オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
2015年8月の読書メーター
27冊6743ページでした。
月の前半はバカンス(登山)に行ったついでで結構小説を読んだのですが、後半は論文の追い込みに入り一気にペースが落ちました。
そんなわけで以下の抜粋も書き足し少なめの手抜きです。
【ライトノベル】
彼女は異世界に転生した。貧乏で家庭環境も最悪な家の子供に…エメと名付けられた彼女は姉のリディルと共に、孤児の境遇から成り上がりを目指す。薬屋ジゼルに拾われて薬師として成功、そして王都の魔法学校へと…。不幸な境遇からの始まりとは言え、出会いにも恵まれ良くも悪くもトントン拍子に進む。主人公が前世では優秀な学徒で少しマッドサイエンティスト染みてるのと、貧しい子供達の学校教育を扱ってるのがいい感じ。他方でそのスキルでの活躍はまだそう多くないような。最後が急展開での引き(半端な気もするが)だし次も楽しみに待とう。
いい加減、どれほど出ているのか分からない「異世界転生」系。
本作の場合、「乙女ゲーの世界」とかではなく、なんとなくヨーロッパ風ファンタジーの世界(魔法あり)ですが。
まあ不幸からのスタートと言っても、一端足がかりを摑めば成り上がりは早いのが定番。
しかしこの手のアリアンローズ作品も、どこまで追いかけたものでしょうか……
(前巻に触れている記事)
武術大会決勝戦でスラヴァとアルマの師弟対決、そしてついにスラヴァが正体を明かす時。スラヴァの正体を知って甘え出すアルマにちょっと笑い。他にもシェリルとのデートとか前世でアルマを拾った時の話とか、大会後の日常寄りエピソードの比重が大きかった巻かな。他方でバトルはライバルとの共闘とか、後の再戦という熱い要素もあったが、昏い色の結晶を扱う連中の乱入は意外とあっさり目。道を誤った男グラディスの扱いと併せて割とあっけない印象。さて次巻はエルフの国から旅立ちかな。新たな舞台も楽しみ。
本好きの女子高生・紙山ヨミが夏休みのアルバイト先として紹介された「まほろば屋書店」、そこは魂を持つ「まほろ本」達のいる書店だった。仕事への頑張り、まほろ本のサクヤ(イケメン)との交流…設定は魅力的、ラストも素直にいい話。ただまほろ本達が「本」であることがどこまで活きているかというと半々、ドラマ的には別の要素も大きいような。実在する本への言及も最初だけだったし。サクヤの中身とフミカの書く物語を活かしたラストは良かったけれど。不器用なヨミが補修の技術を学ぶ辺り等、過程の描写もあっさりした印象。
『たま高社交ダンス部へようこそ』の三萩せんや氏、『たま高社交ダンス部』と同時受賞でのもう一つのデビュー作がこれ。もう一つGA文庫からも受賞しているらしく、近々刊行されるのではないかと思われますが……
こちらは女主人公ですし、傾向の違いはありますが、素直だけど要所の見せ方が甘い話作りは共通している印象です。
【漫画】
(このシリーズについての記事)
今回の主な新人魚はハナミノカサゴの扶坂華美、アカナマダの赤生田すみ、デメニギスの出冥忍輝子等、それにアンコの妹・灯。結構過去のメンバーの再登場もあり、最後には総集合も……ということでこれにて完結、残念。魚の性質をキャラに活かしていて楽しかったのだが。アンコは色々なスキルを発揮し、対人関係でもだいぶ成長していて、思えば前進したものだ……と。灯がなかなかいい性格をしていた。
今回はドラマCD同梱版が↑同時発売ということで、私が登録したのはそれになりますが、通常版はこちら↓
(前巻の記事)
