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ビルから改装計画 大もめ 1日初弁論

=本社ヘリから撮影

住民反対で市が不許可処分 寺側反発「市長の裁量権乱用」

 大津市中心部で400年以上の歴史がある浄土宗の寺が、近くの飛び地に所有するビルを納骨堂に改装する計画に対し、市が近隣住民の反対を理由に「宗教的感情に適合しない」などとして不許可処分とした。周辺は江戸時代から多くの寺と墓があり、寺側は「市長の裁量権の乱用に当たり違法だ」と猛反発。市に処分取り消しを求めて大津地裁に提訴した。1日に第1回口頭弁論がある。【大原一城、森野俊】

 原告はJR大津駅の北約300メートル、同市京町2にある乗念寺で1588年に開山。市歴史博物館が10月から企画展「乗念寺の文化財」を開くなど市内では由緒ある寺として知られる。約200基の墓がある寺の敷地が手狭になり、檀信徒(だんしんと)の要望もあって、市道を挟み約100メートル南の飛び地(約140平方メートル)で修行所などに使っていた4階建てビルを納骨堂に改装しようと計画。2014年から市保健所と協議を進めた。

 15年3月に寺が開いた近隣住民向けの説明会で反対意見が噴出。「気持ち悪い」「無念の死をとげた骨もある。生活が脅かされ恐怖だ」などの声を上げた住民らが約260筆の署名を集め、翌月に越直美市長に反対を陳情した。市はこれらを判断材料に同年7月に不許可処分とし、寺側の異議も今年1月に却下した。

 市は「墓地等の経営等に関する条例」を根拠に▽110メートル離れることが要件の診療所や幼稚園が近隣にある▽例外として「市民の宗教的感情に適合し、公衆衛生その他公共の福祉に反しない」時は市長裁量で許可できるが、住民の反対が非常に多い--などとしている。

 これに対し、寺側は「近隣は寺の密集地で、すぐ近くにも別の寺の墓地がある。乗念寺の納骨堂だけ気持ち悪いという特別な感情を宗教的感情ととらえるべきではない」などと訴える。檀信徒や縁者らから約1300筆の署名を集め、地域の13寺が宗派を超えて加盟する「大津市仏教会中央分会」が納骨堂設置に協力するとの文書も添えて、今年7月に提訴した。

 寺側が反発する理由は過去の経緯にもある。訴状によると、飛び地は00年、市道拡幅のため寺の敷地を市に約500平方メートル売却する代替地として市から提案された。土地は非課税で「将来は境内地として利用できる」との合意があったと主張する。市保健総務課も非課税の事実を認め、「どんな合意があったか調査中」としている。

 乗念寺の住職(49)は毎日新聞の取材に「先々代住職が市議会議長を務めた経緯もあって『市政に協力を』と言われ、仕方なく飛び地を了承した。人間は誰でも死を迎える。宗教に敬意がない市の判断は本当に残念だ」と批判している。

納骨堂、「新しいタイプの墓」として都市部では需要

 納骨堂は墓地埋葬法で墓地と同等に扱われ、「他人の委託を受け焼骨を収蔵するため許可を受けた施設」と定義される。墓地事情に詳しい関係者によると、都市部では大規模な納骨堂ができる例が目立ち、交通の便がいい立地で「新しいタイプの墓」として需要があるという。

 厚生労働省によると全国に約1万2000施設ある。2014年度の施設数を10年前と比較すると、全国ではほぼ横ばいだが、東京都は28%増の387施設、大阪府は47%増の239施設など、大都市圏で右肩上がりの傾向だ。

 竹内康博・愛媛大法文学部教授(墓地法)は「納骨堂は土葬時代の墓などとは違い、衛生上の問題はない。墓地や納骨堂を提供することは本来、行政の責務でもある」と説明。今回の訴訟について「市町村長に大きな裁量があるのは事実だが、不許可にするなら、それなりに合理的な理由が必要だ。住民の反対意見を、そのまま宗教的感情と判断することには疑問がある。必要性や公共性を重視すべきだろう」と話す。【大原一城】

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