(前回から読む)
前回は任天堂の「スプラトゥーン」という“イカ人間がインクを塗りまくる”ゲーム(「Wii U」用)を素材にして、ビジネス上の重要キーワードやフレームワークについて説明を試みた。競争戦略論における「RBV」といった考え方に沿って、任天堂は自社資源を活用し「スプラトゥーン」をヒットさせた。今回も引き続き、「スプラトゥーン」を素材に解説をしていこう。
「業績不振の犯人扱いされたゲーム機」を逆手に
過去の失敗を逆利用した点も見逃せない。
Wii Uのコントローラーには、決して小さくない画面が埋め込まれている。そのため「無駄に大きい」とか、「操作性が悪い」と非難され、Wii U販売不振の犯人扱いする声もあった。
ところが、スプラトゥーンではこれを逆手にとった。テレビ画面があり、コントローラーにも画面があってゲームが成立する。テレビでは戦闘シーンがプレーヤー視点で展開され、コントローラーの画面には陣地のインク塗り状況や味方の位置が表示される。両方の画面を見ながら瞬時に情勢を判断して動く。脳の瞬発力を発揮して、痺れるような刺激を味わえる。これがスプラトゥーンの醍醐味でもある。
コントローラーを使ったジャイロ機能もスプラトゥーンには不可欠だ。コントローラー自体を上下左右に動かすことで、イカは向きを変える。これがWii Uのジャイロ機能。慣れてしまうと、この操作は病み付きになる。体を動かす感覚でイカを操れる。もはや、スティックは補助的にしか使わない。まさにスポーツ感覚でゲームを楽しめる。
負の遺産扱いされたコントローラーに、「このデバイスでしか体験できない、ユニークな操作性」を持たせ、ゲーム自体の魅力をより高めている。これもまた任天堂らしい革新性と言えそうだ。