怪人に憧れヒーロー狩りを続ける男・ガロウ。他方でB級ヒーローを束ねるフブキがサイタマの許を訪れ…B級の過酷な世界ってこれか。新人潰しと言えどさして陰湿なものでもなく、サイタマの力に及ぶはずもないが…むしろ彼女は折れて味方になってくれそうな感じか。そして久々サイタマに挑むソニック。彼がS級ヒーローと比較しても相当の実力者であることがよく分かって良かった。怪人側に立つ者の視点も交えてヒーローのあり方を問い続ける。ドラマCDは…桃太郎という本筋とは別物のお遊び企画だが相変わらずのノリ。
(前巻のレビューを含む記事 ただしこの時には抜粋すらしていませんが)
ミカの心臓を奪った妹ニナがルミエールの前に現れ、彼女の旅を止めるよう求める。示唆される旅の終わり、それはミカが死を取り戻すことをも意味する。そしてサブキャラの事例を通して描かれる、「自分の願いと相手の願いを同時に叶えることはできない」ということ。ルミエールとリツカ、それぞれの望む未来は……。番外編は序盤のサブキャラ、サッシェとヴィオティーテが登場、元気そうで何より。ミカ本人は登場しなかったが「境界の魔女」としての彼女の旅が繋ぐ絆。
下街の銭湯の娘・まめは小学生の頃からずっと幼馴染みの聡ちゃんに片想いしている。何度フラられても、聡ちゃんが結婚して一児をもうけ、そして妻と死別してもなお諦められず…。結婚して子供二人を育てている同級生もいるのに成長できない大人の生々しい駄目人間節、これぞ志村貴子らしさ全開。淡々と広がる周辺キャラの人間模様も実にいい感じ。周りはいい人揃い、何が恵まれていないという訳でもなかろうに…。聡ちゃんのませた娘・優が可愛いこと。それに引き替え小学生に応援されても進展のない主人公は…。
志村貴子作品も一時期怒濤の刊行で、もたもたしている内に気が付けば2巻が出てしまっていましたが……↓
ゲイで高校中退した兄と、ノンケで女の子にモテる弟の夏央。中学生の時に両親の再婚で兄弟になった二人。兄は弟に懸想し……BL、しかもハードな性行為シーン満載でなかなか強烈。だが何より、ゲイであることからいじめられて退学、「ホモに使わせるゴムなんか1個もねえよ」発言と何気なく浴びせられる悪意が重く響く。しかし兄弟としての過去もあり、弟も同性愛になびくには至らずとも兄を嫌いきることもできず……の微妙な関係。BLでも繊細な感性は健在だ。
(前巻の記事)
いよいよ物語は「羊殺し」に迫る。年末より一足早く事件発生か……。まあそう簡単に肝心の事件解決のはずはないが、途中で連続殺人鬼としての「羊殺し」の特異性を分析したりしつつ、ミステリとしては引き続き一冊で一つの区切りを付け、最後で真打ちに繋げるこの構成、やはり見事。あかりと雪村もようやく棗を介してのお互いの繋がりを知るのだが…。通俗週刊誌の立場やら、連続殺人と認定していない警察と厚労省の微妙な関係とか、事件を巡る社会事情も丁寧にフォロー。羊殺しとの対決が本格化してくるらしき次巻も楽しみ。
2015年8月の読書メーター
読んだ本の数:27冊
読んだページ数:6743ページ
ナイス数:678ナイス
戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉2 (HJ文庫)の感想
巨大飛空船デフェアデッド号でのパーティーにパン屋として招待されたルート。だがそこで出会うのはワイルティアのペルフェに対する差別感情、確執、そして再び事件が起こる…。相変わらず政治的陰謀から感情の縺れまで「戦後」という題材をしっかり描いていて良かった。丁寧口調ながら軍隊仕込みの過激さが根のスヴェンと、優しくも軍人としての矜恃も見せたルートのコンビもいい感じ。ただルートの活躍は少なめか。ヒロインとしてはルートの元上官ソフィアも参戦か。後はジェコブかな、こういういい感じの少年キャラは貴重だし今後も期待したい。
