが、委員長閣下。
あれは私にとって珍しく見識のある発言だったと思います。
国家の構成要因として個人が存在するのではなく、
主体的な個人が集ってできる社会の、
ひとつの方便として国家がある以上、
どちらが主でどちらが従であるか、民主社会にとっては自明の理でしょう」
国防委員長「自明の理か。私の見解はいささか異なるがね。
人間は社会的生き物だ。誰もひとりでは生きていけない以上、
人間にとって国家は不可欠な価値を持つ」
ヤン「そうでしょうか?人間が生きて行くのに不可欠なものは、
あくまで社会であって何も国家である必要はないでしょう」
委員長「こいつは驚いた。君はかなり過激な無政府主義者らしいな」
違います。私は菜食主義者です。
もっとも、美味しそうな肉料理を見ると、
すぐに戒律を破ってしまいますがね」
委員長「提督!君は当査問会を侮辱する気かね?!」
ヤン「とんでもない。そんな意思は毛頭ありません」
妙香の感想
今回はまず演出に驚きました。
OPの「I am waiting for you」のメロディとともに、
ヤンが現在の同盟の政治状況について淡々と語るんです。
彼は根っからの平和主義者なので、
帝国とは戦争をしたくないんですね。
ラインハルトの開明的な政策を認め、
これと手を携えて共存してゆくというのが、
同盟が生き残る唯一の道だと考えています。
しかし、ラインハルトは戦いに己の存在意義を見出していますし、
亡きキルヒアイスとの誓いもありますから、
ヤンの理想どおりにはならないんですよ。
ラインハルトは目的を果たすまでは、
絶対に戦いをやめない男だと思います。
それにしても、同盟の政治家たちの腹黒さは嫌ですね。
「査問会」などと言いつつ、
質問していることは重箱の隅をつつくようなことばかりで、
個人的ないじめと変わりはありません。
それもそのはずで、
トリューニヒトとフェザーンは地球教を通してつながっていますし、
彼らは自分の利になる行動しかしないからなんですよ。
これでは「民主主義」を掲げる国家が泣きますね。
ヤンを鳥籠に閉じ込めるようなことをすれば、
同盟が危機的な状況になるということが、
まったく理解できていないのは気の毒です。
ただ、ホワン・ルイだけは、話のわかりそうな人物でしたが。
しかし、ヤンが不在というタイミングの悪い時に、
ガイエスブルグが移動して来ましたね。
留守を預かるキャゼルヌやアッテンボローは、
どんな感じで対峙するのでしょうか。
次回は「武器なき戦い」です。
銀河英雄伝説のファンになった理由
人物とあらすじ
まとめて観たい方はこのカテゴリへ