習近平総書記が主催した年に一度の共産党の重要会議「6中全会」(中国共産党第18期中央委員会第6回全体会議)が、先週10月24日から27日まで北京で開かれた。
最終日27日の午後に採択された「公報」(コミュニケ)の発表を待っていたら、夜7時45分になって、国営新華社通信のホームページに出た。全文はA5用紙5枚分で、すぐに目を通したが、何だか肩透かしを喰らったような内容だった。
思えば習近平総書記は、今年1月12日から14日まで北京で開いた中央紀律検査委員会第6回全体会議で、「トップ7」(党中央政治局常務委員)以下、226人の幹部たちを前に、「鉄を打つには自身が硬くならねばならない!」(打鉄還需自身硬)と発破をかけた。
2月22日には、国際新華社通信、中国中央テレビ、人民日報を訪れ、「全メディアが党の色に染まれ!」と号令をかけた。そして2月28日には、党中央弁公庁を通して、「両学一做」(党章・習近平講話を学習し、党員として合格する)運動を、8779万共産党員に向けて発布した。
こうした年初の威勢を見る限り、10月の「6中全会」を、2017年秋に迫った第19回共産党大会に向けた大きな一里塚と捉えていて、「6中全会」に向けて権力基盤の大幅強化を図っていくものと思われた。すなわち、「6中全会」の「公報」には、相当強い表現をもって、自己の権限強化を盛り込もうとしていたはずなのだ。
「公報」には確かに、この4年間に登場した「習近平用語」が散見された。いわゆる「四風」(形式主義、官僚主義、享楽主義、贅沢主義)、「民主集中制」(人民の最大利益のための権力一任)、「党内民主」、「実名挙報」(告発者の実名による幹部の腐敗申告)、「四個全面」(全面的に快適な社会を建設し、全面的に改革を深化させ、全面的に法治国家を作り、全面的に党を厳しく管理する)、「両学一做」、「供給側構造性改革」(今年から始めた5つの経済改革)
「従厳治党」(厳格に共産党を統治する)、「以上率下」(上が下に範を垂れる)、「三会一課」(支部党員大会、支部委員会、党小グループ会、党課を開く)、「自我批評」(自己批判)、「党内監督没有禁区」(党内の腐敗監督に禁止区域はない)、「八項規定」(贅沢禁止令)・・・。
また、「公報」の最後の文面を、これまでの類似文書では、「習近平同志を総書記とする党中央」という表現だったのを、「習近平同志を核心とする党中央」に改めた。「核心」は、中国では重みを持つ表現であり、共産党トップの総書記として一段階アップしたことを示している。
だが、そこまでなのである。他に目を引いた箇所と言えば、冒頭の「中央委員197人、中央委員候補151人らが参加した」というくだりくらいだった。
4年前に開かれた第18回共産党大会は、私も北京の現場で取材したのでよく覚えているが、中央委員205人、中央委員候補171人が選出されていた。もしかしたらこの間、数人の死去があったのかもしれないが、4年間で少なからぬ幹部を失脚させたことを物語っている。
中央委員や中央委員候補と言えば、中国共産党の党員8779万人(昨年末現在)の頂点に立つ幹部だけに、胡錦濤政権までは、よほどのことがない限り失脚はなかった。それが習近平が総書記になって以降、「トラ(大幹部)もハエ(小役人)も同時に叩く」というスローガンのもと、次々に中央委員や中央委員候補たちを失脚させていった。
「6中全会」に先駆けて、中央紀律検査委員会が、習近平政権が始まった2013年から今年9月までの汚職取り締まり状況を発表した。それによると、2013年に18.2万人、2014年に23.2万人、2015年に33.6万人、2016年は9月までに26万人を処分したという。
計101万人にも上るが、中央紀律検査委員会によれば、処分者の人数が年々増えているところがポイントだとしている。それだけ汚職が減らない証拠ではないかと反論したくもなってくるが、ともかく習近平政権は、過去の政権に較べて汚職取り締まりを徹底していると強調しているのだ。
たしかに、過去4年間の習近平体制の最大の成果はと問われれば、激烈な「反腐敗運動」ということになるだろう。この8月に北京へ行った時に、ある中国の有力メディア幹部に、「習近平総書記が反腐敗運動に躍起になる理由」について訊ねてみた。すると、次のような答えだった。
「それには二つの側面がある。一つは、このまま『全民腐敗』(全国民が腐敗しているという流行語)が続けば、腐敗によって中国は崩壊してしまうという危機感だ。
わが国には、西洋におけるキリスト教、中東におけるイスラム教のような国民的宗教がない。あるのはカネ崇拝だけだ。しかも世界第2の経済大国に急成長したため、他国に較べて腐敗が蔓延しやすい土壌がある。
もう一つの側面は、腐敗撲滅の名を借りた権力闘争だ。反腐敗運動は多くの国民から支持されるので、それにかこつけて政敵である江沢民一派などを倒していけば、自らの権力基盤が強まると考えた」
このメディア幹部は、「6中全会の直前に放映すべく、すごいドキュメンタリー番組を、中国中央テレビが撮影中だ」と教えてくれた。それが、10月17日から24日まで8夜連続で、夜8時から9時前まで放映された『永遠に路上に』(永遠在路上)だった。「腐敗撲滅運動を永遠に続ける」という意味で、この4年間の習近平体制の腐敗撲滅運動の成果を世に問うた番組だった。
私は8夜連続で、中国中央テレビのインターネット生放送で観て、先週末に改めて8時間ブッ通しで、もう一回観た。この作品は、過去に中国中央テレビが放映したドキュメンタリー番組の中でも、最高傑作の一つと言える。とにかく、中国でいま何が起こっているのかが、これほどリアルに分かる番組はない。獄中の幹部たちが次々にインタビューに応じ、自分が行ってきた汚職のカラクリを明かし、映像で現場を検証していく。
お時間のある方は、ぜひご覧いただきたい。第1話の視聴アドレスは、下記の通りである(8話まですべて無料)。
http://tv.cntv.cn/video/VSET100252386413/cbc3eec6a4034849b202cfa3639a72fa
以下、8話分の内容の要旨をお伝えする。