読了日:8月1日 著者:SOW
横浜ダンジョン 大魔術師の記憶 (角川スニーカー文庫)の感想
20年前、世界中にダンジョンが出現して、同時に魔法の力を操る子供達が生まれるようになった世界で、黒鉄響は異世界の「白き賢者」アルランであった前世の記憶と能力を取り戻す。ダンジョン探索者の少女・真藤春菜達を教え導きつつ、前世の大切な人を救うため行動する響。作者らしく世界観レベルで子供達が戦わねばならぬ道理を定めつつ、前世の分いわばそんな子供達の「上の世代の達人」である主人公の立場から物語を描く。らしさは十分、そんな響自身の目的と教え導かれるヒロイン達とが今後どう絡んで発展していくかがポイントだろうか。
読了日:8月2日 著者:瀬尾つかさ
転生王女は今日も旗を叩き折る 1 (アリアンローズ)の感想
乙女ゲーの世界に、ヒロインのライバルキャラである王女ローゼマリーとして転生した一人の女。しかしこのゲーム、攻略対象がシスコン、ナルシスト、ドMと残念なイケメンばかりのクソゲーだった。彼らを真っ当に育て、不吉なフラグを折るべく奮闘するローゼマリー。後半は想像以上にシリアス、事情が事情だけに周囲を頼ることもできない彼女が切なくも魅力的。不吉なフラグを折る代わりに恋愛フラグは順調に立っているが、目当ての騎士団長との関係は…? まだ魔王とかの要素もあるようだし、今後各要素とキャラがどう絡んでくるかに期待しよう。
読了日:8月3日 著者:ビス
僕の魔剣が、うるさい件について (角川スニーカー文庫)の感想
高校生の早瀬吏玖は祖父の屋敷の倉庫で美少女の姿になれる(正確にはヴィジョンのみだが)魔剣「夜来たる」と出会い、互いを折ることを目的とする魔剣同士の戦いに巻き込まれることになる。いかなる事情があろうと戦いは不可避で結末も容赦ないドライさ、外見は美少女でも同じ魔剣を折ることのみを目的とする魔剣の思考の人間との相容れ無さ、それに思考レベルで人間を離れていく主人公の恐怖と葛藤と、デビュー作からこの作者らしさ十分(魔剣の名前がSFネタというのも)。コンセプトとしてはバトルロワイヤルだろうか、ひとまず続きも読もう。
読了日:8月3日 著者:宮澤伊織
プ~ねこ(4) (アフタヌーンKC)の感想
発売から数年間放置してしまってたが読了。ある時には猫だけで、ある時には猫と人間が同列に会話を展開し、猫のオバケやら死神やらも登場、果ては道具や現象まで猫化する淡々とした4コマ漫画第4巻。風刺ネタ等自在な会話を繰り広げながら、絵はあくまでリアルな猫で、猫の仕草等もよく押さえているのが楽しい。キャラ的には出番少なかったが猫少女・爪伽美亜が可愛い。猫でダウジングがなかなか衝撃的だった。猫と関係ないネタも多いがいずれも冴えており、猫による語りと相俟って何とも独特の味わいに。
読了日:8月6日 著者:北道正幸
仮面ライダークウガ(1) (ヒーローズコミックス)の感想
長野県九郎ヶ岳の遺跡から復活した古代人。程なくして、都内で「未確認生命体」達が殺人を始める…2015年仕様(雄介の技の数とか)のコミカライズ。キャラのイメージは当然違うが人物像の要点は押さえているか。グロンギ人間態は特にしっくり来た。ただこの描写だと人間態はあくまで擬態って設定なのか?展開は「古代のクウガが封印状態で生きていた」設定を活かした形で、雄介がクウガに変身するのはこの巻の最後でやっと。テーマ的には遵法者たる一条と超法規的存在たるヒーローの出会い。しかし個人的にはゴオマが好きだったが彼の命運は…。
