今回、議論したいことは、以前、元ライブドア(現LINE株式会社)CEOで事業家の堀江貴文さんとの対談で、話題になったことである。対談の内容は有料メルマガのほうを見ていただきたいのだが、ここでその要旨を述べておこう。

週刊金融日記 第178号 堀江貴文さんと未来を語る 前編
週刊金融日記 第179号 堀江貴文さんと未来を語る 後編

堀江さんは未成年との恋愛は絶対にしないように心がけている、と言った。そして、僕は、淫行条例が作られた結果、恋愛市場がどのように変質し、社会にどのような変化が起こったのかを論じたのだ。いまでは常識だが、日本人男性が、18歳未満の女性とセックスすることは犯罪行為と見なされ、実際に摘発されるのだ。淫行条例があるからだ。日本の法律では、女性は16歳以上で結婚できるので、これは考えてみればおかしな話だ。なぜ、このような法律が作られたのだろうか?

その歴史は、1990年代にマスコミで大きく取り上げられた「援助交際」にまでさかのぼる。当時は、テレクラなどを使って、女子高生が個人売春をすることが社会問題化したのだ。実際に、援助交際という言葉は1996年に流行語大賞に入賞するほどだった。

こうしたことに、女性団体などが怒り狂った。悪い大人が、少女たちを食い物にしている、と。とうの女子高生たち(もちろん、売春をしているのはほんの一部である)は、「誰にも迷惑けけてないのになんでダメなの?」と文句を言っていたのだが、マスコミは援助交際はけしからん!という方向で盛り上がり、政治家がそれにこたえて、18歳未満とのセックスを犯罪とする淫行条例が作られたのだ。めでたし、めでたし。

それで、僕が指摘したことは、淫行条例が作られてから、日本のAV女優のルックスレベルが飛躍的に向上しはじめた、という事実だ。

「この10年で日本社会で最も変わったこと」金融日記、2007年05月28日

考えてみたら、これは当たり前のことだった。淫行条例は、罰則自体は「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」であり、ほとんどが罰金刑で、そこまでの重いものではない。しかし、社会人が淫行条例で逮捕され、報道されてしまえば、ほぼ社会的に抹殺されてしまう。社会的制裁は、表の世界でまじめに働いている男にとっては、極めて重い。かくして、まともな男は誰も女子高生を恋愛対象とはしなくなった。ここまでは法律の狙い通りだ。

ところが、10代の少女たちは、当たり前だが性に強い関心を持っている。生物学的には、最も妊娠しやすい時期であり、ある意味で、最も恋愛に適した年齢だ。しかし、そこの恋愛市場がすっかり真空状態になってしまったのだ。彼女たちは、もちろん男子高生と恋愛をすればいいのだが、そこに大人の男が割り込んでいったらどうなるだろうか? ライバルは、金も力もない魅力の乏しい男子高生たちである。恋愛スキルの高い大人の男がその恋愛市場に入っていけば楽勝なのである。つまり、まともな男がいない女子高生の恋愛市場は、まともでない男にとっては入れ食い状態となったのだ。まるでフナやメダカしかいない池に放されたブラックバスのように、裏の世界で生きているスカウトやホスト、ときに反社会的勢力の男たちが、法的リスク承知で食い荒らせるようになった。

こうして未成年の間に恋愛関係を築いておき、18歳になったらAVプロダクションに紹介する(語弊のある言い方をすると「売る」)ビジネスが非常にやりやすくなった。これが、おそらく淫行条例ができてから、日本のAV女優の質と量が劇的に改善された理由なのだ。AVファンは、淫行条例に感謝したほうがいいのかもしれない。

「IT革命と恋愛市場の変相」cakes 藤沢数希インタビュー

これはまるで禁酒法と同じようなことが起こったのであり、とても興味深い。アメリカでは、1920年から1933年まで酒の販売を禁止したため、違法に酒を売るマフィアに莫大な利益がもたらされたことはあまりにも有名だ。

最近の世の中では、恋愛に関する法律や規制、社会規範はどんどん厳しくなっている。芸能人が不倫をしたら総バッシングを受ける。セクハラの基準は年々切り上がっているようだ。いまでは、会社で女性社員のルックスを褒めたり、結婚はしないのかなどとプライベートなことを聞いたりすることも、立派なハラスメント行為と見なされる。女性が不快に思えば、懲戒の対象となる。町中で知らない女性に声をかけるナンパという行為も、迷惑防止条例で、場合によっては罰則の対象となることもありえる。

こうした世の中が人々を幸せにするのかどうかはさておき、我々はこのような非常に厳しい規範を守らなければいけない時代を生きていることだけは、確かな事実だ。今週のメルマガでは、こうした恋愛過剰コンプライアンスが、現実の恋愛市場にどのような変化を引き起こしたのかを分析し、そして、個々の恋愛プレイヤーがどのように振る舞うべきなのかをくわしく論じることにしよう。

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