暴徒役の自衛隊員(左3人)を拡声機と盾を使って排除する「駆け付け警護」の訓練=岩手県滝沢市の岩手山演習場で2016年10月24日、佐藤慶撮影
政府は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊施設部隊に「駆け付け警護」の新任務を付与することを11月11日にも閣議決定する調整に入った。防衛省は28日、陸自第9師団(青森市)を中心に編成した交代部隊約350人を11月20日から順次、南スーダンに派遣すると発表。同部隊が新任務を担うことになる。【村尾哲、ヨハネスブルク小泉大士】
PKOの任務ではない「宿営地の共同防護」については、稲田朋美防衛相が交代部隊に実施を指示する。
政府は25日、南スーダンのPKOへの部隊派遣を来年3月末まで5カ月延長することを閣議決定したが、現地情勢や部隊の訓練状況を見極めるため、新任務の付与は先送りした。
稲田氏は8日に南スーダンの首都ジュバを訪問し、23日には岩手県で交代部隊の訓練を視察した。柴山昌彦首相補佐官も31日からジュバに入る予定で、新任務付与の準備を進めている。柴山氏は28日、「安倍晋三首相から現地の状況をしっかり見てきてほしいと指示された。今回の訪問は一つの判断材料になる」と記者団に語った。
野党は今国会で、南スーダンの治安悪化や、任務拡大に伴い自衛隊員のリスクが高まる可能性などについて政府を追及している。このため政府は、自衛隊が駆け付け警護を行うケースを、国連関係者らから緊急の要請があり、現地の治安当局やPKO歩兵部隊より速やかに対応できる場合などに限定する方針だ。また、派遣する医官を現在の3人から4人に増やす。
ジュバで7月、政府軍と反政府勢力の大規模な衝突が発生した際には、PKO部隊が救出要請に応じなかったことが米NGOの報告書で判明。稲田氏は28日の記者会見で「(他国の)歩兵部隊が対応できない事態は、施設部隊が駆け付け警護できる状況にはない」と述べ、大きな襲撃事案で陸自に救助要請される可能性は低いとの見方を示した。
ジュバでは現在、政府軍と反政府勢力の目立った衝突は起きていないが、周辺を含む各地で散発的な戦闘が続いている。雨期の明ける来月以降、戦闘激化も懸念される。
駆け付け警護と宿営地の共同防護
駆け付け警護は、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が、離れた場所にいる他国軍兵士や国連職員らから救助要請を受けた場合、武器を持って現地に行き、暴徒などから守る任務を指す。
宿営地の共同防護は、PKOの拠点である宿営地を自衛隊が他国軍と連携して守ること。いずれも今年3月に施行された安全保障関連法で可能になった。