読了日:8月7日 著者:石ノ森章太郎,井上敏樹,横島一,白倉伸一郎
銀煌の騎士勲章4 (一迅社文庫)の感想
帰国したカイン達だが、レイクが従衛を辞めると言い出す。そしてインフェリアの陰謀もあり、帝国で内乱が勃発。そんな中で明かされるファリアの真実…。友との対決といった王道も経て、主人公は国の命運に関わる活躍もして着実にステップアップしているのだが、主人公周りは全体に地味で、大きな動きはサブキャラ視点で描かれていることが多いのが長所であり短所だろうか。
読了日:8月7日 著者:川口士
魔女殺しの英雄と裏切りの勇者 (MF文庫J)の感想
200年に一度魔物を呼び出す「魔女」が現れ「勇者」がそれを打倒する世界で、今世の勇者エスベルトが魔女ストレガに寝返った。エスベルトの弟子ルカは師匠を連れ戻すべく勇者を目指していた。エスベルト裏切りの真相とは…。「裏切りの勇者」という題材からして魔と勇者という善悪の対立構造の解体を含むのは明らかで、終盤はそこから期待される通りの内容と言うべきか。ただ中盤までは見せ場が弱いような。それと相手が「魔女」でルカが唯一女の勇者候補生という設定、性の問題に触れるかと期待したが、並の男女の情の話に留まり残念なような。
読了日:8月9日 著者:永野水貴
我もまたアルカディアにあり (ハヤカワ文庫JA)の感想
「世界の終末」に備えで人々を収容し、働かなくても生きていける「アルカディアマンション」に始まり、その拡大再生産、そして日本中がシェルターに籠もって生きる時代まで、年代も隔てた人物達の(どちらかというと無為な)生き方。何不自由なく生きられることに馴染まず、不満や摩擦を求めて行動する者も多い人間。それぞれの「理想郷」をどこに見出すか…という点はある種王道かつロマンティシズム。Et In Arcadia Egoの原義と合わせて「我」とは誰かを問うてみるのも興味深い。ただSFとしての設定は若干馴染まなかった。
読了日:8月10日 著者:江波光則
たま高社交ダンス部へようこそ (角川スニーカー文庫)の感想
何事も三日坊主だった桧野雪也食べ物に釣られて社交ダンス部に入部してしまうが、次第に社交ダンスに惹かれて、実績はあるが過去に訳ありの麻田璃子とも交流を深めていく。そして部を救うため大会に挑む…基本はスポ根の王道でなかなか楽しかった。馴染みのないこの分野について説明しつつ、男女でパートナーを組む社交ダンスの性格を上手く主人公とヒロインの関係に繋げてもいる。ただ主人公が社交ダンスに惹かれる過程はやや薄味、主役達ならではの長所や山場での困難とその克服といった部分も活かし方に甘さを感じるかな。
読了日:8月11日 著者:三萩せんや
バリアクラッカー 神の盾の光と影 (電撃文庫)の感想
雑誌連載時に既読。全ての人間が一切の傷病を防ぐ力「アイギス」で守られ、蜥蜴型の怪人レプトイドと対立している世界で、異端審問官ベルヘルミナは異端の嫌疑をかけられた少女を救うため、アイギスの謎と、アイギスを破る力を持つ「バリアクラッカー」との戦いに臨むことになる。いわば絶対的強者たる人間がレプトイドを迫害している設定なわけで、この現状を是認したままバリアクラッカーを倒してめでたしのはずもなく…ほぼそこから想定される通りの真相と言うべきか。ただ伏瀬と回収の完成度は高い。続編ではどこまで踏み込んでくれるかな。
読了日:8月13日 著者:囲恭之介
深海魚のアンコさん(4) (メテオCOMICS)の感想
今回の主な新人魚はハナミノカサゴの扶坂華美、アカナマダの赤生田すみ、デメニギスの出冥忍輝子等、それにアンコの妹・灯。結構過去のメンバーの再登場もあり、最後には総集合も……ということでこれにて完結、残念。魚の性質をキャラに活かしていて楽しかったのだが。アンコは色々なスキルを発揮し、対人関係でもだいぶ成長していて、思えば前進したものだ……と。灯がなかなかいい性格をしていた。
読了日:8月13日 著者:犬犬
美少女とは、斬る事と見つけたり (電撃文庫)の感想
両腕の機能を失った代わりに超能力を得て、夜な夜な日本刀で人を殺す少女・春日透と、彼女により透明人間にされた少年・明神明。お互いの命を狙うW主人公の異能バトル。まだ対決に至らず背景も謎が多いが。一人は愉快犯の殺人鬼という馴染まぬ存在で他方も変態だが内面の狂気に関する印象は薄め。作者の眼差しはむしろ両腕不随、盲目といった欠損を抱えた肉体に向けられているように思われる。彼女達はそれに鬱屈することもなく、時にはそれを活用して淡々と生き、悪人であっても多分それと関係ない。そこが爽快で、何ともフェティッシュだ。
読了日:8月16日 著者:入間人間
プ~ねこ(5) (アフタヌーンKC)の感想
今回も安定のセンス。ゲーママ確かに出てるな。風助にその存在が認識できない(衝撃の)理由も明らかに。それどころかママの子供時代の話まで…。その他、人間と猫が同列に会話しつつもあくまで習性は猫という世界を実によく活かしている。猫関係ないネタも結構あるが言葉遊びや漫画技巧、社会派のセンスも冴えること。初世書生くんが可愛くもよく考えると悲しい。
読了日:8月17日 著者:北道正幸
ワンパンマン 9 ドラマCD同梱版 (ジャンプコミックス)の感想
怪人に憧れヒーロー狩りを続ける男・ガロウ。他方でB級ヒーローを束ねるフブキがサイタマの許を訪れ…B級の過酷な世界ってこれか。新人潰しと言えどさして陰湿なものでもなく、サイタマの力に及ぶはずもないが…むしろ彼女は折れて味方になってくれそうな感じか。そして久々サイタマに挑むソニック。彼がS級ヒーローと比較しても相当の実力者であることがよく分かって良かった。怪人側に立つ者の視点も交えてヒーローのあり方を問い続ける。ドラマCDは…桃太郎という本筋とは別物のお遊び企画だが相変わらずのノリ。
読了日:8月17日 著者:村田雄介
こいいじ(1) (KC KISS)の感想
下街の銭湯の娘・まめは小学生の頃からずっと幼馴染みの聡ちゃんに片想いしている。何度フラられても、聡ちゃんが結婚して一児をもうけ、そして妻と死別してもなお諦められず…。結婚して子供二人を育てている同級生もいるのに成長できない大人の生々しい駄目人間節、これぞ志村貴子らしさ全開。淡々と広がる周辺キャラの人間模様も実にいい感じ。周りはいい人揃い、何が恵まれていないという訳でもなかろうに…。聡ちゃんのませた娘・優が可愛いこと。それに引き替え小学生に応援されても進展のない主人公は…。
読了日:8月18日 著者:志村貴子
転生不幸 ~異世界孤児は成り上がる~ 1 (アリアンローズ)の感想
彼女は異世界に転生した。貧乏で家庭環境も最悪な家の子供に…エメと名付けられた彼女は姉のリディルと共に、孤児の境遇から成り上がりを目指す。薬屋ジゼルに拾われて薬師として成功、そして王都の魔法学校へと…。不幸な境遇からの始まりとは言え、出会いにも恵まれ良くも悪くもトントン拍子に進む。主人公が前世では優秀な学徒で少しマッドサイエンティスト染みてるのと、貧しい子供達の学校教育を扱ってるのがいい感じ。他方でそのスキルでの活躍はまだそう多くないような。最後が急展開での引き(半端な気もするが)だし次も楽しみに待とう。
読了日:8月18日 著者:日生
宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た! (電撃文庫)の感想
神室圭治は東京を離れ、母の実家がある岐阜県四之村に越してきた。だがそこは住人が宇宙人の子孫という噂もある、外界より遙かに進んだ科学を持つ驚異の村。そこで探偵部に入部した彼は数々の怪奇事件に出会う…。最初は斜め上を行くオチの事件簿(吸血殺人、首なし死体、食人等グロ多め)という感じだったが、中盤以降は時間操作、個体性の問題、食べられる物と食べられない物の境(食人の問題)などSF的センス・オブ・ワンダー全開。いつの間にか宇宙人の村ということなど当たり前のように流されてしまうネタの豊富さ贅沢さ。いや良かった。
読了日:8月19日 著者:松屋大好
魔法医師の診療記録 (ガガガ文庫)の感想
魔法医師の少女クリミアと、その助手を務める看護師の青年ヴィクター。教会から異端として睨まれつつ旅を続ける二人はこの度、吸血鬼化(病)の蔓延する街で事件に遭遇…。講談調に芝居がかった語りに看護流柔術といった弾けた設定、山田風太郎忍法帖ばりの怪人バトルはセンス全開。信仰上の理由で治療を拒む患者の問題を描き通したのも好印象。ただ近代文明と中性的な異端審問を取り合わせた独自の世界観は味の内として、教会のスタンスにはやや違和感も。かくも実効性を持ったものを切り捨て続けられるものだろうか。
読了日:8月20日 著者:手代木正太郎
起きて最初にすることは (シトロンコミックス)の感想
ゲイで高校中退した兄と、ノンケで女の子にモテる弟の夏央。中学生の時に両親の再婚で兄弟になった二人。兄は弟に懸想し……BL、しかもハードな性行為シーン満載でなかなか強烈。だが何より、ゲイであることからいじめられて退学、「ホモに使わせるゴムなんか1個もねえよ」発言と何気なく浴びせられる悪意が重く響く。しかし兄弟としての過去もあり、弟も同性愛になびくには至らずとも兄を嫌いきることもできず……の微妙な関係。BLでも繊細な感性は健在だ。
読了日:8月21日 著者:志村貴子
武に身を捧げて百と余年。エルフでやり直す武者修行 (5) (富士見ファンタジア文庫)の感想
武術大会決勝戦でスラヴァとアルマの師弟対決、そしてついにスラヴァが正体を明かす時。スラヴァの正体を知って甘え出すアルマにちょっと笑い。他にもシェリルとのデートとか前世でアルマを拾った時の話とか、大会後の日常寄りエピソードの比重が大きかった巻かな。他方でバトルはライバルとの共闘とか、後の再戦という熱い要素もあったが、昏い色の結晶を扱う連中の乱入は意外とあっさり目。道を誤った男グラディスの扱いと併せて割とあっけない印象。さて次巻はエルフの国から旅立ちかな。新たな舞台も楽しみ。
読了日:8月22日 著者:赤石赫々
めぐらば 1 (BLADE COMICS)の感想
変わった物を探すのが好きな女子高生・赤島美鳥は「スペース三ツ星」という奇妙な喫茶店を発見する…宇宙服のヘルメットを被った店員とか腕ずもうトイレとか、謎の喫茶店を舞台にしたシュールな話かと思いきや、途中からは追いかけてきてメッセージを送る自販機、レンタルビデオ屋から現実を侵食するゾンビホラー、エスカレーターとエレベーターのおもてなし対決と喫茶店に限らず街全体がシュールに。しかも話に収拾を付ける気なし。それはそれとして、舞台が埼玉県行田市である必然性は(おそらく)皆無。あまりエロくないのも作風かな。
読了日:8月22日 著者:kirusu
魔女の心臓(7) (ガンガンコミックスONLINE)の感想
ミカの心臓を奪った妹ニナがルミエールの前に現れ、彼女の旅を止めるよう求める。示唆される旅の終わり、それはミカが死を取り戻すことをも意味する。そしてサブキャラの事例を通して描かれる、「自分の願いと相手の願いを同時に叶えることはできない」ということ。ルミエールとリツカ、それぞれの望む未来は……。番外編は序盤のサブキャラ、サッシェとヴィオティーテが登場、元気そうで何より。ミカ本人は登場しなかったが「境界の魔女」としての彼女の旅が繋ぐ絆。
読了日:8月23日 著者:matoba
3×3EYES 幻獣の森の遭難者(1) (ヤンマガKCスペシャル)の感想
往年の名作の続編。本編終幕から12年、藤井八雲は妖魔退治の仕事を請け負っていたが、不死人たる彼を捕獲しようとする連中が襲来、新たな戦いが始まる。妖魔と日本の女子高生が混じった敵の正体は、そしてサンハーラ以来八雲に欠けているものとは……まだ序章という感じで謎が多いが、彼らの姿を見られだけでまずは満足、盛り上がり的にも十分期待できそう。八雲はさらに凄いスキルを身に付けてすっかり頼れるようになって……。本編の後日譚的に彼らの日常を描くシリーズもあったが、あっちは単行本化しないかな……。
読了日:8月23日 著者:高田裕三
神さまのいる書店 まほろばの夏 (ダ・ヴィンチBOOKS)の感想
本好きの女子高生・紙山ヨミが夏休みのアルバイト先として紹介された「まほろば屋書店」、そこは魂を持つ「まほろ本」達のいる書店だった。仕事への頑張り、まほろ本のサクヤ(イケメン)との交流…設定は魅力的、ラストも素直にいい話。ただまほろ本達が「本」であることがどこまで活きているかというと半々、ドラマ的には別の要素も大きいような。実在する本への言及も最初だけだったし。サクヤの中身とフミカの書く物語を活かしたラストは良かったけれど。不器用なヨミが補修の技術を学ぶ辺り等、過程の描写もあっさりした印象。
読了日:8月26日 著者:三萩せんや
スフィアの死天使: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex)の感想
今回は初の長編で、小鳥遊の天医会総合病院への赴任と鷹央との出会い、そして宇宙人に命令されたと称する男の起こした殺人事件とカルト宗教による洗脳事件を描く。というわけで待望の、1巻から前振りしていた過去の事件。ネタは安定の出来、多段階の解決編も濃密でよく出来ているし、頭蓋骨の中の脳を「最小の密室」とか、謎を解き現実を突き付けることを癌告知に喩えるセンスも見事。ただカルト宗教の黒幕が警察対策を第一に考えてるのはクレバー過ぎて少し違和感。まあこれはこのシリーズの犯人全般の傾向だろうか。
読了日:8月31日 著者:知念実希人
白暮のクロニクル 6 (ビッグコミックス)の感想
いよいよ物語は「羊殺し」に迫る。年末より一足早く事件発生か……。まあそう簡単に肝心の事件解決のはずはないが、途中で連続殺人鬼としての「羊殺し」の特異性を分析したりしつつ、ミステリとしては引き続き一冊で一つの区切りを付け、最後で真打ちに繋げるこの構成、やはり見事。あかりと雪村もようやく棗を介してのお互いの繋がりを知るのだが…。通俗週刊誌の立場やら、連続殺人と認定していない警察と厚労省の微妙な関係とか、事件を巡る社会事情も丁寧にフォロー。羊殺しとの対決が本格化してくるらしき次巻も楽しみ。
読了日:8月31日 著者:ゆうきまさみ
読書メーター
テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育
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